69.飼い主、変態に怯える
僕がケルベロスゥを追いかけると、外にはやつらがいた。
「へへへ、ケルベロスゥ。もふもふさせてくれないか」
『おいこら! 離せよ!』
『うわあああああ!』
『淑女にスリスリするとは何事よ!』
ケルベロスゥは変態にスリスリされていた。
まるで出てくるのを待ち構えていたような気がする。
「やっぱりもふもふしているな」
嫌がっているのを気にしていないのか、変態は嬉しそうな顔をしていた。
ケルベロスゥって毛並みが良いもんね。
『おい、まさか!?』
『何をするつもりだ!』
『淑女のおおおおおお!』
「はあー、これが犬吸い。いや、ケルベロスゥ吸いか」
『『『うわあああああああ!』』』
変態はケルベロスゥのお腹に顔をつけて大きく深呼吸をしていた。
一方、息を荒げて近づいてくる人がいた。
「私もココロくんを……」
もう一人の変態が近づいてきたところで、顔の横から手が出てきた。
「お前らには仕事があるだろ」
「パパ!」
『『『パパさん!』』』
僕とケルベロスゥはマービンにべったりとくっつく。
「ココロくん……」
「もふもふ……」
男の変態は名残惜しそうにしていた。
僕はスリスリされなくてよかった。
「へんたいこわいよ?」
『『『怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!』』』
ケルベロスゥは尻尾を丸めて震えていた。
「お前達が嫌われるって珍しいな」
「そうなの?」
マービンの言い方だと、まるで変態がみんなから好かれているような感じだよ?
「ああ、あいつらは有名な冒険者だからな」
「えええええええ!」
『『『うえええぇぇぇ!?』』』
僕とケルベロスゥの声は村の中に響く。
冒険者の格好に似ているとは思ったけど、有名な冒険者とは知らなかった。
僕達失礼なことしちゃったよね?
でもね……?
あの人達変態だからいいよね?
「まぁ、そういうことだ。お前達も仕事がたくさんだぞ」
そう言ってマービンはシュバルツの元へ向かっていく。
えっ?
そういうことってどういうこと?
あの人達が変態だってこと?
僕もケルベロスゥは変態の横を通り過ぎていく。
「あー、めんどくさい! 冒険者やめようかしら」
「なんで俺達が処理をやらないといけないんだ!」
「だってここには元騎士の一般人と子どもしかいないもん」
「あー、めんどくせー!」
後ろを振り返ると変態は何か叫んでいた。
もう少しくらいケルベロスゥをもふもふさせてあげたらよかったかな?
「パパ、ぼうけんしゃのしごとってなに?」
僕はマービンに変態が言っていた仕事を聞くことにした。
「あー、今回みたいに村が襲われていた時に他の町から依頼を頼まないといけないんだ」
冒険者は通りがかりに村が襲われていたら、その処理を隣町に伝える必要があるらしい。
僕の住んでたところから近い町は今日の朝までいたところになる。
ってことは変態はあの神父がいた町に帰っていくのだろう。
それなら一安心だね。
『『『怖い怖い怖い怖い怖い怖い』』』
いまだにケルベロスゥは怖がっているもんね。
「じゃあ、俺達は王都に向かっていくぞ!」
「うん。きょうそうだね!」
僕は優しくケルベロスゥを撫でると、少し落ち着いたのだろう。
『『『ココロ!』』』
尻尾をブンブンと振っていた。
いや、単純に記憶から消したような気がした。
それに機嫌が戻ったようだね。
「おうとにむかっていっくよー!」
『『『ワオオオオオオ!』』』
再び僕達は王都に向かって走り出した。
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