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砂上の狩人  作者: eight
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第47話 影の爪

ディケンズが頭足の魔物の頭部に向け、光弾を放った瞬間、魔物は触手でガメルドーラを持ち上げ、ライラたちの方へと投げ飛ばす。


ガメルドーラに光弾が命中し、爆発したガメルドーラはその場でのたうち回った。

「くそっ!」

再度撃とうにもガメルドーラが邪魔になった為、ディケンズは一度距離を取る。

「馬鹿力だな。」

言いながら回り込むライラに向け、魔物が触手を飛ばす。

ライラは目の前に砂の壁の作り出して遮蔽にする。だが、触手はいとも簡単にそれを貫く。

しかし、貫いた先にライラの姿は無かった。


地面から飛び出したライラが触手を切る。

血が吹き出すも、別の触手がライラを足を捕らえ、逆さに吊り上げられた。

「こんにゃろ!」

ライラは吊られながら剣で触手を狙うが、振り回されて剣を放してしまった。

ディケンズが触手に向け、光弾を放つも外れる。

魔物は円形の口を大きく開く。そこには鋭く細かい牙がびっしりと生えていた。

そのまま口までライラを運んでいく。

「くそっ!」

ライラは逃れようと空いている足で触手を蹴るも、吸盤の付いた触手はビクともしなかった。


次の瞬間、魔物の近くまで這い寄っていた黒い影から伸びた腕が一撃で触手を切り裂いた。

青い血が飛び散り、触手と共に落ちたライラは、驚きながらも触手を蹴り外して、素早く下がる。


何が起きたのか理解出来なかった魔物は別の触手をライラに向けて伸ばす。

先程と違い、影から黒い塊が飛び出して触手を再び切り裂いた。

魔物は思わず仰け反り怯む。


黒い塊は両手を広げ、雄叫びは上げた。

毛皮を纏う二足歩行のワーウルフの様な形だが、その全身は影の如く漆黒でハッキリとは視認出来ない。ただ黄色と青色のオッドアイだけが不気味に光っていた。


それは見たディケンズが驚き叫ぶ。

「ライラ!」

ライラもまた目を見開いていた。

「ムロイス・・・」

「退くぞ!」

ディケンズの声に弾かれるようにライラは後退する。


モウズの元まで走るライラをムロイスが見る。その隙に魔物が触手を伸ばした。

ムロイスの左手が盾のような形に変化し、触手の一撃を受け止める。それと同時に右手の爪で触手を一刀両断した。

三本目の触手を失った魔物は大きくよろめき後退した。


ムロイスは一飛びで魔物の殻の上に飛び乗る。振り上げた右手が爪からドリルの様な形状に変化すると、そのまま殻目掛けて突き刺した。

ソールオングルでも表面しか削れなかった殻の貫き、中から青い血が吹き上がる。

魔物が暴れながら残りの触手全てをムロイスに向けて伸ばし、殴る飛ばす。

吹き飛び転がったムロイスだったが、特にダメージは無く、そのまま立ち上がった。


「行くぞ!」

モウズに乗ったライラにディケンズが言う。

「くそっ!収穫無しかよ。」

ライラが魔物たちを見ながら名残惜しそうに言った。

「いや・・・任せろ。」

ディケンズは後ろを向き、ソールオングルを構える。

「ん?」

ディケンズが普段と違う、横に付いたボタンを押し込むと、ソールオングルの砲身の下についている筒状の発射口からアンカーの付いた鎖が射出された。


切断された触手に鎖が刺さるとディケンズがモウズを走らせる。

ムロイスは気付いたが、構わず魔物へ止めを刺した。



夜の砂漠を、触手を引きずりながらモウズが進む。

「そいつがこないだ言ってた奴か?」

ライラが鎖を見ながら言った。

「ああ。エドゥリアの話じゃあ俺の身体を動かすにはサイズがデカくなるらしい。腕に付けるタイプだと、動きに制限が出ちまうんだとよ。」

「それでソールオングル(そいつ)に付けた訳か。」

「咄嗟に動くには慣れがいるがな。」


「んで、どうする?」

「メイリスに持ち帰っても仕方ねぇ、ニグに向かおう。」

