62.飼い主、羽ばたく
『うりゃゃゃ!』
『兄さん、こっちに飛ばさないで!』
『そうよ! あなたは右側の担当でしょ!』
ケルベロスゥの背中に乗り、マービンのいるところを目指す。
爪で切り裂くと常に移動できないため、ケルとスゥが噛みついて、ゴブリンを退かせていた。
段々とゴブリンの声も大きくなり、マービンと戦っているのがすぐにわかる。
「ココロくーん!」
「もふもふさせてくれー!」
そして、後ろには変態がずっとついてくる。
『あいつらに残しておくか?』
『足止めにもなるもんね』
『ホップ、ステップ、ステップ、ジャーンプ』
ケルベロスゥは大きく跳ぼうとしたが、途中で自分の足に絡まっていた。
中々タイミングが合わないと跳べないんだね。
結局、ケルとベロがゴブリンに頭突きをしている。
『いってぇー!』
『姉さん! 普通はステップ一回でしょ!』
『淑女は二回よ! これが社交界に必要なダンススキルよ?』
スゥはダンスが踊りたいのかな?
「こんどいっしょにダンスする?」
『『『ワン!』』』
どうやら踊りたかったのはスゥだけではなかったようだ。
尻尾がブンブンして、僕の背中をバシバシと叩いてくる。
ゴブリンがいっぱいいるのに、ケルベロスゥはどこでも楽しそうだね。
『もう一回行くわよ!』
『ココロ掛け声を頼む!』
「うん!」
タイミングは僕に合わせるようだ。
『『『せーの!』』』
「ホップ、ステップ、ジャーンプ!」
『あら、ステップは一回なのね⁉︎』
僕の掛け声とともに、ケルベロスゥは大きく跳び上がった。
『うっひょおー!』
『うぎゃああああああああああ!』
『ははは、気持ちいいわー!』
まるで翼が生えた鳥のように感じる。
『私は蝶になったわー!』
『お前は蛾だろ?』
『なによ!』
ケルとスゥは相変わらず言い合いをしているが、ベロの様子が少しおかしいね。
僕は高いところは怖くないから大丈夫だけど……。
景色も良いから遠いところまで、よーく見えている。
奥では大きなゴブリンとマービンが戦っており、たくさんのゴブリンと人間が倒れていた。
あそこに向かえばいいんだもんね。
『おい、俺達跳びすぎじゃないか?』
『高いところ怖い……』
『ちょっと……高所恐怖症なら早く言いなさいよ!』
ケルベロスゥはドタバタとしていた。
ベロは下を見ないように、ずっと空を見ている。
『とりあえず、あのゴブリンの上に乗るか!』
『ムリムリムリムリ……』
『いっくわよー』
一際大きめなゴブリンの背中を目掛けて、僕達は落ちていく。
下から吹く風に僕の体はふわっと浮きそうになる。
『ココロオオオオオオオ!』
ベロの大きな声にゴブリン達の視線が集まってくる。
あれ?
僕達、目立っちゃっているのかな?
その間にマービンは戦っていた大きなゴブリンに斬りつけている。
『グギャ!』
僕達は見事にゴブリンの上に着地した。
『ムヒムリムリムリムリムリ。おしっこ出ちゃった』
『これぐらいで漏らすなよ!』
『あなたが漏らしたら、淑女の私も漏らしたことになるのよ!』
これでベロは高いところが苦手だってわかったね。
反対にケルとスゥは高いところが好きだから、体が一緒になると大変なのを再確認することができただろう。
いつか僕が治してあげるから待っててね。
『おいおい、俺達囲まれているぞ?』
『兄さんがこんなところに降りるからだよ』
『私はもう一度跳んでもいいわよ?』
『嫌だよおおおおおお! ココロ助けてよ!』
ケルベロスゥは兄弟喧嘩を始めると、どんどんとゴブリン達が寄ってくる。
このままだとマービンの元まで行けないし、僕達も危ないよね?
これがピンチってやつ?
僕は少しだけ考えて家族にお願いした。
「おててさん、おででさん! ゴブリンをおいはらって!」
僕の願いを聞き入れてくれたのか、地面からおててさんとおででさんがひょこっと出てきた。
もちろん親指は上がっている。
大きくなるおててさんとおででさん。
――ドオオオオン!
そのままパチンと薙ぎ払うかと思ったら、ゴブリン達の上から落ちるように地面と挟んで潰していた。
『モグラ叩きってやつか?』
『うわああああ、ココロ見ちゃダメ!』
『これは子どもが見たらダメなやつね』
ゴブリンは潰れて血や体の中身が飛び散っていた。
グチャグチャペッタンより、気持ち悪い光景に僕は目をつぶる。
やっぱりおててさんとおででさんは頼りになるね。
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