11.飼い主、馬を見つける
『ワオオオオオン!』
突然の遠吠えに僕は目を覚ました。
どうやらケルベロスゥを待っていたら眠っていたようだ。
周囲は明るくなっており、いつのまにか朝になっていた。
「ん? みんなしてどうしたの?」
起きた瞬間、ケルベロスゥは必死に僕の顔を舐めてふみふみしてきた。
まるで生きているのを確認しているようだ。
『ココロか?』
『生きてるよね?』
『ちゃんとタマタマ付いてる?』
スゥだけ少しおかしいが、僕はちゃんと生きているしピンピンしている。
「あっ!?」
『どうした!』
『大丈夫?』
『タマタマなくなった?』
やっぱりスゥだけ少しおかしい。
僕はすぐに体を起こしてその場を確認する。
「つぶれちゃった」
昨日おててさんが取ってくれた果実は潰れていた。
せっかく頑張って取ってくれたのに……。
みんなで食べたかったな。
『心配させるなよ!』
『僕が取ってあげるよ!』
『タマタマなら私のをあげるわよ!』
「ちゃんとあるからスゥのはいらないよ」
僕はズボンを脱いでちゃんとあることをスゥに教える。
安心したのかなぜか大きく息を吐いていた。
僕が寝ているときに何かあったのかな?
『ああ、あれは夢なのか』
『きっと夢だね』
ひょっとしたら怖い夢を見ていたのかもしれない。
僕もママやパパと楽しくご飯を食べている夢を見ていた。
いらない子って言われたけど、ちゃんと謝ったら許してくれるかな?
そんなことを思っていると、お腹が大きく鳴った。
昨日は結局、朝から何も食べていなかったもんね。
「おなかへったね」
『果実を探しに行くぞ!』
『ココロは離れないようにね』
『私が護ってあげるからね』
みんなして僕にべったりとしてくる。
果実を探しに歩こうとするが、ケルベロスゥが邪魔で全く動けない。
どうしようか迷っていると、ベロが僕を咥えて背中に乗せた。
『ずっと一緒だからね!』
『そうだ!』
『そうよ!』
どうやらケルベロスゥは甘えん坊になったようだ。
そんな甘え坊達の頭を優しく撫でると、嬉しそうに尻尾をブンブンと振っていた。
昨日はそこまで尻尾は気にならなかったが、ここまで大きく振られるとつい目に入ってしまう。
「ぼくもみんなといっしょだよ!」
僕もケルベロスゥに抱きついて、果実を探しにいく。
「どこにもないね」
『果実って珍しいんだな』
『野ネズミでも食べてみる?』
「んー、おなかいたくなるよ」
あまりにも果実が見つからなくて、ベロが野ネズミを勧めてきた。
ただ、そのまま食べたことがないため、お腹を壊してしまいそうだ。
『おい、血のにおいがするぞ!』
『野ネズミじゃなくて?』
そういえばケルベロスゥは野ネズミ一匹で足りるのだろうか。
先に食べても良いのに、今も昨日捕まえた野ネズミを順番に咥えて一緒に果実を探している。
『血のにおいが濃いぞ!』
ケルは周囲を警戒する。
『ココロは僕達から離れないようにね!』
すぐにべったりとくっついて離れないようにする。
体を伏せてゆっくりと近づく。
ケルだけ真剣な顔をしているのに、ベロとスゥは僕がべったりとくっついているから嬉しそうだ。
『あそこに馬がいるぞ』
馬と言われて僕は体に緊張が走る。
ひょっとして僕が逃げてきたとこに戻ってきたのだろうか。
体を起こして様子を見ると、その馬車は檻のようなものではなく、普通の荷馬車だった。
「だれかいる?」
『魔物はいないけど……』
魔物がいないと聞いた僕はすぐにケルベロスゥから降りて、馬の元へ向かっていく。
ひょっとしたら治せるかもしれないからね。
「おててさん!」
おててさんを呼ぶと、嬉しそうに地面から出て、手を振っている。
「うまさんなおせる?」
僕の言葉におててさんは親指を上げていた。
あれは傷を治せるという合図だ。
でも、馬の体には爪で大きく引っかかれたような傷ができていた。
息をするだけでも苦しそうだ。
魔物や魔獣が馬を食べようとしたのかな?
『またビックベアーの仕業かな?』
『あいつならやりかねないな』
『襲って楽しんでいるぐらいだからね』
ビックベアーって僕を殺そうとした大きなクマだ。
あのクマは戻ってくる可能性があると、ケルベロスゥが言っていた。
だから、周囲をキョロキョロして警戒しているのだろう。
その間におててさんは馬の傷口に黒い手を入れてグチャグチャとしている。
いつ見てもすごい光景だな。
「ヒイイィィ!?」
突然声が聞こえてきたと思い振り返ると、そこにはパパぐらいの年齢の男の人が立っていた。
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