46.飼い主、お金の価値を知る ※一部ギルドマスター視点
「とりあえず準備にこれを使うといい」
ギルドマスターはテーブルの上に麻でできた袋を置いた。
『肉か!?』
『ニックニク?』
『きっとここにはお肉が入っているのよ』
どこかパンパンに詰まった袋にケルベロスゥも興味津々だ。
尻尾をブンブンして僕の顔をペシペシと叩いている。
でも、そんな小さな麻の袋にお肉がたくさん入る気がしないよ。
それにもし入っていたら、袋が赤色になっちゃう。
「あー、楽しそうにしているところ悪いがそれは金だ」
『チッ、期待させやがって……』
『けっ……決して淑女はお肉が食べたくて取り乱していたわけではないわ』
ほら、お肉は入っていなかったね。
それにしても金ってあのお金かな?
「ほら、ココロのだぞ」
マービンは袋を僕に手渡した。
中を開けたらキラキラと光っていた。
「わぁー!」
どっしりとした袋の中には、たくさんのお金が入っている。
ただ、お金を見たことがないからいくら入っているのかもわからない。
「ばしゃにのるにはいくらかかるの?」
「馬車か? あー、これくらいだな」
マービンは袋の中から数枚お金を出した。
それだけ抜き取っても、まだまだたくさんお金が袋の中に入っている。
『お肉だとどれくらい?』
「肉はこれくらいだな」
さっき出したお金とは違う色のものを数枚取り出した。
袋の中には色が違うお金が三種類入っている。
一枚はピカピカしていないの、もう一枚は少しピカピカしているやつ、そして数枚だけキラキラしたやつがあった。
「金貨は価値が高いから、取られないようにしろよ」
「どれくらい?」
「簡単に言えば半年はお肉が食べられるかどうかってくらいだな」
「へっ!?」
『ワォ!?』
僕とベロは顔を見合わせる。
「うええええええええ!」
『ワオオオオオオン!』
僕達の声は部屋の中に響いた。
ただ、ケルとスゥはどれだけ価値があるのか、まだ気づいていないようだ。
それにしても他の部屋と比べて響かないのは、ここが特殊な部屋なんだろうね。
「ははは、良い反応だな」
「本当に悪いやつには気をつけろよ。わざわざこの部屋に呼んだのも、そういう理由があったからな」
僕は知らないうちに大金持ちになったようだ。
頑張ってくれたケルベロスゥとおててさん達には、お祝いをしてあげられたらいいな。
ん?
おててさんって何も食べられないよね?
「ココロどうしたんだ?」
「みんなでおいわいしたいけど、おててさんなにもたべられない」
「あー、いつもどこかから出てくるもんな」
ひょこっとおててさんとおででさんが出てきて、マービンの肩をツンツンとしていた。
「うぉ!? びっくりした!」
おててさんとおででさんは、急に出てくる特技があるもんね。
それにしてもおででさんは、マービンの肩を何度も触っている。
「いっ……」
少し痛かったのかマービンは顔を歪めた。
おででさんは指を広げて、ハッとしていたがすぐにおててさんに怒られていた。
この中で一番厳しいのはおててさんだね。
僕もおててさんには怒られないようにしないと。
「じゃあ、また王都に行く日は伝えにくるぞ」
僕達はしばらく町の中でゆっくりすることにした。
♢
「ギルドマスターどうだったかしら?」
「ちゃんと馬車で行くように説得したか?」
「あっ……いやー」
俺は絶賛Aランク冒険者に追い詰められている。
あいつら元々馬車で移動する気もなさそうだったしな。
俺が馬車で移動するように勧めたら、逆に怪しまれてしまう。
「本当にダメなギルドマスターね」
「この際、ギルドマスターを引退するのはどうだ?」
こいつら俺が使えないってわかるとすぐに態度を変えるからな。
さすがAランク冒険者というべきか。
使えるものと使えないものをすぐに判断する。
そうしないと生きていけないのが、冒険者という職業だ。
「いいことを聞いたが教えるのをやめた」
そんな奴らにはあの情報を渡さない。
「ギルドマスターさまあああああああ!」
「さすがここのギルドマスターは一味違うなー」
急にペコペコしたと思ったらおだてだした。
すぐに手のひら返しだ。
「仕方ないなー。あいつら少しの間、町で遊んでから向かうって言ってたぞ?」
俺の言葉に、有名な冒険者二人が目をキラキラと輝かせていた。
「ひひひ、楽しみが増えたわね」
「その間に馬に乗る練習もできるぞ!」
「良い考えだわ!」
そう言ってあいつらはすぐに冒険者ギルドから出ていった。
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