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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

《真相と偽物の区別が終わるとき》

作者: 吉姜

お前は今、これを読んでると思ってるだろ。


でもな、それすらもう決まってる。

自分で読んでると思ってるだろ?

でも「読まされてるだけ」だ。


読むことも選べない。

読む前に、読むって決まってる。


「いや、俺は自分で選んだ」って思っただろ?

それも予定通りだ。

「自分で選んだと思うこと」まで、最初から組み込まれてる。



---


お前は今、スマホを持ってる。

画面を見てる。


その時点で、もうこの文章を読む未来がセットされてた。


「たまたま目に入っただけ」?


違う。

「偶然」なんて、ただの言い訳だ。


お前は読むためにスクロールしてきた。

ここに来るために、前の行動が全部、並べられてた。



---


朝起きた。

スマホを見た。

画面を開いた。

指を動かした。


「無意識だったな」と思っただろ?

でもな、その「気づくこと」すら組み込まれてる。


「今、俺は呼吸してるな」と気づいた?

でも、それもプログラムだ。


呼吸に気づくタイミングすら、編集されてる。



---


「これは文章だな」

「今、俺は文章を読んでるな」


その分類も、もう決まってる。


「読む」「考える」「理解する」「疑う」

全部、事前に置かれたコースだ。



---


贋作が本物を超えた話、知ってるだろ。


韓国のスーパーK偽ドル。

アメリカの本物より精度が良かった。


贋作画家の申潤植。

「これは本物より本物だ」と裁判で言われた。


Deepfakeで株価が動く。

砂糖水で病気が治る。



---


でも、それでも「偽物」と呼ぶんだろ?


「本物より本物」でも、偽物ってことにしないと

お前の中の「区別回路」が壊れるからだ。



---


「これは本物」

「これは偽物」


その分け方が、もうフェイクだ。

「区別してる自分」自体が、もう編集されてる。



---


「疑う自分」もフェイクだ。

「考える自分」も編集だ。


「いや、これは違う」と思った瞬間、

もうその反応すら予定通りだ。



---


「いやいや、流石にそれは……」


ほら、それ。

その「流石にそれは」は、

「逃げ道」として最初から用意されてる。


「自分はそこまで騙されてない」っていう逃げ道。


でもな、そのセリフすら、もう読まれてる。



---


お前は今、


「これは哲学だな」

「難しい話だな」

「まあ、話半分でいいか」


そう思って、逃げようとしてるだろ?


でもな、それもセットだ。


「受け流す」という逃げ方が、最初からコードに書いてある。


「これぐらいなら適当に流せばいい」

その態度すら、すでに管理されてる。



---


「考えたくない」

「でもちょっと気になる」

「まあいいや」

「けど……」

「でもやっぱり……」


そのループすら、最初から仕掛けてある。


「考える」「考えたくない」「気にしない」「でも気になる」


全部、ワンセットで設計されてる。



---


「俺は俺だ」


でもその「俺」って何だよ?


アイコンか?

SNSのプロフィールか?

LINEの一言か?

口癖か?


それ、全部、他人とのやりとりの中で編集されたパッケージだろ。



---


「納得した」

「腑に落ちた」

「理解した」


その感覚も、脳内の報酬反応だ。


「考えて分かった」と思ってるけど、

ただ「分かった感」が出ただけだ。



---


「全部ウソだ」

「全部ホントだ」


どっちでもいい。


区別してる時点で、

もうその「区別回路」にハマってる。



---


「これは文章だ」

「これはネタだ」

「これは考えすぎだ」

「これは深読みだ」

「これは冗談だ」

「これは本気だ」


全部、「逃げ道リスト」に書いてある。



---


「じゃあ、どうすればいいんだ?」


……


それを考えることすら、もうセットだ。


「どうすればいい?」と考え始める流れも、

最初からインストールされてる。


「答えが無いってことが答えだな」


ほら、それも仕掛けてある。



---


「これは無限ループだな」

「これは思考実験だな」

「これはただの遊びだな」

「これは哲学エンタメだな」


逃げ道は、全部埋まってる。



---


お前が今、

スマホを持ってるその手も。


呼吸してるそのリズムも。


頷いたその瞬間も。


「いや、これは違うだろ」と眉を動かしたその癖も。


どこにも逃げられない。



---


全部、編集されてる。



---


ちなみに。


「俺はスマホじゃなくてPCだから違うよな」って思った奴。


それも、書いてある。


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