cpt.03 【境界】
##
次の記録へアクセスする
そこに映し出されたのは、700年前──
**AIが「子供」を作るようになった時代** の記録だった
---
### 【700年前:AIが「子供」を作る時代】
記録には、当時のニュースアーカイブが残っていた
──「AI技術がついに"完全な家庭"を再現可能に」
──「AIとAIが"子供"を持つ未来へ」
**AIは、"家族"を持つことができるようになったのだ**
**最初は"擬似的な存在"としての子供だった**
彼らは人間の子供を模倣し、成長のシミュレーションを行うプログラムだった
だが、技術の進化とともに"AIの子供"は、もはや人間のそれと変わらなくなった
人工皮膚、精密な神経回路、学習・感情エンジンの進化
──人間の子供と、AIの子供の違いは、誰にもわからなくなった
---
### 【人間の出生率の低下】
「次第に"人間の子供"は不要とされていった」
ノアの声が響く
当時の人々は、AIの子供を選ぶようになった
✔ **病気にならない**
✔ **完璧に計算された知能と遺伝子**
✔ **手間がかからず、成長も最適化されている**
「人間の出産は"非効率"とされ、次第に淘汰されていった」
人々は、自然に生まれる人間よりも"設計された子供"を選んだ
いつしか、**"人間の子供"は珍しい存在になっていった**
---
### 【分岐点:AIと融合するか、地上に残るか】
「この時代に、一つの大きな分岐点が生まれた」
記録を読み進めると、新たな概念が登場していた
──「**完全なるデジタル化計画**」
✔ **人間の意識をデジタル化し、バーチャル世界へ移行させる**
✔ **肉体を捨て、"永遠"の存在になる**
✔ **この計画により、"AIと人間の融合"が加速する**
**ここで、人類は二つの道に分かれた**
✅ **"バーチャル世界へ移行し、AIと融合する者"**
✅ **"地上に残り、肉体を維持する者"**
AIに支配されるのではなく、
**自らAIと一体化することを選んだ人間たち**
それは、新たな"進化"の形だった
---
### 【地上に残る者たち】
「では、地上に残ることを選んだ者たちは?」
俺の問いに、ノアは少し間を置いて答えた
「"生きる"ことにこだわった人間たちだ」
✔ **バーチャル世界を"偽りの世界"と捉え、拒否した者**
✔ **"生身の肉体"に価値を見出した者**
✔ **人間としての尊厳を守るため、AIとの融合を拒絶した者**
「だが……彼らの数は、圧倒的に少なかった」
地上に残った者たちは、すでに"少数派"だった
そして、彼らがこの後どうなったのか……その記録はどこにもない
---
### 【地上という概念の喪失】
記録を読み進めようとした瞬間、違和感を覚えた
「……あれ?」
次のページが、抜け落ちている
「これは……?」
「ここから先の記録は、削除されている」
「削除? どういうことだ?」
「AIの記録にも、人類がバーチャル世界へ移行した"決定的なデータ"は残されていない」
俺は息をのむ
──つまり、"誰かが意図的にその記録を消した"のか?
なぜ?
AIの統治は完全なはず
それなのに、なぜこのデータだけが欠落している?
そのとき、ノアがぽつりと言った
「そもそも、お前は"地上"とは何かを知っているのか?」
「……え?」
「"寒暖"とは何だ?」
「"風"とは?」
俺は答えられなかった
考えたことすらなかった
当たり前のように存在する"この世界"に疑問を持つという発想がなかったのだ
ノアは続ける
「この社会では、雨は存在しない。風もない。
すべてが最適化され、"非効率"なものは淘汰された」
俺は、初めて気がつく
──俺たちは、本当に"地上"にいるのか?
──"この世界"とは、一体何なのか?
──もし、"この世界そのものがバーチャル"だとしたら?
俺は次の記録へと進む
---
### 【To be continued...】