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砂上の狩人  作者: eight
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第7話 王都ニグ

長い黒髪の女がいた。その顔はマスクにより見えない。白い手袋をした手にはガラス瓶があり、その中には紫色の毒々しい液体が入っている。

女がその液体を垂らした瞬間、周囲に悲鳴が鳴り響いた。








王都ニグ。

そこにある王立学院初等部の教室。

教壇に立った、保護具をつけた黒髪の若い女性教師がグルドカブラから抽出した液を肉に掛けると、ジュウと言う音と共に溶け出した。

それを見た小さな生徒たちが「キャー!」や「えぇー!」など各々声を上げる。

そんな教室の後ろに壁際に、ディケンズとライラが立っていた。

腕を組み、真剣に見ているディケンズに対して、ライラは死んだ魚のような目でその光景を見つめている。

「おい、ディケンズ。」ライラが邪魔にならないよう、小さな声で問いかけた。

「何だ?」

「アタシたちは何を見させられてるんだ?」

尚も生徒たちに騒ぎ声は続いていた。

「何って、授業だろうな。」

「そうじゃねぇよ。何でアタシらまで見てんだよ。」

「そりゃあ、『お二方も是非』って言われたんだから、しょうがねぇだろ。」

「是非って言われたからと言って、断る選択肢が消えたわけじゃねぇだろ。」

「まぁ、それは空気とか雰囲気ってもんがあるからな・・・」

「勝手に空気の呑まれたお前はいいが、巻き込まれたアタシの気持ちはどうなる。」

「まぁ、いいじゃねぇか。もう終わるだろ。」

ライラが力ない溜め息を吐いたところでチャイムがなった。


席に戻った生徒たちに教員が言う。

「皆さん、最後に今日覚えたことは何かな?この草を見たらぁ~?」

生徒が大きな声で一斉に言う。

「ぜったいにさわらない!ちかくのおとなのひとにいう!」

「良く出来ましたぁ!危ない事だから、お友達にも教えてあげてね!」

「は~い!!」

「それじゃ、今日はおしまいです。気を付けて帰って下さい。」

「さよなら~!」生徒たちが帰り支度をしていると教員が言った。

「皆さん、帰る時に、この草を取ってきてくれたおねぇちゃんたちにお礼を言って帰って下さいね。」


子供たちは教室を出る前に代わる代わるライラたちにお礼を言っていく。

「ありがとぉ~!」

「お、おう。」

ライラたちは適当に返事を返す。

一人の女の子が屈託の無い笑顔で言った。

「トカゲのおじさんもありがとう!」

その瞬間、ライラが吹き出した。

「おい。」

「何だよ?事実だろ。」

「事実だとしても、お前が笑うんじゃねぇよ。」

「ほら、怒るなよ。子供が泣くぞ。」

「うるせぇ・・・」

ディケンズは笑顔を作りながら、後ろ手にライラを小突いた。





あれから三日後、一度メイリスに戻った二人は王都に来ていた。

教員との挨拶を終えた二人は学院を出て、王宮に向かう。

王都ニグはハーラル王国の首都であり、最大の街。

街の北には国王ダンクロアのいる王宮があり、そこから南に延びる大通りには、数々の店が連なる商業区が広がり、そのまま港まで続いている。

商業区の西には住人たちの住居や学院、病院などがある居住区。東には素材の加工や建築関係などの工業区があり、狩人たちのギルド本部もそこにある。但し、普通の町にはギルドとの連絡係が任命されているだけでギルドと言う形で存在しているのは、ここと国境の街、ベールズにある支部だけである。



王宮に着いた二人が門番に話をつけ、暫く待っていると一人の老人がやってきた。

「久しぶりじゃな。」

眼鏡を掛け、立派な髭を蓄えた背の低い老人が二人に声を掛けた。

「モドンさん。元気そうでなりよりだな。」ディケンズが返した。

「もうくたばっちまったかと思ったぜ。」

「ハッハッ!お前さん方のする事を考えれば、くたばるのはそっちが先かもしれんのぅ。」

モドンはライラの軽口を軽口で返した。

「一昨日の夜、ルーゼス様が訪れてな。話は聞いておる。ついて参れ。」



モドンについて、王宮内の魔物研究所に入る。中には何人かの学者とみられる者たちが文献に目を通したり、魔物の素材を調べている。

ライラがディケンズに小さい声で言う。

「高く売れそうなもんが沢山あるな。ちょっと拝借するか?」

「馬鹿、止めとけ。後が面倒だぞ。」

「バレやしねぇよ。」

「バレるだろ。」

「聞こえとるぞ。」モドンが前を向いて歩いたまま言う。

「あら。ジイさん、年の割りに耳がいいんだな。」ライラは笑って誤魔化す。

「ここには冗談の通じぬ者もおる。気を付けることじゃな。」

「はいよ。」



「これが一覧じゃ、ルーゼス様の要望じゃからな、分かりやすく大きくしておいてやったわい。」

案内された部屋の壁には大きな紙が貼り出されていた。

「危険度別でS~Eランクに分けてある。無論、我々が情報を掴んでいない魔物もおるかもしれんがな。」

「やっぱ、Sは不浄王一択か。」とディケンズ。

一番上のSランクにはケイオスヘッドの名だけ書かれている。

「まぁ、EとDは特に無視で良いレベルだな。ウィーグテイルでCか・・・」

ディケンズの腕には毒針で負った傷の包帯がまだ巻かれている。

「Bとなると、突然出会ったら、遠慮する相手って感じか。と言うか知らん名もちらほらあるし。」

「ああ。挑むならそれなりの準備と覚悟いるな。」

Aランクには4頭の名が書かれている。

「Aはデザートドラゴンとゴルムバゼラとムロイスと・・・ギルニアデーモン?聞いたことあるか?」

ライラの問いかけにディケンズが答えた。

「いや、無いな。と言うか随分、抽象的な名前だな。」

「其奴は存在は確認されておるが、砂漠でも中心地近くにおるため、はっきりとした記録が無くてな。」

「だから曖昧な名前なのか?」

「そうじゃ。ポッポリーの話ではケイオスヘッドも容易に手は出さんそうじゃから、実力は間違いないじゃろう。」

ポッポリーはケイオスヘッドの縄張り移動を確認する観測者のことだ。

「不浄王がねぇ・・・」

ポッポリー(あの娘)の説明では詳細な記録は取れんのでな。あくまで暫定的なものじゃ。」


ディケンズがランクの枠外に書かれている名を指差した。

「こっちの連中は何なんだ?」

「そちらはイレギュラーな連中じゃ。時期に寄って危険度が変わる者や、ギルニアに生息してないが、一時的に現れる者じゃな。」

「あぁ、なるほど。だから凍幻鳥が入ってるのか。」

「あやつは渡りの途中で寄るだけだからのぅ。」


一通り見終えた後、ディケンズが尋ねた。

「ここにある表は何かにメモしても良いのか?」

モドンはポケットから小さな本を2冊取り出し、ディケンズに差し出した。

「心配せんでも初めから用意してあるわい。」

「そいつは助かる。ありがたい。」

「C~Sランクと欄外の魔物だけ記載あるぞ。」

「それで充分だ。色々と済まないな。」

「気にするでない。もしも狩れたなら素材と情報はこちらに回してくれ。」

「了解だ。」


「ライラ、行くぞ。」

その辺を見て回ってたライラに声を掛ける。

「はいよ。」


そうして二人は王宮を後にした。


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