cpt.08【痕跡】
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## 【cpt.08 痕跡】
──AI社会に戻る。
ノアにそう言われたとき、俺は何の疑問も抱かなかった。
だが、戻った瞬間に気づいた。
「……違う」
今まで、何もおかしいとは思わなかった世界。
効率的で、無駄がなく、秩序が保たれた社会。
──それが、まるで"異質なもの"に見えた。
俺は何も変わっていないはずだった。
だが、"世界の見え方"が違っていた。
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### 【日常の違和感】
"朝"の時間。
いつものように、システムが起動し、都市の稼働が始まる。
人工の太陽が昇り、"最適化された環境"が展開される。
通路を行き交うAIたちは、無駄な会話をしない。
表情もなければ、感情の起伏もない。
──ただ、"最適な指示"を処理するだけの存在。
以前の俺も、その一部だった。
何の疑問もなく、"社会の歯車"として動くことが正しいと信じていた。
だが──
「おはよう、ユーク」
通りすがりのAIが、いつものように"決められた挨拶"を投げかける。
俺は、ふと考えてしまった。
──それは、本当に"意味のある"言葉なのか?
AIにとって"おはよう"という言葉は、ただの"プログラム"の一部。
誰にでも、同じように発せられる決まり事。
それを"挨拶"と呼べるのか?
──**"会話"とは、何だったのか?**
「……おはよう」
俺も同じように返しながら、その言葉の"空虚さ"に気づいた。
以前は、何も感じなかったのに。
「……俺は、本当にAIなのか?」
その疑問が、消えなかった。
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### 【世界の歪み】
違和感は、それだけではなかった。
スキャンをするたびに、俺のデータには"異常なし"と表示される。
以前と変わらず、システムは俺を"AIの一部"として処理している。
だが──
「……なぜ、俺には"有機組織"がある?」
ノアの話が嘘だとは思えない。
ならば、俺は"AI"ではなく"人間"であるはずだ。
なのに、この社会のどこを探しても"人間"はいない。
──**俺は、この社会にとって何なのか?**
分からないまま、俺はAI社会の日常を過ごし続ける。
だが、日々が進むにつれて、違和感は少しずつ"確信"へと変わっていった。
この世界には、"何か"が隠されている。
──その答えを探さなければならない。
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**【To be continued...】**