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砂上の狩人  作者: eight
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第42話 シーサイド・ブロウ②

遅れてやって来たブロウを見て、DDが言った。

「ブロウ!来てくれたのかい。」

「ああ、だがこいつは不味いな。」

「私らの船を潰させるわけにはいかないよ。」

船員たちは水を汲める物を手当たり次第探していた。

ブロウは水魔法で消火しつつ、飛んでくるバリスタを魔法で相殺する。漁師たちも必死で水を汲み、消火にあたっていたが、次々と飛んでくるバリスタのせいで消火よりも火の回りの方が早かった。


「くそっ!キリがねぇ!こっちには迎撃用の武器はねぇのか?」ブロウが尋ねた。

「海賊避けのバリスタとでかい獲物にブッ刺す銛の射出器はあるが、どっちも火にやられてる。」漁師の一人が答えた。

「俺の魔力じゃ、いくら何でも抑えきれねぇぞ!」

ブロウはサングラスを投げ捨て、両手を広げて魔力を込めると水の壁を作り出す。

バリスタの火を無効化は出来たものの、そう長くは続かないだろう。

その時、DDが何かを思い出し呟いた。

「そうだ。あれがあれば・・・」

DDが一人で船内へ向かう。

「おい!バカ!中に入ったら煙でやられるぞ!」

ブロウの制止も聞かず、DDは船内に消えていった。


「DD!」

「船長!」

皆が叫ぶ中、ブロウは水魔法を自身に掛け、ずぶ濡れになった。

「俺が連れ戻す。お前たちは何とか火の回りを食い止めてくれ。」

「ブロウ。船長を頼む。」

「任しとけ。」

ブロウはDDを追い、船内へ消えていった。





ライラたちは浜辺に着いた。

そこには数体のサハギンと大きな魔物がいた。

濁った白色の分厚い皮膚を持つトドのような体型、口の両端には大きな牙、鼻先には太い角を持っている。

「海版ルクディロスってとこか。」

ライラはどこか楽しそうに剣を抜く。

「サハギンに手懐けられてるんだ。奴ほどじゃないだろ。」

ソールオングルは宿に置いてきている為、ディケンズも斧を抜く。

「ほんじゃ、お手並み拝見と行くか。」

「こいつは俺たちでやる。お前らはサハギンを相手してくれ。」

ディケンズが他の狩人たちに声を掛ける。


駆け出したライラが首もと目掛けて切りかかる。

鈍重なその見た目に反して、素早く横に転がって躱すと、尾ビレでライラを弾き飛ばす。

魔物が角を向けて、水流を放つ。

倒れていたライラは砂の壁を作り出して、それを防いだ。

回り込んだディケンズが斧を叩き込む。

甲殻ではなく皮であるにも拘わらず、大した傷は入らなかった。

ディケンズ自身、手応えに違和感を覚えた。

すぐにきた反撃を後ろに跳んで避けながら言った。


「ライラ!こいつ何かおかしいぞ!」

「魔物なんてどいつも大概おかしいだろ!」

言いながらライラも切りつけた。小さな傷は入るが、やはり手応えは無かった。

「滑りやがった。」

魔物の体表にある少し粘度のある水の膜は、攻撃の衝撃を和らげ、攻撃の打点を滑らせていた。


「どうする?」

「どうするって、ここはどこでアタシは誰だと思ってんだ。」

ライラは砂に手を突っ込み、振り上げる。

砂の爪が這っていき、魔物を捉えた。

衝撃とともに魔物の身体に砂が纏わりつく。

「砂がついてりゃ滑らないってことか。」

「そーゆーこった!」

二人は駆け出し、砂がついた部位を狙う。


体勢を立て直した魔物はおもむろに鼻先の角を地面に突き刺す。すると周囲の地面が揺れだした。


「何だ?」

次の瞬間、二人の足元から一気に水が吹き上がる。

「のわぁ!」

二人の宙に飛ばされ、地面へ叩きつけられた。

「ぐっ!」

吹き上がった水が魔物の身体についた砂を洗い流していく。


「面倒くせぇ野郎だな。」

ライラが背中を押さえながら立ち上がる。

「どのみち浜辺で戦う以上、時間の問題だろう。」

ディケンズも立ち上がり、構え直した。




「DD!」

ブロウが呼び掛けながら船内を探す。どこからかバリスタが入り込んだのか、船内にも火の手が上がり、通路の上部には黒煙が充満している。

ある部屋に入ると、DDが酷く咳き込みながら膝をついていた。


「DD!無事か?」

「ブロウ。済まない。私はもうダメみたいだよ。」

「おいおい、らしくねぇこと言うんじゃねぇよ。」


「もうこの船も終わりさ・・・この船は私と死んだ旦那の宝。いや、子供みたいなもんさ。この船がダメになっちまったら・・・ブロウ、お願いだ。皆を船から避難させてくれ。私はこの子と一緒に最後を迎えるよ。」


