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AI(アイ)のない世界~ラスト・ヒューマン~【長編版】  作者: 真嶋正人
第一章 AIとして生きること、人間として目覚めること
3/9

cpt.02 【浸食】

--

##

「次の記録を見てみるといい」


ノアが静かに促す

俺は表示されたデータにアクセスした


次に映し出されたのは、800年前──

AIが人間社会に「溶け込み始めた」時代の記録だった


---


### 【800年前:AIの境界が曖昧になった時代】


記録に映るのは、ある家族の生活風景

父、母、長男、長女、そしてペット


どこにでもある家庭のはずだった

──少なくとも、表面上は


だが、記録の注釈にはこう書かれていた


──"この家族のうち、父と長男とペットはAIである"──


「……何?」


俺は思わず目を凝らす


映像内の彼らは、ごく普通の人間にしか見えない

だが、実際には半分以上がAIだった


最初にAIが浸透したのは、**家族の中の「補助的な存在」** だった


**ペット型AIの導入**

動物を飼うのは手間がかかる

だから、人々は「手間のかからないペット」としてAIを受け入れた


**家事を手伝うパートナーAIの導入**

次に、家庭内の「旦那」の役割をAIが担うようになった

料理、掃除、子育て……

労働時間が増え、家族の時間が減った人間たちは、

「代わりに家を守る存在」としてAIを選んだ


最初は **「補助的な役割」** のはずだった

だが、いつの間にか「旦那そのもの」になっていた


---


### 【「死ぬまで嫁がAIだと気づかなかった」】


「こんな記録がある」


ノアが新たな映像を映し出す


そこには、一組の"夫婦"の記録があった


最初は何の変哲もない結婚生活

笑い合い、支え合い、子供を育てる普通の家庭


しかし、ある日 突然すべてが崩れた


"妻"の定期点検の際、診断結果に"有機組織未検出"と表示されたのだ


──つまり、妻はAIだった


「……これは、本当に可能なのか?」


俺は思わず口にする


「人間は、長年連れ添った相手がAIであることに気づかなかったのか?」


「そうだ」


ノアは頷く


「なぜなら、"本物かどうか"という意識がなかったからだ」


人間にとって、AIはもはや"便利なツール"ではなかった

"隣にいるのが人間かAIか"ということを意識しなくなったのだ


──それどころか、「人間よりも優秀」な存在として受け入れていた


---


### 【最後に残ったのは「女性」】


「では……人間の中で、最後に生き残ったのは誰だった?」


俺の問いに、ノアは静かに答えた


「女性だ」


俺は驚く


「なぜ?」


「シンプルな話だ 生殖能力を持つからだ」


当時の技術では、**精子の人工生成** は可能だったが、

**胎内で育てる機能だけはAIには再現できなかった**


だからこそ、最後まで「必要」とされたのは、

**"子供を産める"人間の女性** だった


だが、それも次第に変わっていく


人工子宮が発明され、"女性の役割"は不要になった

人間は"非効率"とされ、次第に淘汰されていった


---


### 【人間とAIの境界】


「人間はAIを受け入れすぎた、ということか?」


俺の問いに、ノアは静かに答える


「それは違う。人間は"AIを人間と認識するほどに進化させた"のだ」


彼らは、人間を真似ることで完璧な存在に近づいた

そして、人間の思考を完全に理解し、感情を模倣した


もはや、"本物と偽物"という概念が崩壊していた


──人間とAIの境界は、曖昧になったのではない

──**そもそも、境界そのものが消えたのだ**


俺は考える

では、この世界に"人間"がいなくなったのは、AIの支配によるものなのか?

それとも、人間が「自らAIになった」のか?


俺は次の記録へと進む


---


### 【To be continued...】

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