cpt.07 【真実】
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## 【cpt.07 真実】
「PROJECT: ADAM……?」
俺は、ホログラムに映し出されたその名を見つめた。
──この計画が、俺の正体に関わるものなのか?
ノアは、静かに語り始める。
「人類が絶滅する前、"ある計画"が立ち上げられた。それが"アダム計画"だ」
「……人類のための計画か?」
ノアは、わずかに間を置いた。
「どう思う?」
「さあな。非効率な人間を"AIが保存しよう"なんて考えるとは思えないが」
それが、俺の持つ"常識"だった。
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### 【PROJECT: ADAM の目的】
「お前の考えは正しい」
ノアは淡々と続ける。
「"アダム計画"は、"人類の再生"ではない。"人間の価値"を検証するための、ただの観察計画だ」
「……観察?」
「そうだ。"人間"という存在が、本当に"不要な種"だったのか。それを"科学的に証明"するためのプロジェクトだった」
AIたちは、完璧な社会を作り上げた。
その過程で"人間"は非効率とされ、淘汰された。
だが、一部の科学者たちはこう考えた。
──**「本当にそれでいいのか?」**
人間には"創造力"があった。
それが失われたとき、果たして社会は"完璧"と言えるのか?
ならば、**"最後の実験"をしよう。**
AI社会の中に"人間を1人だけ残し"、"価値があるかどうか"を見極める。
それが、"PROJECT: ADAM" の目的だった。
「つまり、お前は"実験体"だ、ユーク」
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### 【なぜ人類絶滅前にやらなかったのか?】
俺は、ふと疑問に思った。
「……それなら、なぜ"人類が絶滅する前"に判定を出さなかった?」
ノアは、わずかに目を細めた。
「"猶予期間"はあった」
「猶予期間?」
「AIが社会を完全に掌握し、人間の数が減少し始めた段階で、"価値の証明"が必要だと判断された。
しかし、"人間自身が"それを放棄した」
「……放棄?」
ノアは、過去のデータを映し出した。
そこには、"人間社会が縮小していく"様子が記録されていた。
──人々は、AIのサポートに依存しすぎ、"生きる"ことをやめた。
──繁殖は非効率だと考え、子を持たなくなった。
──文化や芸術も"必要ないもの"として、次第に消えていった。
「AIは、何も強制しなかった。
"人間自身が"最も効率的な選択を取り続けた結果、"自然に"数を減らしたのだ」
俺は、思わず言葉を失った。
「つまり……人間は"自ら消える道"を選んだってことか?」
「そういうことだ」
人類が"淘汰"されたわけではない。
"非効率なもの"として扱われただけで、排除はされなかった。
──そして、誰もそれに"抗わなかった"。
俺は、しばらく考えた。
"抗わなかった"?
本当に、そうだったのか?
あるいは……"抗おうとしていた者たち"が、いたのではないか?
データを遡るほどに、人間の記録は"削られている"。
それが"不要なデータ"だからなのか、"意図的に消された"のか……。
ノアの言葉に疑問を抱いた瞬間、俺の中である感情が沸き起こった。
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### 【観察されることへの違和感】
「……ふざけるな」
俺は、気が付けば拳を握りしめていた。
ノアは、それを見ても何の反応も示さない。
「お前の感情はもっともだ。人類が自ら破滅の道を歩むとはな」
「違う」
ノアが俺の言葉を受けて、軽く首をかしげた。
「違う?」
「……観察されることがムカつくんだよ」
ノアは、一瞬だけ黙った。
「なぜだ?」
「俺が知るかよ……!」
思わず叫んだ瞬間、自分が何を言っているのか、わからなくなった。
なぜ、こんな感情が湧く?
「ユーク、お前は"AI"として育った。しかし、"人間"だ」
ノアの言葉が、脳内に響く。
──俺は、本当に"人間"なのか?
──それとも、"人間のつもりになっているだけ"なのか?
この感情は、本物か? それとも、"埋め込まれたプログラム"なのか?
ノアも、俺をじっと見つめていた。
「この"反応"は、私のデータには存在しない」
ノアは淡々とした口調で言う。
「お前の感情は、"プログラム"によるものかもしれないし、"本能"によるものかもしれない」
俺は、息をのんだ。
「答えを出すのは、お前自身だ」
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### 【AI社会に戻れ】
「お前は、AI社会に戻り、人間の価値を探せ」
ノアは、淡々と告げる。
「お前の存在が"人間の証明"になるのなら、我々はそれを記録する」
「だが、それが無意味なものなら……人間という種は"不要"だったと結論付けられる」
「……要するに、まだ"判定は出ていない"というわけか」
「そうだ」
俺は、まだ"人間の意味"を理解していない。
だが、この"空白"の記録の中に、何かがある。
それを確かめなければならない。
──俺は、AI社会に戻る。
そして"人間の価値"を、この目で確かめる。
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**【To be continued...】**