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砂上の狩人  作者: eight
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第3話 横取りのぬし

砂漠に点在するオアシスは、砂漠に住む者達にとって無くてはならない存在で、大小様々な生物が集まってくる。その結果、肥沃(ひよく)な土となり周辺には草花が群生している。


オアシスに辿り着いたライラはモウズから飛び降り、水面に顔を突っ込むとしゃくり上げる様に水を飲み、周囲を草を調べ始めた。

遅れてきたディケンズも手で水を掬い、数口飲むと辺りを探し始める。



「ディケンズ。あったか?」

「1本だけだ。」

「こっちは2本見つけた。」

「オアシスにしては少ないな。」

「どうも喰われてる感じだな。」

「あぁ、でもすぐこれだけ見つかったならもう少し探せば揃うかもしれん。」

「だな。」


毒草を探している二人の背後に、モウズに乗った十数名の一行が近づいてくる。鉄で出来たチェインメイルに身を包み、胸元にはハーラル王国の紋章が装飾されている。

他の者よりも装飾の多い鎧を付けたハーラル騎士団の副団長ミゲイル・ノーバスがモウズの乗ったまま、ライラを見下ろして言った。


「誰かと思えば賞金稼ぎどもか、喰うに困って遂に野草を探しだすとはな。」

ライラはミゲイルを一瞥する。

「鎧を着て、ふんぞり返りながら歩いてるだけで金が入る誰かさん達と違って、こっちは貧困生活だからな。」

皮肉を皮肉で返され、ミゲイルは顔をしかめた。


「い、今も平和に暮らせているのは誰のお陰だと思っているっ!」

「そもそもこんな砂しかねぇ国に攻め込んでもしょうがねぇだろ?昔から戦争の話なんか聞いたことねぇよ。」

「それこそが我々の警備の賜物(たまもの)だと言う事だっ!」

「そーかい。そんならニグに帰って椅子にでも座りながら、その()()ってやつをやってくれ、アタシは晩飯を探すの忙しいんでな。」

「くっ!おい、お前達!さっさと行くぞ。」ミゲイルは兵士たちに声を荒げた。


「おいおい、待てよ。」ディケンズが口を挟む。

「まだ、砂漠を進むんだろ?お前さんが俺たちを嫌うのは勝手だが、兵たちの事を考えてやれよ。」

ミゲイルは顔をしかめながらも考え、「15分後出発する。」と指示を出す。兵士たちはモウズを降り、各自休憩をとり始めた。


兵士たちを横目に探し続けていると、まだ幼さの残る新米と思わしき若い兵士がディケンズに話しかけた。

「何を探しているんですか?」

「グルドカブラって毒草さ。」

「毒草っ!そんなもの何に使うんですか?」

「何にって依頼だよ、依頼。どっかの誰かが気に食わない副団長に毒を盛りたいんだとよ。」

何人かの兵士が吹き出しそうになり、ミゲイルが睨みつける。

「お前さんたちは何処に行くんだ?」

「あ、あの自分達はイルミ・・・」

「おいっ!奴らにそんな事教えるは必要は無いっ!」ミゲイルが遮る。

「すっ、すみませんっ!」

若い兵士はビクッ!っと背筋を伸ばす。

「まぁいいさ。念のため、こいつを持っときな。」そう言うとディケンズは袋から発煙筒を取り出す。

「俺達の使う救援の道具だ、煙と一緒にモウズに聞こえる音が出るらしい。気付ける範囲に居たら助けに行ってやる。」

「あ、ありがとうございます。」

「まぁ、使わないに越したことは無いがな。」

「おい、ディケンズっ!こっちに来てくれ。」ライラが声を掛ける。


「どうした?」

ディケンズが近づくとライラが喰い千切られたグルドカブラを投げる。

「アタシたちの獲物を横取りしてる野郎を見つけたぜ。」

周辺に焼け焦げた跡と数枚の羽根が落ちている。

「ネベルダットか・・・」

「あぁ、しかも大層に足跡まで残してやがる。」

「追うか。」

「だな。野郎が向かう先にはまだ残ってるだろうし、取られた分のツケは払ってもらう。」

「確か依頼に尾羽もあったな。」

「そうなりゃ善は急げだ。」ライラは口笛を吹き、寄ってきたモウズに羽根の臭いを嗅がせる。

「頼むぜ、モウズ。トリ野郎に導いてくれ。」

ブモォと声を出して北を向いたモウズに飛び乗ると、ライラはオアシスを後にした。




しばらく砂漠を走ると前方に2mほどの大きな鳥が見える。

人の頭ほどのクチバシと長い首を持ち、翼はあるが飛ぶ事は出来ない。その代わりに走る事に特化した足の先には鋭い爪が付いている。頭と体は黒と紫の羽毛で覆われているが、尾羽だけは青や碧の混じった美しい羽根となっている。


