第52話 ギルニアを統べる者①
いつも読んで頂き、ありがとうございます。
楽しんで頂けていれば幸いです。
エピソードタイトルの末尾に数字が付いてる話は、サブエピソードやキャラクターエピソード的なニュアンスで作成しており、大体②か③、長くても④で終わるように構成していますが、今回は⑨までいきます。
章設定と言う機能があるので章にしようかとも思いましたが、章にしては短いし、ここを章にしても普段の話を、章として特に区切って考えてないので、そのまま投稿することにしました。
改めて書き出してみると、別に前書きとして書く程の事でもないな。
それではご覧下さい。
その日、王都に名の知れた狩人たちが集められた。それは任意ではなく、命令である。
普段なら無視する者もいるが、今日に限ってそうではない。何故なら全員が何の為に集められたかを分かっていたからだ。
王宮の一室、そこにはハーラル王国の重要人物たちがいた。
正面の中央にいるのは、王国軍団長ヘイリッド。その両脇には副団長ミゲイルと大臣であるクレイトン・バッソがいた。
更には魔物研究所長モドン、魔法研究所長ミザネアといった各機関の長たちも控えていた。勿論、王国軍の各部隊長の姿もある。
狩人側も、ベールズのバアル、ヨーズリーのミゼット、メイリスからはライラ、ディケンズ。そしてブロウ、ルルを含む王都ニグの狩人たちが集められている。
ヘイリッドが一言喋る。
「皆のもの、まずは良く集まってくれた。感謝する。」
次いで大臣のクレイトンが前に出た。
「此度集まって貰ったのは他でもない、一週間前にギルニア上空に現れた魔法陣に関してだ。」
皆、分かっていた為、誰も驚くことなく神妙な面持ちをしていた。
「ありゃあ一体何なんだ?」ブロウが言った。
「それについては今から説明する。」
クレイトンはそう言うと魔法研究所長のミザネアを見た。
紫のボサボサ髪に丸メガネを掛けた女。背が高く、スタイルは良いが、研究者の性か、自身の手入れには興味が無いようだった。
「魔法研究所のミザネアだ。あの魔法陣に関しては私から説明したいところだが、私よりも詳しい奴がいるから、そちらにお願いしようと思う。宜しくな、悪魔さん。」ミザネアはミゼットを見た。
ミゼットは軽く舌打ちしてから言った。
「あれは魔王の召喚陣だ。」
「魔王・・・」
魔王の言葉に皆がざわつく。
魔王は魔界に於いて、一定の領地と配下を持つ者の総称。勿論、それに見合うだけの力を持つ。
「その魔王はどんな奴なんだ?」
ライラが尋ねた。
「知らん。魔王の魔法陣はコイツらの着けてるハーラルの紋章と同じで魔王によって形が違う。あの魔法陣はあたしの記憶の限りでは見たことないな。」
「なんだ知らねぇのか。」
「寧ろその方がマシだ。あたしも魔界を離れて長い。そのあたしがすぐ分かるほど有名な魔王なら、あたしたちなんて秒で滅ぼされるさ。」
「じゃあ、そんなに強くねぇってことか?」
「どうかね。無名だとしても魔王の肩書を持つ以上、油断は出来んだろうな。」
「魔王の目的は?」
今度はヘイリッドが尋ねる。立場上、事前に聞いていたが、皆に伝える為に敢えて訊いた。
「スカウトだろうな。奴らがこっちに来る時は、大抵そうと決まってる。」
「スカウト?」
一同は困惑した。
「当たりをつけた土地に魔法陣で配下の魔物を送り込み、周辺の者を制圧する。その中で力を持つ者たちを自分の配下として連れ帰るってことだ。」
「それ以外の奴はどうなる?」ブロウが訊いた。
「さぁな。それは魔王次第だろ?まぁ、大概は殺すだろうがな。」
再びざわつく中、モドンが口を挟んだ。
「それに関しては、過去にいくつか事例がある。と言っても人里ではないがな。火山地帯や氷雪地帯などに突如魔法陣が現れ、魔物が一掃される。或いは生態系がガラリと変わったりな。恐らく今回の目的はギルニア砂漠の魔物じゃろう。砂漠の周りに住む我々は、それに巻き込まれたと言うことじゃ。」
「それで、我々はどうするので?」
バアルが冷静にヘイリッドに尋ねた。
