表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/2

第002話_二人の旅立ち 前編

ちょっと長くなったので前後編に分けます

 高等傭兵教育学院(Advanced Mercenary Education Academy:通称A.M.E.A ”アメア”)

この学院を卒業できたものは凄腕の傭兵としてエリート街道を進むことができる。それが例え“貧民街”の出身であっても。毎年多くの受験者が受けに来るが、その試験難易度の高さと合格倍率の低さがとても有名である。まるで、無能は帰れと言わんばかりに・・・。

 

 僕らは貧困街からこの中央区に初めて足を踏み入れた。故郷にあるのは、錆びた鉄板と剥き出しの配線、そしてどんよりとした油の霧だけだ。けれど、この中央区は違った。空の高さ、空気の清浄度、賑わう街並み、どれを比べ物にならない。残酷なまでの環境の違いに僕はもちろん、普段強気のレナも思わず言葉を失っていた。


「・・・何よ、これ。」

「見て。見渡す限り私たちが知っているものと違う。私たちのつなぎ、ここでは浮きまくりね・・・」


 レナが少しだけ、ばつが悪そうにして自分の擦り切れた袖を隠すために後ろ手を組んでいた。


「・・・ハル。落ちたら、あんたのじいちゃんに顔向けできないからね」

「レナこそ。無理して機体をバラバラにしないでよ」


 都会への気後れを振り払うように、試験への不安を隠すようにお互い言葉を交わし会場へと向かった。


-------------------------------------------------------------------------------------------------------


 整備士科の実技会場は、巨大なドームだった。試験は20人程度のグループに分けられそれぞれの機械演習エリアに連れていかれた。

整備士科を目指す人間には貴族といった上流階級は少ない。それも相まってか受験者達からは若干の粗雑さを感じる。緊張していると演習エリアに試験官と何人かの助手のような人たちが入ってきた。


「このグループの試験官を担当する整備士科教員のエリオット・グレイです、よろしく。これから君たちには故障したスラスターユニットを修理してもらう。修理に必要な道具や機材はこちらでも用意してはいるが、個人的に持ち込んだものを使用しても構わない。それから・・・」


 淡々と試験内容が説明されていく。要するに壊れたものを直せば良いらしい。いつもやってきた事だ。大丈夫、大丈夫。

自分に言い聞かせるように大丈夫という言葉を繰り返した。


「それでは試験開始!」


 試験開始の合図とともに受験者は自らの机の上に置かれたユニットの状態を調べるため、一斉に最新の診断用AIを起動させている。宙に浮くホログラム画面。それには事細かく状態が示されていた。彼らはハルには見たことない技術を使って、鮮やかに故障部位を修理していく。  


「僕にはあれは使いこなせそうにないな、ははは・・・」

 気を取り直して、僕は目の前にあるユニットをよく観察してみる。外部の損壊はほとんど見当たらない。内部の故障が原因であることにあたりを付けた。


「とりあえず動かしてみるか、これをここに接続してっと・・・」


 周りから見ればあまりに異質な風景。診断用AIに接続して故障の原因を見つけることが当たり前になりきっているこの時代に手作業で故障部位を見つける作業をしている。周りの受験者は呆気に取られていた。


「ふぅ。一旦接続が終わったぞ。これで一回吹かしてみるとどうなるかな?」


 ユニットからは弱弱しく、途切れ途切れに噴出がされていた。ハルはそのユニットに五感すべてを注いで状態を確認した。


「これはまた一際“機嫌”が悪いユニットだな。ここまでよく頑張ったね、もう少し待っててね」


 本来ヒトの耳には聞こえないが、内部からは確かに金属が擦れ、小さくも苦しげな悲鳴の様な音が鳴っているのをハルは聞き漏らさなかった。祖父から貰った工具箱から、煤けたレンチを取り出し指先の感覚を研ぎ澄ます。


「(燃料ライン途中の目詰まり、燃焼ガス噴出部の歪み、それらにより要らない負荷がかかり熱にうなされている。僕がやるべきはカバーを開け、ラインをバイパスし、歪んだ金属を数ミクロ単位で押し広げてこの子を楽にすること!)」。  


「あの受験生、診断なしに分解を始めたぞ!?」「 構造を理解しているのか!?」


 周りの試験官や受験生が何か言っているみたいだがハルの耳には届かない。仕上げに点火装置の位置を1 mmほどずらす。

 開始からわずか30分ほど経っただろうか。周囲がようやく分解を終えた頃にハルはその手を止めた。


「・・・終わりました。テスト、お願いします」

 僕は少し怯えながらも教官にユニットを提出した。


「ろくに部品交換もしていないようだが、本当に大丈夫か?試験時間ならまだゆとりはあるぞ」


「問題ない・・・と思います」


 教官は半信半疑になりながらもユニットをセットする。ユニットを点火させた瞬間に


ドォォォォォォン!!


 試験会場の空気が震えた。噴射口から放たれたのは、濁りのないプラズマの蒼い咆哮だった。


「・・・ありえねぇ。あんな方法でまさか」 「何かの間違いだろ。どうせそのうちぶっ壊れる」


 周囲から、露骨な嘲笑と軽蔑のヤジが飛んだ。彼らは最新鋭のツールを操るエリートたち。そんな彼らが見たこともない「旧式」な整備が、彼らのプライドを刺激したらしかった。

 教官の助手から教官にテストステータスが渡される。


「な、出力が100%を超えた!? 数値が上限を突破している!これに間違いはないんだろうね?」

「はい、計器に故障は見られません。それに実際の挙動を見ると疑いようもないというか・・・」


 慌てふためく大人たちを横目に、僕は油のついた手や工具をウエスで拭いた。

「(壊れてなんていない。あの子の本来の力を出しただけなんだけどなぁ)」

「あのぉ・・・、僕は合格でしょうか?」


 教官や周りの受験者達が困惑している顔が印象的だった。

 あのエリオット教官でさえ笑顔を作りきることができなかった。


「これは・・・参りましたね・・・」



週1~2回の投稿を目指します。更新したときはTwitter(現:X)を使用してお知らせします。




また本作品は編集者としてGeminiを使用しています。


本文作成→Geminiによる添削・校正→本文完成の流れで製作しています。


間接的とはいえAI使用になるため、信条に反する場合はブラウザバックお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