42.飼い主、ケルベロスゥの好みが違う ※一部スゥ視点
「それで話の続きなんだが、馬車に乗らなくても大丈夫か?」
「うん!」
ケルベロスゥも一緒に散歩がしたいって言っていたから問題ないだろう。
それに僕達はあまりお金を持っていないからね。
馬車に乗って近くの教会に行った時も高かったから、お金の負担が大きくなってしまう。
「じゃあ、ビッグベアーの報酬をもらったらすぐに行こうか。紅蓮の冒険団達に絡まれるのもめんどくさいからな」
「そうだね!」
僕達はビッグベアーの報酬をもらったら、すぐにこの町を去って王都へ向かうことになった。
ちなみにここの食事処のお肉も柔らかくてとても美味しかった。
宿屋と違ってハーブって葉っぱを少し使っているらしい。
「おいしかった?」
『俺は宿屋のが好きだな!』
『僕はどっちも好きだよ? でも一番好きなのはココロだよ?』
『なっ!? お前せこいぞ!』
『私はもちろんココロ以外に興味ないわよ?』
『えー、姉さんひどいよー!』
『お前らどっちもひどいわ!』
僕にはわからなかったが、どこか変わったにおいがしていたのか、ケルベロスゥにとってはそれが好まなかったようだ。
普通に焼いたやつがケルベロスゥは一番美味しいんだって。
でもそんなお肉より僕が一番って嬉しくて、さらにもふもふしちゃうぞ!
「ねぇ、あの子達今度は王都に行くらしいわよ」
「どうする?」
「そりゃー、私達も行くしかないわ」
「護衛依頼があったら、俺達のかっこよさをアピールできたのに残念だったな」
「紅蓮の冒険団も警備隊に渡したことを伝えたら、もう少し一緒にいられるかしら?」
「ギルドマスターに言ってみるか」
「それもそうね」
僕はケルベロスゥをもふもふするのに一生懸命で周りの声は全く聞こえなかった。
ご飯を食べ終わった僕達は予定が何もないため、早く宿屋に帰ることにした。
♢
『ねぇ、あなた達起きなさい』
『あん?』
『姉さんこんな時間になに?』
私は寝ているケルとベロを起こす。
私だけじゃこの体をコントロールできないのが不便ね。
ケルとベロが寝ていたら、右側にどんどん傾いていってしまう。
頭が三つあるから、ほぼ頭でバランスを取らないといけないのが大変なのよ。
『ちょっと気になることがあるから、パパさんのところに行くわよ』
『俺はまだ寝たいぞ』
『僕も……』
『結局寝るんだから少しは協力しなさいよ!』
私はケルとベロに頭突きをして無理やり起こす。
『痛っ!?』
『姉さん何やったらそんなに石頭になるの……』
淑女の嗜みとして、石頭にする特訓をしていたのがここで役にたったわ。
変態に襲われたら頭突きをするのが、淑女の基本作法だからね。
「うーん、ケルベロスゥうるしゃいよ……」
私達はお互いに顔を見合わせて静かにする。
ココロを起こしたらいけないわね。
静かに部屋から出て、隣のマービンの部屋に移動する。
扉の開け方はもうマスターしたから、いつでも入れるようになったわ。
「うっ……」
マービンの顔を覗くと薄らと汗をかいて苦しそうな表情をしている。
そこまで寝苦しい夜でもないのに様子がおかしいわ。
そんなことを思っていると、マービンは急に目を開けた。
『わぁ!?』
つい私達はびっくりしてしまった。
「ケルベロスゥか? ココロの部屋は隣だぞ」
きっと私達が部屋を間違えたと思ったのだろう。
再びマービンは眠りについたが、やっぱりどこか苦しそうな表情をしていた。
私はそんなマービンの隣に腰を下ろす。
『ひょっとしてマービンの大事なところを覗くのか?』
『姉さん変態だね……』
『違うわよ! 家族だって言っているのに、何も話さないのが悪いのよ』
マービンは私達に隠し事をしている。
ココロもそれに気づいているけど、どうしたら良いのかわかっていなさそうだった。
だから、大好きなココロのために私が解決してあげようと思ったのよ。
『とりあえずあなた達も寝なさい』
『……』
『兄さんって寝るのが早いね』
すでにおバカな兄は眠っていた。
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