「無論、坑がう。魔王も当然ハーラルの事は承知だろう。我々が抵抗する事も含めてな。ともなれば、この王都を狙ってくる可能性は高い。各町へは既に防衛隊を送っている。それぞれの町の狩人は、隊と共に町の防衛に当たってもらう。しかし、此処へ呼んだ諸君らは、我々と共に王都の防衛に当たってもらいたい。」
「兎に角、全員蹴散らしゃあ良いってことだろ?」
ライラが言った。
「相手は魔王軍だ。そんな簡単なものではないぞ。」
ライラはヘイリッドの言葉を鼻で笑う。
「簡単、難しいの問題じゃねぇよ。勝つしか選択肢はねぇんだろ?」
ライラの言葉にヘイリッドは笑う。
「相変わらず、威勢の良い女だな。」
「それが取り柄でね。」
「それで決戦はいつ頃なんです?」
ディケンズがヘイリッドへ尋ねた。
代わりにミザネアが答える。
「あの魔力の高まり具合を考えれば・・・後3、4日ってとこかしら?」
言って確認するようにミゼットを見る。
「まぁ、妥当な線だな。」
「では、それまでは各自準備を進めておいてくれ。」
ヘイリッドの言葉で会がお開きになりかけた時、ライラがふと呟いた。
「しかし、この一大事って時に、あのジジィは何をしてるのかね。」
その言葉にミゲイルが憤慨する。
「貴様!国王陛下をジジィなどとっ!」
ライラが冷静に答える。
「違ぇよ。ダンクロアのじい様じゃねぇ。もう一人いるだろ?いつも偉そうにふんぞり返ってるジジィが。」
「お前、まさかっ!」
ディケンズが言った瞬間、部屋の中央でつむじ風が起き、皆が風に煽られる。
風が消えたそこには、土地神ルーゼスが立っていた。
「ふんぞり返ってとは随分な言い様だな。」
「ルーゼス様!」
ライラとミゼット以外の全員が頭を下げる。
「間違っちゃいねぇだろ。」
ルーゼスは鼻で笑った。
「それで。何の用だ?」
「何の用?アンタの大事なギルニアが大変な事になってんだ。土地神として何とかしようと思わねぇのか?」
ライラが呆れ気味に言うも、ルーゼスは然もないことのように答える。
「それはお前たちの話であろう。私はこの砂漠の土地神。国が潰れようが、生態系が変わろうが、この地が砂漠の体を成し続ける限り、それを見届けるまでだ。」
「つれねぇ神様だな。普段のアタシたちの信仰が、多少はアンタの力になってんだろ?」
「お前に信仰された覚えはないがな。」
ルーゼスの揚げ足取りに、ライラは顔を歪める。
「・・・普段、アタシ以外の奴の信仰が力になってんだろ?」
ルーゼスは再び鼻で笑うと言った。
「しかし、お前たちに情が無いと言えば嘘になる。今回は特別に力を貸してやろう。」
「魔王をぶっ倒してしくれるのか?」
「いや・・・魔王が侵攻してくる間は、この地に住む者を共同体にしてやる。」
「共同体?つまりどういうことだ?」
「全ての魔物たちが、互いに敵視しないということだ。」
皆がざわつく。
「つまり、魔物たちと共闘するってことか?」
「そうだ。魔王軍のみを敵と認識する。」
「不浄王もですか?」
ディケンズが尋ねた。
「無論だ。」
「不浄王が味方・・・」
「マジかよ。」
皆がそれぞれ一様に口走る。
「それなら、勝機は見えるな。」
ミゼットが呟いた。
「まぁ精々、坑がうがいい。」
ルーゼスはつむじ風と共に消え、皆は解散した。
「国の一大事に呑んでて良いのかねぇ。」
ライラは言いながらも酒を煽る。
バーのテーブルにはいつもの四人が座っている。
バアルはカウンターでマスターのザインと喋り、ミゼットの姿は無かった。
「まぁ、そんな事言ってもな。必要なもん揃えて、武器の手入れする位なら、一日あれば事足りるしな。」
ディケンズは酒を呑みながら言う。
「今から鍛練したところで、足しにもならねぇ。」
ブロウも同調した。
「エドゥリアの店も、今は閉まってる。」
ルルが言った。
「そうなのか?」
ライラの問いかけに対し、ブロウが代わりに答える。
「港の手伝いさ。船を急造してる。」
「何で船なんて・・・」
「お偉方を一時避難させるんだろ。大工どもは防衛設備にも回さなきゃならねぇから人手不足なんだ。だから錬金術の技術を使いてぇみたいだな。」
「ほ~ん。金持ち連中は平和でいいこったな。」
ライラは興味無さげに酒を飲み干した。




