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呪いと勇者  作者: 天狼星
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プロローグ

初めまして、天狼星です。

今作は前作である「とある勇者たちの話」の300年ほど前の話です。

神獣がいつ生まれ、そのきっかけとなった話を描いていこうと思います。

どうぞ、よろしくお願いします。

 満月の夜。作戦決行の日。

 月明かりに照らされながら俺たちは皇帝のいる謁見の間へと進んでいた。


「静かだな」

「おそらく、フィリップ殿下と皇帝以外いないんだろう」


 謁見の間に続いているであろう扉の前に立つ。


「油断するなよ」

「そっちこそ」


 扉を開けて中に入る。

 玉座にはやはり皇帝がいた。


「ようこそ。王国人よ」


 笑顔で言う皇帝に違和感を覚えながらも皇帝に問う。


「フィリップ殿下はどこだ」

「そこにいるよ」


 皇帝が指し示した方にはフィリップ殿下がいた。気を失っているのか椅子にもたれかかっている。


「パトリック。頼めるか」

「言われなくても」


 刀を鞘から抜く。


「王子の誘拐と戦争の代償。お前の首で終わらしてやる」

「やれるものならやってみろ」


 踏み込み、皇帝に向かって雷撃を放つ。皇帝はそれを軽々と避けるとこちらに向かって無数のの風の刃を飛ばしてくる。


(捌ききれない!)


 そう思った瞬間、氷の刃が飛んできてせ風の刃を弾く。


「1人じゃない。私がいることを忘れるな」

「レイ……感謝する」

「礼はいい。片付けるぞ」


 刀を構える。皇帝の方を見るとなぜか驚いた顔をしていた。


「行くぞ」


 レイはそれを気にせず氷の短剣を皇帝に向かって投げる。皇帝が避けるのをわかっていたかのようにレイは唱える。


「氷の花」

「ッッ」


 氷の花、とは障害物に当たった後発動する魔法でそのものの周りを全て結晶化させることができる。その見た目から氷の花と呼ばれている。

 皇帝が初めて焦ったような顔をする。俺は近接戦は彼女に任せ、支援に移る。


「ッレイ」


 レイが飛ばされる。


「私に構うな!皇帝を殺せ!」


 皇帝に向けて雷撃を放つ。


「皇帝!覚悟!」


 皇帝の首に刀を向け、一気に切ろうとしたとき、皇帝は最後に呟く。


「発動、死の呪縛」


 死の呪縛。それは呪った側が死ぬと呪われた側も共に死ぬ呪い。その呪いは事前に仕掛けておかなければ発動しないはずなのだ。


(まさか!こいつ!)


「ハハッ。番を失ったらどうなるだろうねぇ?英雄ヨシュア?カトは死ぬんだよ。どっちにしろ。俺が死ななくても彼女は死ぬ。それが彼女にかけた呪いだからね」

「貴様っっ」

「アッハハハッ」


(こいつはどうなっても死ぬ。レイ、いやカトも恐らく……。ならば彼女の最後だけでも)


 そう思うと同時に体は動いていた。俺の一族は代々、竜人の血を継いでいる。竜人や獣人には定められた番という存在がいる。会うとすぐわかり、失うと恐ろしい喪失感と共に、殺された場合は番を殺した相手をこの世から消すまで殺す。それだけ番は大切なのだ。


「カト……」


 そこには口から血を吐き壁にもたれかかっている彼女がいた。

 覇気が無い目でこちらをみている彼女は時間がないように見えた。


「バレたんだね」

「どうして……」

「聞いたろ?皇帝から。……私はどうせ死ぬ運命だったんだ。だから、その前に君の役に立ちたかったんだ。そんな悲しい顔しないで、笑顔で送ってほしいな」


 カトが血を吐く。時間がない。

 番を失う恐怖。それに、襲われそうになり震えが止まらない。


「大丈夫。私たちはまた巡り会える。リゲルだって言ってた。番は記憶を失っても番のままだから」

 無理に笑顔を作って言うカトにつられてあれを笑いそうになる。涙も出ている。

「愛してる」

「ああ。俺もだよ」

 彼女をもう2度と失わないように強くなろう。絶対に。彼女に頼られるように……。


 △▼△


『呪術師が邪魔したか』

『カトとヨシュア、ユリウス、ディーネには一度、幸せに人生を送ってもらわなければ役割を任せられないのに』

『いい加減、決着をつけなければな、呪術師どもと』

『守護者を早く決めなければ最悪な人の世が始まっちゃうねぇ』


 創造神、破壊神、教導神、記録神は転生の準備をする。


『フェンリル……リゲルにも連絡をしておこう』


 △▼△


『カト……。我も準備をするか、しばらく呪術師を抑えておかなければ、400年後に向けて』


 フェンリルであるリゲルは契約者の気配がなくなったのを感じ取るとそういい、伝達を受け取る。


『元からそのつもりだよ』


 フェンリルはその綺麗な銀色の毛並みをなびかせその場から去った。


 △▼△


「アリシア嬢……」


 ユーリはヨシュアの妹であるアリシアに声をかける。


「わかってます」


 彼女は姉のような存在であるカトを亡くした。その悲しみはユーリにだって痛いほどわかる。

 彼も婚約者であるディーネだけでなく、2人の親友のうち1人を亡くした。

 だが、彼は王にならなければならない。大切なものを失ったとしても……。


「前を向け、ヨシュア。僕はそれを支え続けよう。王として、友として」

いかがでしたか?

物語の中心人物はまだ揃っていません。

呪いとは何か、彼らは何者なのか、まったく説明がないままのスタートですがどうぞお付き合いくださると嬉しいです。

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