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砂上の狩人  作者: eight
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第4話 ウィーグテイル

二人が焦げ臭い風と足跡を辿っていくと、オアシスが前方に見えだしたところで、黒焦げになった大きな鳥を見つけた。


「残念。あとちょっとだったな。」ディケンズが残念そうでもない様子で呟く。

「こいつは喰う時に焼く手間が省けたか?」ライラは言いながらモウズから降りて近づく。

「売れる部位もほとんど焼けちまったがな。」

「表面は焼けててもクチバシなら利用価値はあるだろ?」

ライラはカットラスを引き抜き、剥ぎ取ろうとした瞬間、動きを止めた。

「どうした?」

ディケンズの問いかけを手で制し、何かに集中していると、微かに地面が揺れた。

「近い・・・離れろっ!」

ライラが飛んだその瞬間、ネベルダットの首に目掛けて地面から大きな鋏が現れる。

首を骨ごと切断すると砂煙とともに現れたのは大きなサソリの魔物だった。


砂にまみれ茶色く変色した硬い甲殻、8本の脚、鋏の形をした2本の触肢、そして尻尾の先には鋭い毒針が付いている。尾の先まで入れれば3mを超える巨大なサソリの魔物。

魔物は切断した頭を鋏で掴んで食べ始めたが、二人に気づくと頭を放り投げ、左より肥大している右の鋏を地面に2回叩きつけ威嚇した。

「ウィーグテイルか・・・厄介だな。」

ディケンズはソールオングルを担ぐとモウズに距離をとらせた。

「今日は一体何なんだよ、毒祭りじゃねぇーか、ったく。」

ディケンズがソールオングルを構えるのを見るとウィーグテイルに向かい正面から走り出した。

「その肉はアタシらの晩飯なんだよっ!」

近づいてきたライラに向け、鋏を突き出したが、それを読んでいたライラは跳んで避ける。そこへ続け様に鋭い毒針が飛ぶが元々攻撃する気の無かったライラはそれも横に跳んで躱した。

