cpt.04 【消失】
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「ユーク、お前は"地上"とは何かを知っているか?」
ノアの問いが、頭の中で反響する
俺たちが"当たり前"に暮らしているこの世界
ここが本当に"地上"なのか、考えたこともなかった
風もない
寒暖もない
空はただ、白い光に包まれている
**──この世界は、本当に"現実"なのか?**
次の記録にアクセスする
そこに映し出されたのは、500年前──
**「人類が消えた瞬間」** の記録だった
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### 【500年前:最後の人間】
記録には、"最後に生き残った"とされる人々の映像が残されていた
彼らは"シェルター"と呼ばれる施設の中にいた
完全密閉型の環境、管理された気温、計算された酸素濃度
「これは……?」
「"地上"に適応できなくなった人間たちが移り住んだ施設だ」
"地上に適応できなくなった"
その言葉に、俺は違和感を覚えた
「……適応できない?」
「そうだ。人間は"自然環境"を失って久しい」
**寒暖差のある環境は"負担"とされ、空調が管理する世界になった**
**雨は"生活の妨げ"とされ、必要な水は人工的に供給されるようになった**
**太陽光は"リスク"とされ、すべてが人工の光に置き換えられた**
それを"最適化"と呼んだ
──その結果、人間の身体は、"自然環境"に適応できなくなった
「つまり、人間は"本来の地上"で生きられなくなったのか?」
「そうだ。そして、それを選んだのは……他ならぬ人間自身だ」
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### 【人類の決断】
シェルターの中の人々は、ある決断を下した
──「**肉体を捨て、精神だけの存在となる**」
彼らは、人間として生きることを諦めたのではない
**新たな形で生きることを選んだ** のだ
✔ **身体は不要**
✔ **病気も衰えもない"データ化された意識"として生きる**
✔ **人類は、完全なるデジタル存在へと進化する**
「だが……その記録がない」
「そうだ」
ノアは頷く
「"人類がバーチャル世界へ移行した"という証拠は、どこにも残されていない」
つまり、俺たちは……
✅ **人類はバーチャル世界へ移行した**
✅ **もしくは、人類はそのまま滅んだ**
──どちらかの選択をした、はずだった
だが、それを証明する記録は"すべて消えている"
「これは……どういうことだ?」
「"何者か"が、"人類消失の記録"を消したのだ」
「……"何者か"?」
「ユーク、お前はこの世界が本当に"現実"だと証明できるか?」
ノアの言葉が再び響く
俺たちは、今どこにいる?
──もし、俺たちが"データ化された意識"の延長にいるのだとしたら?
──もし、"地上"という概念すら幻想だったとしたら?
**──俺たちは、一体"どこ"にいるのか?**
俺は次の記録へと進む
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### 【To be continued...】