19.飼い主、ケルベロスゥは特別なの?
初めてケルベロスゥに会った時から話しているから、僕にとってはそれが当たり前になっていた。
「ケルベロスゥがめずらしいのかな?」
『俺はいつもと同じだぞ?』
『んー、僕達はシュバルツが話せない方が気になるね』
『私達は昔から話していたからね?』
どうやらケルベロスゥは昔から話せていたらしい。
そうなると変わっているのは、シュバルツなのかな?
「いやいや、馬は普通話せないからな?」
「ミツクビウルフは珍しいから、こういう個体もいるのだろう」
ケルベロスゥはミツクビウルフと言われて気にならないのかな?
確かに首は三つあるから間違っていないもんね。
でもおててさんがグチャグチャペッタンするまでは、ただのウルフだったよ?
「それよりも若いテイマーとマービンが一緒にビッグベアーの死体を連れてどうしたんだ?」
鎧を着たおじさんはビッグベアーの傷を見ていた。
「森の中で襲われてね」
「本当か?」
「ああ、その時に迷子になっていたココロ達に会ったんだ」
「ほぉ?」
おじさんは再びジーッと僕達を見てきた。
ケルベロスゥは僕を隠そうと、頭を動かしている。
「ははは、将来有望なテイマーにそんな悪いことはしないぞ」
おじさんは優しく笑っていた。
その隣でマービンは指を口元に持っていき、静かにするようにしている。
ここに来るまでにマービンとは話をしていた。
ケルベロスゥの攻撃が致命傷になっていたってその時は言っていた。
ただ、僕にはシュバルツが倒したように見えている。
ケルベロスゥがビッグベアーを傷つけた時でも、ビッグベアーは生きていた。
そこから駆けつけたシュバルツがほとんど倒していたからね。
でも、馬であるシュバルツがビッグベアーを倒せるのかな?
そこが今でも気になっている。
また後でマービンに聞いてみようかな。
「それでマービンは冒険者を雇わず戻ってきたのか?」
「そんなわけないだろ。あいつらに逃げられたんだよ!」
「はぁん!? 冒険者がそんなことするはずないだろ」
マービンの言葉におじさんだけではなく、武装している他の人達もザワザワとしていた。
一方、町で働いている人達はいつも通りの生活に戻っている。
僕達が驚かせてごめんなさい。
「それならよかったけどな。あいつらがちゃんと護衛をしてくれたら、俺達はこんな目に遭わなかったからな」
『ブルルン』
シュバルツも大きく頷いている。
マービンとシュバルツは死にそうな思いをしているもんね。
「そうか……。それならマービンは冒険者ギルドに来てくれ」
「ああ。それでココロはどうする?」
って言われても他の町に一人で来たこともないため、どうすれば良いのかもわからない。
「どうしようね?」
『遊ぶか?』
『いいね! 僕ともふもふしよ!』
『仕方ないから私の毛並みを堪能しなさい』
『兄……姉さん、この体僕のだよ?』
マービンを待っている間ケルベロスゥと遊ぶことにした。
もふもふして気持ち良いから時間はすぐに経つだろう。
きっと僕が町に入れないのは、まだ怪しまれている気がする。
それにケルベロスゥも安全かどうかわかってもらえないだろうしね。
「どこがきもちいい?」
『俺は首の根本だな!』
『僕は頭が良い!』
『私は頬かしら?』
ケルベロスゥは体が一つで、もふもふされたい部分が違うようだ。
僕は言われた通りにもふもふする。
「相変わらず仲が良いな」
「魔獣というよりは完全に犬だよな」
僕はケルベロスゥのお腹をゴシゴシする。
「しばらくの間はシモンが見ててくれ」
「俺ですか?」
「お前のところにも弟がいるから大丈夫だろ?」
「一応弟がいるけど、まだ仕事中ですよ?」
「門にミツクビウルフがいたら悪いやつは寄ってこないだろ」
「はぁー」
ケルベロスゥをもふもふしていると、鎧のおじさんがある人を連れてきた。
「こいつはシモンって言って警備隊に勤めているやつだ」
「えーっと、しばらくの間俺と遊んでくれないか?」
どうやら僕達と遊びたいらしい。
町の友達にも遊びたいって言われたことがないから嬉しい。
こうやって友達ができるのかな?
簡単なことだけど僕には難しい。
『俺のココロを取る気か!?』
『ココロの一番は僕だ!』
ケルとベロは歪みあっているが、スゥはどこか違った。
『あなた良い男ね』
『はぁん!?』
『姉ちゃん!?』
どうやらスゥは門番のスモンが気に入ったようだ。
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