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砂上の狩人  作者: eight
53/54

第53話 ギルニアを統べる者②

三日後。

王都の前には王国軍、そして狩人たちが集まっていた。


ヘイリッドが皆に向け、声を張る。

「予測では、じき現れるはずだ!作戦は話した通り、各個撃破でいく。一体ずつ、確実に倒していけ。だがどのような者が現れ、何をしてくるかは分からん。各自、状況に応じて動け!」

隣のミゲイルが続く。

「負傷した者は王都に戻り、救護隊の治療を受けよ。その為にも、王都には一体足りとも入れるな!」

「奴らが動き出すまでは待機だ。いつでも戦えるよう準備しておけ。」

狩人以外の兵たちが大きな声で返事をし、各配置に着いて待機する。

狩人は自分たちの好きな位置に陣取った。

「あいつら実践経験あるのか?」

ライラが少し離れたところでディケンズに言った。

「魔物相手ならそれなりにやってる奴もいるだろ・・・これを戦争と言うなら、経験者はほぼいないだろうがな。」

「ここらは平和だからな。戦争ってならアタシも素人だ。」

「狩人で戦争経験があるのはミゼットとバアルくらいだろうな。」

「バアルはあるのか?」

ライラはバアルのいる方に目を向けた。

バアルは油のようなものを染み込ませた布で剣を拭いている。

ディケンズもバアルの方を見ながら答えた。

「アイツは元傭兵らしいぞ。」

「ほ~ん。戦争屋から狩人に鞍替えか・・・」



「ルル。準備はいいか?」

ブロウが尋ねた。

「・・・いつでも。」

ルルは静かに魔法陣を見ながら言った。

ルルの耳がピクッと反応し、振り返る。

「ルル様。」

そこにはローゼルが立っていた。

「ローゼル。」

「マスターよりこちらをと。」

そうして筒状の物を渡した。

「パイルフレイム?」

それはルルのガントレットに装着し、爆発を起こす道具。だが少し形状が違った。

「以前、マスターが試作してみた物です。正規品ではありませんので、性能は異なるかもしれません。出来れば使用は控えて頂きたいですが、事が事ですので、お持ち頂ければと。」

