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砂上の狩人  作者: eight
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第44話 コズモンドの刺客たち

「勝負しろって・・・ここでか?」


商業区のど真ん中。多くの人が行き交っていた。

「え、あー・・・ば、場所を移すわよ!」

「なぁ、その前に飯食っていいか?お前も食いそびれたんだろ?」

「わ、私の事をバカにしてるの!?」

威勢よく凄むが、恐ろしさは感じられなかった。

「いや、バカにはしてねぇけど、腹が減ってることは事実だからな。互いに万全で戦う方がいいだろ?」

「た、確かに・・・」

ミリオンは少し考えて言った。


「条件があるわ。」

「条件?」

「わ、私の分も奢りなさい!」

「なんでだよ。」

「も、もうお金が無いの!」

「・・・」

ライラはため息をついた。

「仕方ねぇな。」



ライラの金で互いの焼魚を買い直し、食べながら二人で歩いていく。

同じポニーテール。身長や年齢差を考えると、今から戦うと言うよりは祭に遊びにきた姉妹のように見えた。


「んで?どこでやるんだ?」

ライラが食べながら尋ねた。

ミリオンはちゃんと咀嚼していた物を飲み込んでから答える。

「人気のないところが良いわ。」

「人気のないって、今日は祭だぜ?どこも人だらけだぞ。」

ミリオンは少し考えて言った。

「浜辺にしましょ。あそこはもう片付いてる。」

ライラはその言葉に少し警戒した。

「まぁ、構わねぇよ。しかしお前、全然殺し屋っぽくねぇな。」

ミリオンが驚いて、少しライラから離れた。

「な、何故それを!」

「何故って、コズモンドなんちゃらの紋章が付いてんじゃねぇか。」

「あっ!」

ミリオンは今更、服に付いていた紋章を隠した。

ライラは呆れながら、浜辺へと向かった。





サーベルスの連撃をミゼットは難なく躱している。

剣で切り下ろすと見せ掛けて、反転しながら尻尾で不意打ちをするも、跳んで躱したミゼットがそのまま回し蹴りでサーベルスを吹き飛ばす。


立ち上がったサーベルスは砂の混じった唾を吐き捨てた。

「流石に強いな。」

「そんな言葉を貰うほど、まだ力は出してないんだよ。」

少なからず疲れの見えるサーベルスとは裏腹に、ミゼットは涼しい顔をしていた。そして、まだ武器を使う事もなく素手で戦っている。

「来ないならこちらから行くぞ。」

言うと同時に飛び込み、右手で思い切り殴り付ける。

横にズレて躱したサーベルスが反撃で切り払った。

ミゼットは曲剣を持つ手の肘に、自身の肘をぶつけて攻撃を封じるとニヤリと笑い、バク転をしながら顔を蹴りあげる。

着地と同時に再度飛び込み、フラついたサーベルスの首を掴んで投げ飛ばした。


よろめきながらもサーベルスが立ち上がる。

「・・・化け物め。」


「化け物?違うね・・・あたしは悪魔さ。」







浜辺に着いたライラは食べ終えた焼魚の串を放り投げて言った。

「ほんじゃ、やるか。」

「あぁ!」

ミリオンはライラが投げた串を拾い、自分の分と一緒に祭用に簡易に作られたゴミ捨て場に捨てた。

「律儀な奴だな。」

「ルールはちゃんと守りなさいよ!」

「殺し屋の言う台詞かね・・・」


ライラが戦闘態勢に入る。それを見てミリオンも短剣を抜いて構えた。

「事前にアタシの事は調べてるんだろ?」

「あ、当たり前でしょ!」

「それでいて砂浜を選んだって事は、相当腕に自信があるか、ただのバカってことだな。」

ミリオンはライラの言葉の意味を理解出来ず少し困惑した。

「う、腕に自信あるに決まってるでしょ!」

これは後者だなとライラは思ったが、そのまま戦うことにした。

「そんなら、その腕を見せてもらうか。」

「望むところ!」


ミリオンが短剣を構えて飛び込む。速さは間違いなかった。

しかしライラも柔軟な身体で巧みに躱す。

ミリオンは手首のスナップを利かせて緩急をつけ、惑わすような連撃を繰り出す。

