63.飼い主、合流する
「ペッタン! ペッタン!」
「お前達こんなところで何やってるんだ!」
おててさんとおででさんがペッタンしていると、マービンの声が近くで聞こえてきた。
目を開けるとそこには血だらけのマービンがいた。
「パパ! グチャグチャペッタンする?」
おててさんととおででさんが、お互いに合わせるようにペッタンペッタンしている。
「いや……俺は怪我をしていないからいいぞ」
マービンはどこか呆れたような顔をしている。
僕はケルベロスゥから下りて、マービンか怪我をしていないか確認する。
「ほら、腕も足もあがるぞ?」
マービンは腕をクルクル回したり、ジャンプをしていた。
どうやら本当に怪我はしていないようだね。
きっと怪我をしていたら、そんなに動けない。
「それよりもなんだこれは……」
「あっ……よごしちゃったね」
周囲を見渡すと地面が真っ赤に染まっている。
ゴブリンを倒したから仕方ない。
思ったよりもおててさんとおででさんが、ペッタンペッタンしていたもん。
「汚したって問題じゃないだろ! 怪我はしていないか?」
マービンは僕の肩を持つとクルクルと回す。
「はぁー、よかった」
僕が怪我をしていないか見ていたのだろう。
心配していたのはマービンも一緒なんだね。
「ごめんなさい」
僕はすぐに謝ると、ニコリと微笑んでいた。
優しい笑顔についつい僕も笑ってしまう。
『おい、おててとおでで!』
『今すぐにこっちにきて!』
『ココロの前であれはないでしょ!』
一方、僕から離れたところでケルベロスゥがおててさんとおででさんに怒っていた。
いつもはおててさんが怒っているから、少し変わっているね。
「それでなんでこっちにきたんだ?」
「へんたいがいるの!」
「変態?」
僕は振り向いて指をさすが、変態の姿はいない。
そういえば、さっき跳んできたからどこにいるのかわからないね。
「まぁ、ココロが無事でよかったよ。あとはゴブリンクイーンを始末するだけだな」
「たおすの?」
ゴブリンクイーンはゴブリンのお母さんみたいな存在だとケルベロスゥが教えてくれた。
「このままゴブリンが増え続けると危ないからな」
お母さんを倒すのは少し嫌だけど、このままだとたくさん増えたら他の村や町もなくなっちゃうらしい。
「そうか……。そういえばママはいた?」
「ママ?」
「うん! ここぼくがすんでいたところ!」
僕の言葉にマービンは息を詰まらせる。
何度か手を見てはおどおどしていた。
「どうしたの?」
「いや、慰めようと思ったが、さすがにこれじゃあ触れ――」
少し手を広げたところに、僕はスッポリと入っていく。
マービンをギュッと抱きしめる。
できないなら代わりに僕が抱きしめたら良いもんね。
優しく背中を撫でてくれるマービンにほっとする。
「ぼくはだいじょうぶ! パパとケルベロスゥがいるもん!」
パパとママがどうなったのかはわからない。
でも僕には新しい家族がいるからね。
「そうか。あとでココロの家を教えてくれ」
「うん!」
まずはゴブリンのお母さんを倒す方が先だもんね。
僕はマービンとともに村の中を探す。
村にいるなら建物に隠れていると言っていた。
だけど全然ゴブリンのお母さんは見つからない。
「おじゃまします!」
僕は家の扉をノックして家の中に入っていく。
どこにもいないのか、部屋の中を見てもゴブリンクイーンは見当たらない。
――ガタン!
物音がするとマービンとケルベロスゥが僕を間に挟む。
危ないから守ってくれているとわかってはいるけど、家族に挟まれて少し嬉しくなってしまう。
「なっ、なんで悪魔がいるんだ!」
でもそんな言葉をかけられたら、僕はギュッと掴んでしまう。
「大丈夫だ。お前は悪魔じゃないぞ」
「だいじょうぶ!」
さっきから見つかるのは隠れていた子ども達ばかりだ。
村で会う子ども達は絶対に僕を悪魔と呼ぶ。
そして村が襲われたのは僕のせいだと言われてしまう。
でも、家族が違うって言ってくれる僕は悪魔じゃない。
前の家族は誰一人も否定はしてくれなかったからね。
『はぁー、こいつも連れて行くのか』
『もうココロをいじめるやつは生きる価値ないよ?』
『全員タマを取った方が良いわね』
「おい! 俺に何をするんだ!」
ケルベロスゥはそんな子ども達を咥えて、外に移動していく。
家にいても危ないだけだからね。
外で子ども達をおててさんとおででさんが守っている。
これがこの村の人達にできる最後のお礼だからね。
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