48.騎士、大事な息子 ※マービン視点
「おいおい、またここに来たんか?」
俺が目を覚ますと、隣にココロとケルベロスゥが寝ていた。
昨日も一緒に寝ていたが、ひょっとして別の部屋で寝るのが寂しいのか?
あの時の息子とそこまで年齢は変わらないからな。
毎日俺と妻のアリサから離れずに寝ていたのが懐かしく感じる。
あれから5年が経ったのか。
今生きてきたら、お腹にいた子どもはココロと同じくらいの年齢になっていただろう。
今もあいつらのことをずっと忘れることはない。
前までは悪夢にうなされる日々が多かったからな。
野営している時に、冒険者が魔物と勘違いしたこともあったのが懐かしい。
ただ、少しだけココロ達といたら気が紛れることが増えた。
どこかでココロといることで、あいつらへの償いができていると思っているのだろうか。
「おーい、起きろよー!」
俺はココロを揺さぶる。
また、俺の腕の上で寝息を立てて寝てやがる。
気持ち良さそうに寝ていると起こしても良いのかと思ってしまう。
だが、あまり右腕で寝られると痛くなっちまうからな。
昨日もずっと右腕が痺れて痛かったのを覚えている。
まるであの時の痛みや傷を忘れるなと体が言っているような気がした。
「ん……」
ココロはゆっくりと目を覚ました。
相変わらず眠いのか、目を擦って起きようとしているがまた寝てしまう。
本当に朝が苦手なんだろうな。
その姿まで息子とそっくりで、ついつい笑ってしまう。
俺はゆっくりとココロを持ち上げる。
あれ?
いつもより右腕が動かしやすいぞ?
ココロの首元から右腕を引き抜き、クルクルと腕を回す。
いつもなら骨がぶつかったような感覚と痛みがあるのに全くない。
まるで騎士をやっていた時期に戻ったような気がする。
少し嬉しくなって手を前に出したり、おもいっきり握ったりしていると、ケルベロスゥはこっちを見ていた。
起きているなら何か声をかけろよな。
少し恥ずかしいじゃないか。
『治ったのか?』
ケルは俺に向かってそう聞いてきた。
俺はこいつらに怪我のことを話した記憶はない。
ただ、真っ直ぐ見つめてくるケルは全てを知っているような気がした。
『兄さん、本当にバカだね!』
『内緒でグチャグチャペッタンしたのがバレるでしょ?』
ん? グチャグチャペッタン?
『はぁー、本当に兄さんと姉さんはバカ……ブッ!?』
俺はゆっくりと近づきベロの顔を掴む。
こいつなら間違ったことは言わないだろうからな。
「俺に何かやったんか?」
急いでベロは俺から目を逸らした。
ケルとスゥに怒ってはいるが、ベロの行動も中々怪しいからな。
怒られると思ったのか、尻尾がシュンとしている。
『ごべんなしゃい』
すぐにベロは謝ってきた。
末っ子は素直で良い子だからな。
『今回は俺が初めに提案したからな』
『いや、私が言ったのよ?』
すぐにベロを庇うように、ケルとスゥも話し始めた。
本当に仲の良い兄弟だ。
お互いのことをしっかり守ろうとしているし、一番にご主人様のココロを気にかけている。
俺は優しく三匹の頭を撫でると、ホッとしたような顔をしていた。
別に怒っているわけではないからな。
あのグチャグチャペッタンを見たくなかっただけだ。
まるで傷口をナイフでえぐって、中を触って楽しんでいるようにしか俺には見えなかったからな。
それにやられている方の感覚とか痛みがあるのかさえも知らない。
きっと夜中のうちにコソコソとやっていたのだろう。
全く記憶にないからな。
「んー、たべられないよ……」
そんなケルベロスゥとは反対に、ココロはまだ俺の隣でスヤスヤと寝ていた。
「ココロもありがとな!」
俺は優しくココロの頭を撫でると、嬉しそうに笑っていた。
夢の中でもお肉を食べているのかな。
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