64.飼い主、家に帰る
外には子ども達を集めたが、やっぱり大人は誰一人もいなかった。
倒れている人の中にもパパとママはいない。
「おい、悪魔! 俺達をどうするんだ!」
「父ちゃんと母ちゃんを返せ!」
『お前ら噛み殺すぞ!』
『ココロをいじめるな!』
『自分達の状況がわからないようね』
そんな子ども達にケルベロスゥは唸って威嚇する。
僕はもう気にしていないけど、マービンやケルベロスゥは僕が何か言われることが嫌そうだね。
「ぼくはだいじょうぶだよ?」
『何かあったら言えよ?』
『僕が助けてあげるからね』
『もうあんな思いはしたくないわ……』
声をかけるとケルベロスゥは心配そうに顔をスリスリとしてくる。
ケルベロスゥは何かあったのかな?
「ココロは強いな」
マービンも僕を優しく褒めてくれた。
この村には大人達がたくさんいた。
でも倒れている大人はそこまで多くない。
きっとそこにパパやママがいるのだろう。
それにゴブリンクイーンも見つけてないからね。
「ぼくのいえにいく?」
あと行ってないのは僕が住んでいたところだ。
僕の家は少し遠いところにあるからね。
「ゴブリンは近くにいるか?」
『この辺にはいないぞ!』
『たぶんいるのは変態だけだ!』
『冒険者に似たやつよ』
「あー、たぶんあいつらか。その変態なら大丈夫だ」
『はぁん!?』
『変態だよ?』
『何が大丈夫なのよ!』
ケルベロスゥはバシバシとマービンに頭突きをしていた。
みんな変態に対して厳しいもんね。
僕も怖かったけど、マービンが大丈夫って言うなら大丈夫な気がした。
きっとこのままいても僕達を探して追いかけてきそうだしね。
「じゃあ、ココロの家に行くけどゴブリンには気をつけろよ」
「うん!」
『『『ワン!』』』
僕は売られて初めて家に帰ることになった。
『こんな形で帰ることになるなんてね……』
「ぼくはかえらなくてもよかったよ?」
『あれだけ帰りたいって泣いてたのにか?』
イタズラな笑みを浮かべてケルはニヤニヤと笑っている。
初めてケルベロスゥに会った時は家に帰りたいと思っていた。
でも今は全くそうは思わない。
『ついでに身分証明書もあるといいね』
家に帰るならどこかにあるのかもしれない。
ママにあったらお礼を伝えて、身分証明書をもらわないとね。
マービンは手を横に出して静止させた。
「やけに静かだな」
この辺は畑ばかりだから静かなのかな?
でも兄と姉があそこにいたってことは、パパとママはどこかにいるはず。
僕達がゆっくり近づくと、ゴソゴソと音が聞こえてきた。
『何かいるぞ!』
ケルの声に反応してマービンはすぐに剣を構えた。
――キンッ!
マービンは飛んでくる矢を剣で弾いた。
「ゴブリンアーチャーか」
よく見ると家の上に何かを持ったゴブリンがいた。
「あいつらは弓を放ってくるからな」
僕達が近づいたら弓を放つように、ゴブリンクイーンが命令しているらしい。
やっぱりお母さんには逆らえないもんね。
僕のママも怖かった……かな?
何か思い出せそうな気もするけど、全く覚えていないや。
それよりもまずはあのゴブリンをどうにかしないといけないね。
「おててさん、おででさんいいかな?」
僕は小さな声でいつものようにお願いごとをする。
きっとおててさんとおででさんなら、解決してくれそうだもんね。
『それなら俺達で気を引くぞ』
『的当てゲームは得意よ』
『どちらかといえば僕達が的じゃないかな?』
『そんなこと気にしなく良いだろ!』
『さぁ、行くわよ!』
『ちょ、兄さんも姉さん止まって!』
ケルとスゥが動き出したら、ケルベロスゥは勝手に動き出してしまう。
それに的当てゲームと言っていたよね?
うん……。
今ケルベロスゥの上に乗っているけど大丈夫かな?
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