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【連載版】魔獣の傷をグチャグチャペッタンと治したらテイマーになっていました〜黒い手ともふもふ番犬とのお散歩暮らし〜  作者: k-ing☆書籍発売中


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67.飼い主、お礼を伝える

 どこかふわふわしてきて、僕はケルベロスゥにもたれていた。


『そんなに怪我人がいるのか?』

『ココロ大丈夫?』

『私がタマを食いちぎってこようか?』

『それ余計にココロが大変だろ』

『兄さんがちゃんとしたこと言っている……』

『俺はいつもちゃんとしてるぞ!』

『『……』』

『おい、二人して黙るな!』


 耳元でいつものようにケルベロスゥは言い合いをしている。


 本当に仲が良いね。


 僕も兄や姉と言い合いをしていたら、今頃あんなことを言われずに済んだのかな。


 終わったことを考えても仕方ないよね。


「あたまがズキズキする」


 段々と頭が締め付けられるような気がしてきた。


『魔力切れか?』

『パパさんに言いにいこう!』

『おででさんも治すことに必死になってるのね』


 たくさんの人を治すために、おででさんも頑張っているのだろう。


 だけど僕が倒れたら、みんなに迷惑がかかっちゃう。


 ほどほどにしないとね。


「ぼくもいく」


『ココロはここにいろ!』

『僕達で行ってくるよ』

『無理したらダメよ?』


「ひとりにするの?」


『うっ……』

『それは……』

『もうみんなで行けばいいのよ!』


 スゥは僕を咥えると背中に乗せた。


 こういう時ってスゥが一番はっきりしているね。


 僕達はそのまま家に向かった。



「ただいま」


 小さな声で僕は挨拶をする。


 もちろん挨拶が返ってくることはないが、久しぶりの光景を懐かしく感じる。


 僕が捨てられてそこまで経っていないのに、色々なことがあったもんね。


 ケルベロスゥやマービンに会っただけではなく、ビッグベアーに襲われたり、美味しいお肉を食べたり。


 ケルベロスゥとシュバルツとで、競争したのも楽しかったな。


「ここでいつもやさいばかりたべてた」


『ココロはすごいな!』

『野菜苦手だな……』

『ダイエットには良いって聞くわよ?』


 ダイエットってなんだろう。


 また淑女の嗜みってやつかな?


 僕はケルベロスゥに家の中を案内していく。


「ここはみんなで――」


『ココロその奥は俺達が……』

『待って!』

『開けちゃダメよ!』


 扉を開けると中には服を脱いで倒れている大人達がいた。


 マービンとおててさんを見つけたと思い近づくと、そこには知っている人がいた。


「ママ……」


 僕のママがこっちを見ていた。


 体は前よりげっそりと痩せており、まだ腕や足に青くなった傷があった。


「ココロ……」


 名前を呟いたがすぐに視線を外す。


 やっぱり僕のことが嫌いなんだね。


「ココロはどうしてきたんだ?」


「あたまがズキズキして……」


「あー、魔力が足りなくなったんだな」


 マービンは鞄からジュースのようなものが入った瓶を取り出した。


「ポーションを飲むと元気が出るぞ」


 手渡されたポーションを口に入れる。


 どこかすっきりとした味で、飲みやすい工夫がされているのだろう。


 魔力が回復したのか、頭のズキズキが治ってきた。


「パパありがとう」


「おう!」


 マービンは優しく僕の頭を撫でた。


「パパ……」


 そんな僕をママは虚ろな目で見ていた。


 ママに僕はゆっくり近づくと、ジーッと見つめる。


 少しビクッとしているのはなんでだろう。


 僕は悪いことするつもりはないよ?


「けがはないね」


 僕は周囲を見渡すとパパが倒れていることに気づく。


 ゴブリンクイーンに倒されたのかな?


「おででさんなおせる?」


 僕の言葉におででさんは引き続き治療を始めた。


 村の人達は何も言わないが、僕を恐れているような目でこっちを見ていた。


 きっとここでも僕が帰ってきたから、村が襲われたと思っているのだろう。


 しばらくすると治療を終えたのか、おででさんが戻ってきた。


「ねぇ、パパ?」


「ん? なんだ?」


「ゴブリンクイーンってうれるかな?」


 ビッグベアーは高く売れたけど、ゴブリンクイーンはどうなのかな?


「ゴブリンクイーンは胸のところに魔石があるのと、耳に付いている耳飾りを持っていくと討伐報酬がもらえるぞ」


 売れるならちゃんと持って帰らないといけないね。


「おててさんできる?」


 おてては親指を上げると、すぐにゴブリンクイーンに近づきグチャグチャしていた。


 相変わらず気持ち悪いため、マービンをずっと見ていると笑っていた。


 おててさんが魔石と耳飾りを持ってくると、僕はマービンに耳飾りを渡す。


「これもらっていい?」


「魔石か? んー、治療を手伝ってくれたからその報酬だな」


 どうやら魔石はもらっても良いらしい。


 なら、魔石は――。


「ママ……いや、ぼくはあなたがだいすきでした。ぼくをうんでくれてありがとう」


 僕はママに魔石を渡した。


 どこか虚ろな目をしていたママの瞳に少しずつ光が灯る。


「うぅ……うわああああ!」


 突然、泣き出したから僕はどうしたら良いのかわからない。


 僕が泣いていた時はみんなそう思っていたのだろう。


 泣き虫はバイバイしないといけないね。


 それに僕が近づいたのがダメなような気がした。


「これはむらをなおすのにつかってください」


 僕は急いで近くにいたケルベロスゥの元へ向かう。


『うっ……俺は胸が痛いぞ』

『グスッ……ココロ頑張ったね。もう息をするのも苦しいよ』

『うえええええええん!』


 なぜかケルベロスゥはみんなで大泣きをしている。


 胸が痛いってことは何かあったのかな?


「グチャグチャペッタンする?」


『『『いやだああああああ!』』』


 ケルベロスゥは泣きながら外に出て行ってしまった。


 泣くぐらいだからかなり痛いんだよね?


「グチャグチャペッタンするよー!」


 僕はそんなケルベロスゥを追いかけた。


「ははは、あいつはたくましく育ってますよ」


「はい……」


 後ろからはマービンとおててさんやおででさんも追いかけてきた。


 またみんなで追いかけっこかな?

お読み頂き、ありがとうございます。

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