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第5話

賑やかな街の中で人々の視線がこちらを振り向いていく。驚きと好奇心の入り混じった何とも言い難い特有の視線。『何故』『どうして』と訝しみ、警戒しながらも様子を伺っているような普段と違う雰囲気にシラは一つ溜息をつく。不満を言っても仕方ないという諦めの溜息なのか、何故こんな視線に曝されているのかという怒りの篭った溜息なのか、はたまた別の溜息なのか、シラ自身判断はできなかった。しかし、何故この視線に曝されているのか、その理由だけははっきりしていた。


ちらりと後ろを振り向き、シラの後をついて来るジーナの王子とその付き人にシラは深い溜息をついていた。




ことの発端は朝食の席からだった。昨日深夜に帰ってきてラースと不本意な初対面をした後、部屋に戻ったシラが寝たのはもうしばらく我慢すれば空が明るくなるような時間だった。それでもいつもの事だとたっぷり睡眠を取っていたのが悪かった。お昼近くに食事をしようと部屋を出たシラがレオザから呼び出しを受け、向かった部屋には呼び出した張本人とその側近のバル、そしてジーナの二人がいた。



「…遅い。一体何をしていたのです?」

入口から顔を出した途端に兄の側近から文句を言われてシラは顔をしかめて見せる。幼なじみでもあるバルはじろりとシラを睨んでテーブルの一角を指差す。

「早くそこに座って下さい」

「もー、煩いなぁ。何なのよ?」

バルの性格を知っているシラは大人しくラースの横に位置された椅子に座り、バルを見遣った。

「私、お腹空いてるの。早く用件話して」

不服そうに背もたれに寄り掛かって足を組むシラを見つめてレオザが額を押さえて溜息をつく。

足を組んだ時にちらりと見えた太股にラースが視線を向けたのを知ってか知らずかシラは無防備に大きな欠伸をする。

「…お前、もうちょっと気にしろよ…」

「何を?それより用事を言って」

レオザを不満げに見上げシラは真横のラースに顔を向ける。

「ねぇ、なんでいるの?」

不満げな顔を崩さず尋ねるシラにラースも嫌そうに眉を潜めた。

「…昨日から思ってたけどさぁ、なんでそんな態度悪い訳?」

「それ、こっちの台詞。私初対面であんな嫌味言われたの初めてよ」

ぷい、とラースから顔を逸らし、シラはレオザに視線を移す。

「昨日夜に会ったから顔合わせはもう済んでるわよ」

言い切って席を立とうとするシラを眺めレオザはラースに視線を向けた。

「昨日は悪かったな。お詫びの代わりになるかわからんが、今日一日シラに城下街を案内してもらえ」

「はぁ!?」

突然の提案にシラは机を叩いて立ち上がり、真横のラースと向かいのレオザを見比べた。

「嫌よ!なんで私が案内するの!?」

「なんでもなにもお前の婚約者だろ」

「私が頼んだ訳じゃない!…っていうか、アンタも早く断ればいいでしょ!?」

キッとレオザとラースを交互に睨みシラは辛抱出来ずに歩き出そうとする。その時急に誰かに手を取られてシラは驚いてくるりと振り返った。

「な、何!?」

シラの手を掴んだラースはにっこりと笑う。その笑顔に一瞬シラはぎょっとする。

「…せっかくだから案内してもらおうかな。よろしくシラ姫」

「はぁ!?」

反論する前にシラの手を掴んだままラースは立ち上がる。

「じゃ、お先に失礼します」

レオザは笑顔を崩さず片手を上げるラースを眺め、その一方でぎょっとした顔のままシラはその場に立ち尽くす。その手を強く引かれて一歩躓くように足を延ばしたシラはハッとしてラースに食ってかかる。

「ちょ…ちょっと!何なの!?離してよ!」

「嫌だよ。案内してくれないとわかんないじゃん」

「そんなの知らないわよ!私、案内なんかする気ないってば!」

ラースは留まる気はないのかシラの手を取ったまま扉に向かっていく。手を振りほどこうともがいていたシラはそれが出来ない事に腹を立て、助けを求めるようにレオザを振り返る。が、シラに見えたのは興味もなさそうに欠伸をするレオザの姿とラースとシラの引いたままの椅子を溜息をつきながら元に戻すバルの姿である。シラの視線に気付いたのかレオザはラースに声をかける。

「あぁ、夕飯前には帰って来いよ。一応宴会の予定だからな」

「わかりました。じゃあ夕飯まではシラ姫、お借りしますから」

ラースに向かって了解の意思を伝えるつもりなのかレオザはひらひらと手を振る。

「だから、私行かないってば!」

手を引かれたまま叫ぶシラを無視してラースは部屋を出ていく。それに続いて部屋を後にしたシラは不満を隠すことなくラースを睨み、ただその歩みが止まる様子がないことを認識し、心底嫌そうに諦めの溜息をついていた。


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