「居やがったっ!モウズ、もっと寄れ!」

モウズはスピードを上げ、近づいていく。

背後の気配に気づいたネベルダットが走り出そうとした瞬間、モウズから飛びついたライラがそのままドロップキックを繰り出す。

後方から蹴られたネベルダットはバランスを崩し転倒する。着地したライラはすぐに体制を立て直して、カットラスを引き抜くと首を狙い、切りつける。


ネベルダットが振り向き、カットラスがクチバシに当たった。小さな傷がついたが、そのままの勢いで振り上げられカットラスは弾き飛ばされた。

「くそったれ。」ライラは悪態をつきながら、バックステップで距離を取った。

立ち上がったネベルダットは羽根を広げると左右に飛び跳ねながら前蹴りを繰り出す。

横っ飛びで回避したライラが地面に手を翳す。すると地面から砂が集まり砂の玉が出来上がった。


「そのまま踊ってな。」

ライラが手を向けると砂の玉がネベルダットの顔に飛んでいき、目の前で破裂する。

砂が目に入ったネベルダットはその場で飛び跳ね、暴れまわる。その隙に飛ばされたカットラスを手にした。


暴れている相手に下手に接近戦を挑むと、逆に大怪我をする可能性がある。ライラは距離を保ち、じっと待つ。

ネベルダットの動きが収まりかけた瞬間を狙い、再び首に斬りかかった。

今度は的確に首を捉えたが、羽毛に阻まれ致命傷には至らなかった。呻き声を上げ一瞬怯んだが、すぐさま啄ばみを繰り出す。カットラスの腹で受け止めるも態勢を崩された。

するとネベルダットが首を大きく仰け反らせた。

「まずいっ!」

首を振り下ろすと同時に毒液を吐き出した。転がる様に躱したライラのいた場所に紫色の毒液が当たり、ジュウゥと溶ける様な音がした。

「アタシが欲しいのはそうなる前の草の方だよっ!」

ライラが再度首を狙うが、それを読んでいたネベルダットが後ろ脚で蹴り上げる。もろに喰らったライラは3mほど飛ばされ、大きな岩で背中を強打する。

「ぐはっ!」

近づいてきたネベルダットが再び首を仰け反らせた。ライラが身構えた瞬間、横から飛んできた光弾がネベルダットを捉えて爆発し、大きく横転させた。


大砲をモウズに預けたディケンズが近づくと手を差し出す。

「遅ぇよ。」

そう言いながら手を掴むとライラが立ち上がる。

「お前が突っ走りすぎなんだよ。」

ディケンズは腰に掛けた手斧を取り出すと、ネベルダットに駆けていく。

ネベルダットは首への攻撃を警戒し、後ろ向きで蹴りを繰り出す。

ディケンズは蹴りを躱し、(おもむろ)に尾羽を掴むと斧で切り落とした。

「残念。狙いはこいつだ。」

尾羽を切られ、激高したネベルダットは大きく羽根を広げ威嚇する。


首を大きくくねらせると再び液体を吐き出した。バックステップで躱したディケンズの前に跳んだ液は、赤みを帯びており、着弾と共に発火する。

「火炎液か、厄介だな。」

半ば、半狂乱状態のネベルダットが首を大きく振りながら、二人の方へ火炎液を撒き散らしながら近づいて来る。


(やっこ)さん、キレ散らかしてるぞ。」ライラが下がりながら言う。

「ライラ、囮になれるか?モウズのところまで戻ればソールオングルをもう一発撃ち込める。」

ソールオングルは先程の大砲の事だ。

モウズは少し離れた所で待機している。


「・・・いや、アタシに任せてくれ。考えがある。」

ライラはそう言うと、ネベルダットの動きに注視しながら手を地面に翳し、砂の玉を作り出す。

飛んできた火炎液を躱し、素早く踏み込むと次の火炎液を吐き出そうとした瞬間を狙い、砂の玉を投げつけた。

吐き出された火炎液と砂の玉がネベルダットの目の前でぶつかり弾け、飛散した火でネベルダットの頭に火が着いた。

驚き飛び上がったネベルダットは大きく首を振り、火を消そうとするが、火の勢いは増して首まで火が広がった。二人は少し離れた所で様子を見ている。


「ありゃあ、時間の問題だな・・・」

「先に尾羽を取っといて正解だったな。」

火を消そうと地面に頭を擦り付けていたネベルダットだったが、突如一目散に走り出す。

「しまった!オアシスで消す気かっ!」

ライラが急いでモウズまで戻ろうとする。

「急ぐことはない。もう胴体まで火が回ってた、あの様子じゃオアシスまで持たねぇさ。」

ディケンズはそう言うと一部発火しなかった火炎液を小瓶に詰め込んだ。



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