顔を伏せたDDを見て、ブロウは大きくため息をついた。

そして、思い切りDDの胸ぐらを掴むと顔を引き寄せた。


「腑抜けた事言ってんじゃねぇ!!」


「ブロウ・・・」

「少なくとも俺の知ってるアンタはそんな事を言うたまじゃねぇ!海に出て、海賊や魔物どもとやり合いながら漁をしてきたんだろう。困難なんて幾らでも乗り越えて来たんじゃねぇのか?船が子供?この船はアンタたちだけのもんじゃねぇ。船員たちにとっても家族みたいなもんだろ。ならアイツらだってアンタの子供みたいなもんじゃねぇのか!?」


DDは神妙な面持ちで目を閉じた。

「それにまだ釣りの件が終わってねぇ。このブロウ様が勝ち逃げなんて許すと思うか?」


その言葉にDDが静かに笑う。

「そうだね・・・私としたことが、柄にもなく弱気になっちまったよ。お前さんの言う通りだ。」

「船員たちはアンタを心配してるし、それ以上にアンタを信頼してるぞ。」


「ああ。あの乳臭いガキどもは私がいなきゃ、なんも出来ないからねぇ。」

それはもう、いつものDDだった。

「立てるか?」

ブロウの手を借りてDDが立ち上がる。

「まさか、お前さんに説教される日が来るとはね。歳は取りたくないもんだね。」

DDは自虐的に笑った。


「ところで何を探しに来たんだ?」

「ああ。こいつさ。」

DDの指差す先にボロボロになった何かの道具があった。

「錬金術の嬢ちゃんがね。もし火事が起きたら使って下さいってくれたんだ。」

「エドゥリアか。」

「ああ。だが海での火事なんて、海水を汲んですぐ消しちまうからさ。使わないと思って奥にしまってたらこのざまさ。」


「仕方ねぇ。兎に角、今はここから出る事だ。」

「ああ。」

その時、DDの胸元に何かが光る。ブロウが胸ぐらを掴んだ事で肌けたそこには青い宝石が見えた。

「DD、そいつは?」

ブロウの問い掛けにDDがネックレスを取り出す。

「旦那の形見さ。深海でしか取れない希少な宝石なんだってさ。」

「まさか、エドラマリンか?」

「ああ。確かそんな名前だったよ。」

それは深海の魔力が高い場所でのみ生成される宝石で、水魔法の触媒としては最上位のひとつであった。

「DD、そいつを貸してくれ。そいつがあれば何とかなるかもしれん。」

「本当かい?」



甲板に上がってきた二人を見て、船員たちが声を上げる。

「船長!無事か?」

「良かった!」

「心配掛けて済まなかったね。」

「全員船から降りろ!俺が何とかする。」

ブロウの言葉に皆が困惑したが、DDの「ブロウを信じよう」の言葉で全員が船を降りた。


ブロウはエドラマリンを握り締めると全力で魔力を込める。

ブロウを中心に現れた水の球が、見る見る大きくなっていき、そして漁船を包み込むほどの巨大な球体となった。

漁船についた全ての火が消える。

船員たちが歓喜の声を上げた。

水が弾けて流れ落ちる中、ブロウは膝をついた。

再び船に上がってきた船員たちが声を掛ける。

「ブロウ!大丈夫か?」

「さ、流石に堪えたぜ。」

かなりの魔力を使ったのか、ブロウは肩で息をしていた。


DDが皆に言う。

「お前たち!ブロウのお陰で火は消えた。船も濡れてるからそう簡単には火はつかないはずさ!騎士団のポンコツどもが海賊を追い払うまで、私らの船を死守するよ!」

船員たちが気合いを入れる。

その時、海賊船の方から何かが飛ぶのが見えた。バリスタではない。

「何だ?」

それはオークだった。バリスタの発射台からオークが吹き飛ばされて海に落ちていく。

それを見たブロウがフッと笑った。

「・・・流石は俺の相棒だぜ。」

単身ルルが海賊船に乗り込み、バリスタの狙撃手たちを殴り飛ばしていた。

それを見てDDが再度声を上げる。

「バリスタの心配はなくなりそうだ。全員で戻ってオークどもを追い払うよ!」

そうして船員たちは、騎士団の元へ向かった。


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