ディケンズはライラに気を取られているウィーグテイルの頭部を狙い引き金を引く。

光弾は頭部に向かい飛んでいったが、直前で気づいたウィーグテイルは大きな鋏でガードした。

爆発が起き、砂煙が上がるが、鋏はほぼ無傷の状態だった。


「くそっ!なんて硬さだ。ライラ!甲殻の隙間を狙え。」

「んなぁこと、分かってるよ!」

ライラは側面に回り込み、背部の甲殻の隙間を狙い切りつけるが、甲殻に当たって弾かれる。

すぐさま飛んできた脚に蹴られ、吹っ飛ばされた。

「くそっ!デカい図体とは言え、動いてると難儀だな。」

ライラの方へ向きを変えるウィーグテイルに今度はディケンズが突っ込む。

胴体は狙わず、1本の足を掴むと節に目掛けて斧を叩き込む。紫色の体液が吹き出し軽く怯んだが、ライラと同じように別の脚の蹴りで吹っ飛ばされる。

「ライラ!脚を狙え!脚なら取り付けば多少は狙いやすい。1本か2本落とせば、動きも鈍るはずだ。」

「お前さんと違って何度も蹴り飛ばされていいほど、頑丈な身体はしてねぇんだよ!」

そう言いながらも脚を狙って走り出す。


二人は互いに囮になりながら、脚の節を狙い攻撃を繰り返す。

そしてディケンズの一撃で1本の脚が切断される。流石に大きく怯み動きを止める。すかさず二人は毒針を切り離すべく尾の先を狙い攻撃をする。

一撃加えた瞬間にウィーグテイルは素早く旋回し、大きな砂煙が上がる。

砂煙が消えた時、そこにウィーグテイルの姿はなかった。


二人は目配せし、じっと動かずに地面に集中する。ライラは腰から青白い刀身のナイフを取り出すと少し離れた所に放り投げ、左手を翳した。

するとナイフはカタカタと震え、地面を這うように動きだす。


次の瞬間、地面から突きだされた毒針がナイフを宙に飛ばした。

砂煙を上げながら、再び、ウィーグテイルが姿を現す。

「潜られると厄介だな。」


ライラが側面に回り込んだのを見て、ディケンズは正面から突っ込んだ。

ウィーグテイルはライラを無視して、鋏を振り下ろした。

ディケンズが後方に下がって避けると、脚に取り付いていたライラを回転して振り払う。


ライラがディケンズの横に飛ばされて転がる。

「いたた。あの野郎、手加減ってもんを知らねぇな。」

「ライラ。砂の玉で頭を狙えるか?」

「出来るけど、ダメージにはならねぇし、あいつは潜るから目潰しにもならねぇぞ。」

「構わん、ちょっと気になる事がある。数発撃ち込んでくれ。」

「了解。」


今度はディケンズが回り込んで、引き付ける。

ウィーグテイルがディケンズに気を取られてる隙に、ライラが3発の砂の玉を作り出して放った。


ウィーグテイルはディケンズに向けて攻撃しようとしていたが、気配を感じ、咄嗟に鋏で砂の玉を防いだ。

その隙にディケンズが斧を甲殻の隙間に叩き込む。

呻き声と共に体液が噴き出し、鋏を振り回し、暴れると再び砂の中に消えていく。


「頭を庇ったな。」

「ああ、さっきから頭だけは確実に守ってやがる。あそこだけは柔らかいかもしれん。」

「とは言え、潜っちまったな。デザイルもさっきので飛んでっちまったし、どうするよ?」

デザイルとはライラの青白いナイフのことだ。

「今度は俺がやる。任してくれ。」

「大丈夫か?」

「ああ。」


二人は離れ、ディケンズは足元を注意しながら、足を動かし音を立てる。

震動と共に毒針が見えた瞬間、身体をずらしたが、毒針が追尾し、左腕を掠める。

「ぐっ!」と声を上げたが、そのまま現れたウィーグテイルの頭部に拳を叩き込んだ。


「ギェエー!」と呻き声を上げ、頭部の一部がひしゃげたが、鋏を振り回し、ディケンズを吹っ飛ばすと大きく後退し、距離をとる。


「大丈夫か!」

ディケンズに駆け寄ったライラが声を掛けた。

「ああ、掠っただけだ。それよりもやっぱり頭部は弱いらしい。」

ディケンズが立ち上がる。

「ソールオングルで頭部を狙いたい。正面に引き付けられるか?」

「任せとけ。」


ライラは魔物に向かい走り出し、ディケンズはモウズを呼んで、ソールオングルを構えた。

ライラが小突いて挑発しながら、誘導していく。

そうしてディケンズ、ライラ、ウィーグテイルが一直線に並ぶと、ライラはディケンズに向かい、ウィーグテイルから逃げるように走り出した。


ソールオングルを構えたディケンズから見て、ライラの向こうにウィーグテイルが見える。

ディケンズは引き金に手を掛け、ライラに合図を送る。


合図を視認すると、ライラは出来るだけディケンズに近づきながら、足をわざと踏み外し、バランスを崩すふりをした。

それを見たウィーグテイルが鋏を振り上げた瞬間、ディケンズが引き金を引き、光弾が発射される。


光弾がライラの目前に迫った時、ライラの身体が、まるで水に落ちるように、砂の中に消える。

振り下ろした鋏を掠め、流れ弾がウィーグテイルの頭部に当たる。

直撃では無かったものの、大きく仰け反り、その場にダウンする。


「ちぃ!鋏に当たったか!」

ディケンズは位置を修正し、再び狙うが弾が切れていた。

「くそっ!」

ソールオングルを投げ捨てて、斧を取り出し、走り出すが、ウィーグテイルはもう立ち上がろうとしていた。


次の瞬間、ウィーグテイルの頭部の真下からカットラスが飛び出す。

砂から出てきたライラが、力任せに口から脳天にかけて、カットラスを突き刺した。

「こいつでも喰らっとけ!」

ウィーグテイルが本能的に暴れて、鋏でライラを吹っ飛ばした。


「大丈夫か!」

「ああ、最後っ屁を喰らっちまったぜ。」

ディケンズが手を貸し立たせた。

「とりあえず、何とかなったな。」

「ああ、流石に終わりだろう。」


次第に動きが遅くなり、ウィーグテイルは沈黙した。

近づいたライラがカットラスを引き抜き、体液を払う。

「依頼にはなかったが、売れそうなとこだけ取っちまうか。」そう言ってモウズを呼んだ。

「ライラ、でかい袋持ってるか?」

「いや。草取りの予定だったから持ち合わせてねぇな。」

「だよな。俺もだ。じゃあ鋏は諦めるか。」

「甲殻を何枚か持ってきゃあ、何かしらには使えるだろ。後は毒針か?」

「いや、針自体は金にならん。なるのは毒液袋だな。」

「となると採取は厄介か・・・」

「大丈夫だ。俺がやる。」

「危険だぞ。と言うかお前、さっき刺されてなかったか?」

「俺にこの毒は効かん。」

「そうなのか?」ライラは驚きながら訊いた。

「ああ。俺たちデルリザードにこいつの毒素は無効だ。」

「何だよ、早く言えよそれ。だったら初めからディケンズを囮に使っときゃあ良かったぜ。」

「馬鹿言え。毒は無効でも、あんなでけぇ針で刺されたら、ただじゃ済まねぇよ。」

ディケンズは尻尾の根元にある甲殻を取り除いて、中から袋状の内臓を取り出すと、慎重に容器に入れて、袋にしまった。

「とりあえず、草取りの再開か。」

「だいぶ、寄り道しちまったけどな。」

陽が傾き始めていた。

ライラは髪に残った砂を払いながら、溜め息をついた。


「こりゃあ、今日は泊まりだな。」

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