61.飼い主、村に到着する
村に近づくとゴブリンの数が急に増えてきた。
周囲の畑が焼かれており、魔物の怖さを改めて感じる。
『そろそろ村に着くぞ!』
『ココロは体を伏せておいてね』
『怖かったら目をつむるのよ』
「うん」
僕は言われた通りに体を伏せて目を閉じる。
パチパチと野菜が燃える音に、野菜を作っていたパパの悲しそうな顔が思い浮かぶ。
あの時のパパは偽物だったのかな?
『グギャギャ!』
ゴブリンの笑い声が聞こえてくる。
ケルベロスゥの動きが激しくなったってことは、ゴブリンと戦っているのだろう。
僕はおててさんとおででさんにも手伝ってもらうようにお願いをする。
「うえええええん」
「離せ!」
子どもの声が聞こえてくる。
僕とそこまで歳が変わらないのだろうか。
『チッ、胸糞悪いことをしやがる』
『ココロは目を閉じててね』
『まだ開けたらダメよ』
「うん」
ケルベロスゥに言われた通りに、ギュッと瞼に力を込める。
「悪魔が来たあああああ!」
悪魔って僕達のことかな?
ゴブリンを倒すところを見せたら、悪魔に見えないよね?
ケルベロスゥはもふもふしてて、かっこいいんだよ!
『グギャー!』
ゴブリンの叫び声が聞こえてくる。
それに遠くからもたくさんのゴブリンの声が聞こえてきた。
きっとあっちにマービンがいるのかな。
『おい、大丈夫か!』
『いますぐ逃げてね!』
『早く行かないと噛むわよ!』
そんなに驚かしたら、せっかく助けたのに驚いちゃうよ。
驚いて声も出なくなってるよ?
「なんでお前がここにいるんだよ!」
ん?
僕のことを言っているのかな?
ただ、その声に僕はゆっくりと目を開ける。
「兄ちゃん? 姉ちゃん?」
そこにいたのはいつも僕を守ってくれた兄と姉だった。
すぐに周囲を見渡すと、見慣れていた光景に僕は驚いた。
魔物に襲われていた村は僕が住んでいたところだった。
「お前が帰ってきたから襲われたんだ!」
「そうよ! 昔のパパとママを返して!」
兄と姉の言葉が重くのしかかってくる。
村が襲われているのは僕のせいなの?
パパとママも何か悪いことにあったのかな?
『お前ら勝手なことを言うな!』
『ココロ大丈夫だよ』
『お兄ちゃんをお姉ちゃんにしましょうか?』
ケルベロスゥは僕を心配してスリスリしてくる。
やっぱりケルベロスゥは僕の番犬だね。
『そもそも先に襲われてたじゃないか!』
『ココロのせいにするな!』
『やっぱりオネエちゃんがいいかしら?』
たしか僕が来る前には、すでに村は襲われていた。
僕とは一切関係ないはず。
それなのに僕が疑われる理由なんてない。
「だったら何で村が襲われてるんだ!」
「それはゴブリンクイーンが現れたからね」
声がする方に目を向けるとあの人達がいた。
「へんたい!」
『『『変態!』』』
僕達を追いかけていた変態がついに追いついてしまったらしい。
でも、さっきまでとは違って手には剣と杖を持っている。
まるで冒険者ギルドにいた人達と同じような格好をしている。
「ゴブリンクイーンは頭が良いから、この村を狙ったのだろう」
「それをココロくんのせいにするなんて許せないわね」
変態は兄と姉に詰め寄っていく。
でも今はそれどころじゃないよ。
そんな頭の良い魔物がいるって、マービンは知らないかもしれない。
早く伝えてあげないとパパも危ない。
「パパをたすけにいくよ」
「お前にパパを助けられるはずがない!」
「ぼくのパパはマービンさんだけだよ」
「えっ……だれ?」
もう僕の家族だった人達は家族じゃない。
僕の大事な家族はずっと一緒にいてくれた人達だけだ。
ケルベロスゥは再び僕を咥えて背中に乗せる。
『よし、行くぞ!』
『早くパパさんを見つけないとね』
『いくわよー!』
僕はマービンが戦っている村の奥まで再び走り出した。
「あっ、ココロくんちょっと待って……」
「もふもふ!」
背後から変態の声が聞こえたが、何を言っているのかまでは聞こえなかった。
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