38.飼い主、ケルベロスゥは立ち上がる
「こわいよおー」
『ワオオオオオオ!』
僕達は急いでそのまま走っていくと、次第に明るくなってきた。
『ココロ捕まっていてね!』
僕はグッとケルベロスゥに掴むと、大きくジャンプして広い通りに出てきた。
『ワオオオオオオ!』
周囲にはたくさん人がおり、やっと元のところに戻って来れたようだ。
ケルベロスゥも安心したのか遠吠えをしている。
「ぬぁ!? こんなところにいた!」
ケルベロスゥの遠吠えで、どこにいるのかわかったのかな?
遠くからマービンが走って近寄ってくる。
僕達はすぐにマービンに駆け寄った。
「パパアアアアアア!」
『パパさああああん!』
「えっ? どうしたんだ?」
勢いよく抱きつかれて、マービンは戸惑っていた。
でも優しく僕達を抱きしめてくれた。
やっと体の力が抜けてくると、目からどんどんと涙が流れ出てくる。
「へんたいこわかったよー」
「変態?」
僕の言葉にマービンは頭を傾げていた。
やっぱり変態って珍しい言葉なんだね。
「勝手にどこかに行ったら心配になるだろ?」
「ごめんなさい」
「ケルベロスゥも町の人に迷惑をかけたら、ココロが困るだろ?」
『すまない』
『うん』
『ごめんなさい』
僕とケルベロスゥはマービンに怒られちゃった。
町の中にも怖いものが存在するとは思わなかった。
ビッグベアーは姿が見えたけど変態は見えない。
あまり人気がない暗いところには行ったらダメだね。
知らないことばかりだから良い勉強になった。
「じゃあ、冒険者ギルドに行こうか」
「うん。パパ!」
僕はマービンに向けて手を伸ばす。
「なんだ?」
「て!」
「て?」
『さすがに俺でもわかるぞ?』
『またココロが迷子になっちゃうよ?』
『本当に頭が硬い男ね?』
「ああ、そういうことか」
マービンは僕の手を握った。
迷子にならないように手を繋いだほうが良いもんね。
それにまた変態がいつ現れるかわからない。
今のところ周囲をキョロキョロ見渡すが、変な音は聞こえない。
「ケルベロスゥも!」
『なぁ!?』
『僕も!?』
『へっ!?』
ケルベロスゥも僕と同じで迷子になっちゃうからね。
僕はケルベロスゥの手を持って冒険者ギルドに向かって歩き始めた。
『コココ……ココロ?』
『さすがに僕達は歩きにくいよ?』
『ほぼ、私達立っているわよ?』
「だめだった?」
少し跳んでいるようにも見えるけど、さすがにケルベロスゥは歩きにくいのかな?
僕はゆっくりと手を離した。
『いや、そんなことないぞ!』
『そんなに悲しい顔しないでー』
『淑女たる者、ダンスの練習と変わらないわ』
あまりにも悲しそうな顔をしていたのかな?
僕が手を離すとケルベロスゥは立ち上がった。
『ほらほら、ココロ散歩するぞ!』
『ちょっと腰が痛いけど……よし、いける!』
『ダンスの練習よ、練習!』
僕は再びケルベロスゥの手を握る。
「ふふふ、みんなでおさんぽたのしいね!」
自然と足取りが軽くなって、ケルベロスゥみたいに僕も跳んでいる。
「あー、お前達も大変なんだな」
『ココロの喜びは俺達の喜び!』
『だって嬉しそうなんだもん』
『ダンスの練習と思えばいけるわ! 私は淑女なのよ!』
ウキウキして冒険者ギルドまでの道のりは楽しかったことしか覚えていない。
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