正直舐めていたライラは、その動きに驚きながらも籠手で捌きつつ回避し、隙をついて蹴りを入れた。

下がって躱したミリオンが一呼吸おく。

「ちゃんと戦えるんだな。」

「当たり前でしょ!」


「んじゃ、こっちもその気でいくからな。」

言うと同時にライラが駆け出す。

作り出した砂の玉をミリオンの目の前で破裂させた。

「あ!」

砂魔法知らないミリオンはただの目潰しだと思い、短剣を振り回しながら「卑怯者!」と叫んでいた。

視界が戻った時、ライラの姿はなかった。

「え?」


ミリオンは辺りを見渡すが、砂浜なだけあって隠れるような遮蔽物はない。

「に、逃げたなぁ!」

ミリオンが憤慨したその時、足元の砂から二本の手が伸び、足を掴んだ。

「ひゃあぁ!」

驚いたと同時に地面の砂が緩くなり、ミリオンは一気に砂に引きずり込まれた。

首から下が砂に埋まったところで、隣からライラが飛び出してくる。


「ちょ、あんた魔物なの?」

砂を払ったライラがゆっくりと近づきしゃがむ。

「お前、アタシの事、調べてねぇんだろ?」

「・・・」

「アタシの事を調べてて、砂魔法を知らねぇとはならねぇぞ。」

「・・・砂魔法?」

「まぁ、いいや。」

ライラは立ち上がり振り返る。

「勝負は着いたな。心配すんな。一応町の中だから、その状態でもやべぇ魔物は来ねぇよ。朝になりゃあ誰かが助けてくれるさ。」

ライラは数歩進んで振り返る。

「まぁ、夜になったらその辺まで海に沈むかも知れねぇけどな。」

「え。」

「んじゃあな。」


「ちょ、待ちなさいよ!」

去っていくライラに叫ぶ。ライラは足を止め、再び振り返る。

「なんだよ?」

ミリオンは口ごもりながらモゴモゴと喋った。

「・・けて・・さい。」

「あぁ?」

ライラは聞こえていたが、敢えて聞き直した。

「助けて下さいっ!」

ミリオンは頬を赤くして恥ずかしそうに叫ぶ。


「仕方ねぇな。」

ライラは呆れながら言うと砂の中に両手を突っ込み、ミリオンの身体を一気に引き上げた。

ミリオンは引き上げられると同時に両足でライラを蹴って後ろに跳んだ。

「うっ!」


「この卑怯者!」

「殺し屋相手に正々堂々戦う奴もいねぇだろ。」

「こ、今回は私の調査不足だったわ。でも次はこうはいかないわよ!」

「今日はもう戦わない事になったのか。」

「う、煩いわねっ!いちいち!」


ミリオンはビシッとライラを指差す。

「今度会った時が貴方の最後よ!精々首を長くして待ってることね!」

間違った言葉の使い方をしたミリオンは走って逃げていった。

「・・・何でアタシが欲してる側になってんだ?」

走り去るミリオンを見ながら呟き、ライラはため息をついた。


「・・・んじゃ、呑みに行くか。」







サーベルスがミゼットに殴り飛ばされる。

受け身を取り、即座に立ち上がり追撃に備えるも、ミゼットは動いていなかった。

「いやぁ、大したもんだ。流石はコズモンドの一員だな。」

そう言うミゼットはほぼ無傷に近かった。

「舐めやがって。」

対するサーベルスはボロボロになっており、息も上がっている。


「さてと。」

ミゼットが飛び込み殴り掛かる。

サーベルスは後ろに下がりながら切り払うも、ミゼットは跳んで躱し、蹴りを喰らわす。

尻尾で弾くが、即座に懐に入り込んだミゼットが腹目掛けて拳を突き立てた。

「がはぁ!」

衝撃に呻いたサーベルスだったが、接近したミゼットを両手で掴み、口から炎球を放つ。

予想外の攻撃に被弾したミゼットは吹き飛ぶも、受け身をとって立ち上がると袖を燃やす炎を払った。


「ここに来るまで隠し玉を出さなかったとは、中々大した奴だな。」

「くそっ!」

切り札を食らっても尚、大したダメージを負っていないミゼットを見てサーベルスは悪態をついた。



「手札を切り終えたところで勝負は見えたな。さぁ、どう調理して欲しい?」

「俺はまだ、負けるわけにはいかん。落ちぶれていた俺を拾って下さったグライド様の為にも、刺し違えてでも貴様を殺す!」


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