「モドンのジイさんに売り付けるか。」

「ああ。」


そうして二人は夜の狩りを終え、ニグへと向かった。




早朝。王宮へと向かう商業区の大通り。

開店の準備をする店主たちがざわついていた。

その視線の先にはライラとディケンズがいる。

勿論、注目されているのは二人では無く、二人がかりで担いでいる大きな触手である。

申し訳程度に布で隠しているが、明らかに何かの魔物の一部であることは明白であった。

何なんだと呟いている人々を尻目に王宮の入口に辿り着いた。


最近、よく訪れるようになった為、顔見知りになっている門番は早朝の来客の姿にギョっとした。

「モドンのジイさんに用がある。」

「な、何なんだ。それは・・・」

危険な物では無いのは分かっていたが、一応確認した。

「それを知りたいから来たんだよ。」

「モドン様ならもう起きてると思うが・・・暫し待て。」

門番の一人が魔物研究所に向かう。

二人は触手を下ろし、一息付いた。

「気持ちワル。まだヌメってやがる。」

ライラはパンツで雑に手を拭いた。

「まぁ、鮮度は良いからな。」

ディケンズも布で肩と手を拭く。

「焼いたら喰えるか?」

ライラがデザイルの先で触手をつつくと触手がビクッと動き、門番もビクっと驚く。

「どうだろうな。デカいと大味になるって聞くけどな。」

「んじゃ、止めとくか。」


門番に連れられ、モドンと数名の研究者がやって来る。

「おお!」

研究者たちは興味津々に触手に群がった。

「アレの触手か。」

「これは珍しい。」

あれこれ言っている中、モドンが二人に話しかける。

「夜戦の戦果か?」

「ああ。」

「戦果と言うよりはおこぼれだけどな。」

「まぁ、詳しい話は中で聞こう。」

そうして、皆で触手を研究所へ運んでいった。




「ベルニク?」

「そうじゃ、正確にはベルニド・ヌラーク。砂漠では珍しい頭足類の魔物じゃな。」

「何だ。新種じゃねぇのか。」

ライラはつまらなそうに言った。

「じゃが、昼は地中に住まう為、素材は貴重じゃよ。」

「それなりの額は貰えるか?」

「それは勿論。じゃが触手以外は無かったの?研究材料としては目玉か殻を作る分泌物が貴重なんじゃが。」

「ああ。それはな・・・」

二人は事の顛末を話した。



「なるほど。まだムロイスがおったか・・・」

「当面は警戒しといた方がいいかもな。」

「地図はあるか?」

用意された地図を見て、ディケンズが印を付ける。

「たいだいこの辺りだ。ムロイスに喰われてるが、何かしらの残骸は残ってるだろう。」

「なるほど。後で兵を連れて行ってみるとするか。」

「しかし、まだムロイスが彷徨(うろつ)いてるなら、夜戦は当面延期だな。」

ライラがつまらなそうに言う。

「仕方ないだろ。流石に勝てるとは思えんしな。」

そこへモドンが提案した。

「メイリスの北に向かってみたらどうじゃ?」

「北?」

「採掘場の辺りか?」

「そうじゃ。普段、人の出入りが多い場所なら夜でも危険は少ないじゃろう。それにムロイスもそこまで移動するとは思えん。」

「・・・なるほど。確かにな。」ライラが納得する。

「行ってみるか?」

「もう少し夜戦に慣れたいからな。」

「じゃあメイリスで軽く準備したら行くか。」

「だな。」

「あの辺りはヤバい奴は居ないのか?」

ディケンズがモドンに尋ねた。

「夜に関しては確実な事は言えぬが、少なくとも被害の報告を受けた事は無いからのぅ。恐らく大丈夫であろう。」


二人は報酬を受け取り、魔物研究所を後にした。




「モドン様。」

一人の研究者がモドンに話し掛けた。

「何じゃ?」

「先程の話ですが、そろそろ開花の時期なので、少し危険なのでは?」

「あぁ。そんな時期か・・・」モドンは思い出したように壁に掛けられた(こよみ)を見た。

「いや、花が近くに無ければ大丈夫じゃ。採掘場であれば問題無いであろう。」


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