66.飼い主、肉球をぷにぷにする ※一部マービン視点
「まーだかなー?」
『まーだだぞ?』
『ココロは何にも聞こえないよ?』
『それよりも肉球を堪能しなさい』
僕はケルベロスゥに耳を押さえられて、肉球でぷにぷにされていた。
突然変な声が家から聞こえたけど、僕はあまり聞かない方が良いってケルベロスゥがすぐに耳を押さえてくれた。
でもそのせいでケルベロスゥの声も聞こえない。
しばらくするとマービンが外に出てきた。
特に変わった様子もなくニコニコしている。
だけど、その顔が妙に怖かった。
「どうでした?」
「ゴブリンクイーンを倒したぞ」
その言葉を聞いてホッとする。
いくらお母さんでも悪いやつは倒さないとね。
でもマービンは困った顔をしていた。
「なにかあったの?」
「あー、おててさんとおででさんっているか?」
僕が呼ぼうとしたら、すでにマービンの後ろにいて少しずつ近づいている。
あれは驚かそうとしているのか?
そのまま黙っていると、やっぱりマービンに突っつこうとしていた。
「うぉ!? そんなところにいたのか!」
ニコッと笑うとおててさんとおででさんは親指を立てていた。
脅かすのに成功したんだね。
「よかったらおててさんとおででさんを借りることってできるか? 中に傷だらけの大人達が多くてさ」
「それならぼくも――」
「いや、ココロは来ない方がいいぞ。グチャグチャペッタン見ることになるだろ?」
「あー、そうだね」
確かにいつもグチャグチャペッタンしている時は目を閉じているもんね。
「まりょくはいいかな?」
「あー、それが問題になるよな。おててさんとおででさんが自分達で制御できたらいいけど、中々難しいもんな」
僕は以前シュバルツを治した時に倒れているからね。
マービンもそこが心配なんだろう。
「たおれないところまでできる?」
おててさんとおででさんに聞いたら、親指をあげていた。
ちゃんとお願いごとをしたら大丈夫なんだろう。
「じゃあ、おててさんとおででさんは付いてきてくれ」
僕はその後もケルベロスゥともふもふしたり、かけっこしたりして遊んだ。
♢
俺はおててさんとおででさんを連れてココロの家に戻った。
まずは生きている人をグチャグチャペッタンするのが優先だな。
「ん? なんだ?」
おててさんは何か伝えたいのか、俺を突いてきた。
意外に力の調整が苦手なのか、結構痛いんだよな。
何か手で伝えているが正直俺にはわからない。
とりあえず頷くと、部屋の掃除をしていた。
おててさんって家庭的な一面もあるならな。
前もココロの着替えを手伝っていた。
まるで母が起きれない子どもに服を着替えさせているような感じがする。
俺はおででさんと共にゴブリンクイーンがいたところに向かうと、みんなまだ放心状態なのかぐったりとしている。
おででさんも周囲をキョロキョロとしていた。
そして、すぐに男性に近づくとグチャグチャペッタンを始めた。
「夫になにするのよ!?」
体をグチャグチャにされて、やっと女性達は気づいたのだろう。
他の女性達はすぐに自分達の夫がグチャグチャにされないように庇いにいく。
そんな状態なら夫婦関係はどうにかなりそうだな。
「今は治療中だ。このままだと死ぬからな」
俺の言葉に女性達も戸惑いながらも下がっていく。
おででさんは状態を見極めているのだろう。
わずかに息がある人から治療していた。
次第に治療を終えていくと、一人だけ夫の元に駆け寄らない女性がいた。
「どうかしましたか?」
俺は気になって声をかけた。
「夫の治療はしなくても大丈夫です」
それはもう治らないと判断された人だろうか。
すでに助からない命もあるからな。
ただ、この女性の夫は俺が来る前に、ゴブリンクイーンと致していた人を指さしていた。
彼なら傷を負ってはいるものの命に別状はないはず。
そういう意味で言っているのであれば、彼女は正しいだろう。
それにしても彼を見ている目はどこか怯えているように感じる。
彼女にも色々あるのだろう。
俺は考えないようにしていると、掃除を終えたのかひょこっとおててさんが出てきた。
「おててさんどうし――」
俺の元へ来るかと思っていたら横を通り過ぎていく。
――パチン!
おててさんはそのまま突然女性の頬を叩いた。
何が起きたのかわからず、俺は止めようとするがスルスルと抜けておててさんを掴めない。
「おででさん!」
俺はおででさんに声をかけると、やっと気づいたのかおててさんを止めていた。
それでもおててさんは怒っていた。
なぜ怒っているのか。
周囲もこの状況に騒然としていたが、その原因はある者の一言で結びついた。
「ママ……」
声がする方に目を向けるとそこにはココロが立っていた。
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