「ありがとう。」

「ローゼルも戦うのか?」ブロウが問い掛けた。

「はい・・・ですが前線には立ちません。皆様が取り零した者を街に入れないようにとマスターから仰せつかっております。」

「なるほどな。じゃあ出番が無くて済むようにしてやるよ。」

「宜しくお願いいたします。」

ローゼルは頭を下げると街の方へと下がっていった。



ライラたちが待っていると空から何かキラキラとした粉が降ってくる。

「ん?」

二人が見上げるとポッポリーが辺りを飛びながら袋に入った粉をばら撒いていた。

「なんだこりゃ?」

身体に着いた粉は、粉雪が溶けるようにスッと消えていく。

「ああ、エドゥリアの作った薬らしい。少しではあるが強靭さが高まるとかなんとか・・・」

「ほ~ん。」

「みんな頑張るの~!」

ポッポリーは声援を掛けながら、粉を撒いている。

「まさかポッポリーも戦うのか?」

「いや、流石にねぇだろ。」

「・・・だよな。」



「・・・来たか。」

一人離れたところにいたミゼットが何かを感じて呟く。

魔力の高い者たちも気付き、辺りはざわつき始めた。

「いよいよみてぇだな。」ライラは両手で自身の顔を叩き、気合いを入れた。

その時、魔法陣が赤く光り、光の柱が地面へと落ちる。

そして、光の中から魔物の群れが姿を現した。

人型や獣型、大きなものから小さなものまで、多種多様の魔物が周囲を見渡し、人間たちに気付くと雄叫びを上げて走り出す。


「皆のもの!準備は良いかっ!!」

ヘイリッドの言葉に兵たちが声を上げるよりも早く、二つの影が飛び出す。


それはライラとミゼットだった。

そして二人は同時に叫ぶ。

「こういう時はなぁ!」


ライラは(おもむろ)に手を砂に突っ込み魔力を込めながら振り上げた。

「最初にビビらせときゃいいんだよっ!」

地面を盛り上げ現れた砂の爪が、魔物の群れを弾き飛ばす。


一方、ミゼットは鎚を振り上げながら大きく飛ぶ。

「ビビった奴から死ぬんだよっ!」

魔物の頭を叩き潰すと同時に、衝撃で周りに魔物を吹き飛ばした。


二人同時の速攻に魔物たちが戸惑った。

その光景を見たヘイリッドはニヤりと笑い、魔物の群れに剣を向けて叫ぶ。

「進めぇ!」

兵たちの鼓舞する声と共に開戦の火蓋が切られた。



王国軍と魔王軍がぶつかり合い、各地で怒号が響き渡る。


緑の体色を持つオークと呼ばれる種族の斬撃を、ライラは下がって避けると、そのまま宙返りするように顎を蹴り上げ、怯んでバランスを崩したところへ剣を突き刺した。

別の魔物が背後から襲ってきたが、ライラは剣を抜いてオークを跳び越えると、後ろ蹴りでオークを飛ばして当てる。

魔物が倒れたところへ王国軍の兵が止めをさした。


振り向いた視線の先でオークを殴り飛ばしたルルがいた。

「この程度ならいけるな。」

「多分、徐々に強くなる。」

ルルが魔法陣の方を見た。

赤い光は途切れており、第一陣と言わんばかりに魔王軍の侵入はなくなっていた。

「なるほど。さっさと始末しとかねぇと、後が怖ぇってことか・・・」




ブロウがその大剣で魔物を切り裂く。

倒れた魔物の向こうから四足の獣が飛び掛かり、咄嗟に剣を盾にして受け止める。

そのまま後方へ少し押された。

「力比べか。嫌いじゃないぜ!」

ブロウは踏ん張り力を込める。獣もまた力を込めた。

両者引かずの押し合いをしているところへ、ディケンズが横から斧の一撃を入れる。

怯んだ瞬間にブロウが押しきり、そのまま横切りで魔物を裂いた。

「ふぅ・・・まぁ、あのままやってても俺が勝ってたけどな。」

ブロウは口惜しそうに言った。

「遊びじゃねぇんだぞ、遊びじゃ。」

ディケンズが嗜める。

「にしても、魔王軍とか言うからビビってたが、思ったより大したことないな。」

「ああ。だが、数が多すぎる。」

「確かにな。まぁ、こういう時こそ、我らか王国軍の皆様に頑張ってもらおうじゃねぇか。」


少し離れたところに副団長のミゲイルがいる。

狩人とは犬猿の仲で、評判はすこぶる悪いが、副団長の肩書に恥じぬ統率力で、隊を率いて的確に魔王軍を撃破していた。

そして、その向こうで隊を率いている軍団長ヘイリッドが、その豪腕で魔物を弾き飛ばす。

「離れよ!」

その号令に辺りの兵がサッと下がる。

ヘイリッドが両手で剣を強く握ると、その刃が強力な雷属性を纏う。

気合いと共に力強く振り下ろすと、黄色い閃光の衝撃波が駆け、前方の魔王軍を蹴散らした。


見ていたブロウが口笛を鳴らす。

「流石は団長殿、と言ったとこか。」

「お前も出来るか?」

「似たような事は出来ても、あの威力は出せねぇだろうな。」

横から襲い掛かってきた魔物を二人は返り討ちにする。

「この分なら朝までに終わるか?」

ブロウが言う。

「いや。ミゼットの話からすれば、まだ油断は出来ないだろう・・・」



ライラが小さな砂の玉をいくつも作り出し、一斉に放つ。前にいた魔物の群れが目潰しを喰らい、怯んだところを駆け抜けながら切っていく。

止めは刺さずに足を狙う。足を負傷させておけば、あとは軍の連中に任せておけば良いと踏んだ。

群れを抜けたところで、横から氷の(つぶて)が飛んできた。

咄嗟に跳んで躱そうとしたが、足に被弾し、その場で横転する。

「くっ!」

立て直そうとした時、近くにいた中型の肉食竜がライラ目掛けて飛び掛かる。


咄嗟に籠手で防ごうとするライラへ向け、その鋭い牙が襲い掛かった。



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