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砂上の狩人  作者: eight
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第28話 忍び寄る影

「探知機・・・ですか?」

エドゥリアは顎に手を当て、首を傾げる。

「ああ、アタシ以外に砂魔法を使う奴を見つけたいんだ。こいつが砂魔法に反応するから、こいつを使って調べれるようなもんを作れねぇかなって。」

ライラはデザーク結晶を見せながら答えた。

「それは方向や距離を明確に示す物がいいんですか?」

「出来るならありがてぇけど、無理なら近くにいることが分かるだけでも構わねぇな。」

「なるほど・・・」

エドゥリアはまた少し考え込む。


「リグーラルの羽根の抽出液を使えば良いのでは?」

ローゼルが助言する。

「いえ、あれでは水晶との相性が良くないし、風属性が強すぎるわ。」

その後もエドゥリアはぶつぶつと一人で何かを呟いている。

「まぁ、難しいならいいぞ。」

それも無視して呟き続ける。

ライラはローゼルを見た。

「大丈夫です。マスターは楽しんでいらっしゃいます。」

「そうなのか?」


「デザーク結晶を5つほど、頂けますか?」

「ああ、構わねぇけど、そんなに使うのか?」

「5つ程、構想が浮かぶので、試してみたいと思います。」

「なるほど。」

ライラは少し警戒しながらデザーク結晶を渡した。

エドゥリアの事だから、またおかしな見返りを求めると思ったが、エドゥリアは受け取ると結晶のサイズと純度を確認し、何かを呟きながら、工房へと消えていった。


「熱でもあんのか?」

普段の反応と違う事に困惑しながら、ローゼルに尋ねる。

「マスターにとって、作ったことの無い物を作るのは至高の喜びですので、その事で頭が一杯かと。」

「ほ~ん。」

「しまったな。俺も一つ頼みたかったんだが。」

薬を見ていたディケンズが言う。

「所望の物がおありでしたら、私がマスターに伝えておきますが。」

「そうか?ならソールオングルから鎖みたいなもんを発射出来るようにならないか、訊いといてくれ。」

「鎖・・・敵に撃ち込むということですか?」

「いや、回避用だ。大型の攻撃を避ける時にな。咄嗟に避けようとするとデカいから邪魔になって投げ捨てちまう時がある。持ったまま移動する術が欲しいんだ。」

「なるほど。それでしたら。」

そう言ってローゼルは部屋を出ていくと、暫くして戻ってくるが、その手には何も持っていなかった。


「どうした?」

「いえ、すみません。以前、私とマスターが使っていた移動用の腕に取り付けるフックワイヤーがあったのですが・・・」

「見当たらなかったか?」

「いえ。あったのですが、ディケンズ様の腕のサイズと重量を考えると使用は難しいかと。」

「そう言うことか。」

「マスターにディケンズ様用に改良出来るか、確認しておきます。」

「済まないな。」

「移動用ってお前らそんなの使う事があるのか?」

不思議に思ったライラが尋ねた。

「ここに店を構える前は、幾つかの町を転々としておりました。その際は我々で自ら赴いて素材を取りに行くこともありましたので。」

「ほ~ん。」

「あんまり想像出来ないな。」


ライラたちは幾つかの薬を買い、店を出た。





「んなわけあるかよっ!普通に塩振って焼いた方旨いだろ!」

「そいつが違うんだよ。そのエキスに1日漬け込むことで旨味が上がるんだ。」

「そんな事したら肉の味が消えちまう。」

「分かってないな。お前は喰ったこともねぇくせに、すぐ自分の物差しで物事を考える。」

「そりゃあ、アタシはアタシの物差ししか持ってねぇんだから、それを使うだろ。」

二人は下らない口論をしながら、バーへ向かっていた。


「しっかし、さっきから。」ライラの声が低くなる。

「つけられてるな。」

ディケンズの言葉に答える代わりに頷いた。

「お前、また何か盗んだのか?」

「何でだよ。大体、憲兵ならコソコソせず、正面から来るだろ?」

「それもそうか・・・どうする?」

二人は目配せすると同時に走り出し、道を曲がった。


フードを目深に被った黒いローブの男は急いで二人を追い、道を曲がるが、その先で二人がこちらを向いて立っていた。

「くっ!」

ライラが男に向かって言う。

「一体どういうつもりだ?返答次第じゃ憲兵に突き出すか、モウズの餌にするぞ。」

「いや、モウズは草食だから喰わねぇだろ。」

「そんなこと、やってみねぇと分かんないだろ。」

「いや、分かるだろ。」

「お前、さっき自分の物差しで考えるなって言っただろ!」

「動物の食性の話は物差しの問題じゃねえよ。」

「さっきの肉の話だってアタシと言う動物の食性の話じゃねぇか!」

「いや、そう言うことじゃなくて・・・」

自分を置き去りに、口論をする二人を見た男は、舌打ちをして逃げていく。

「あ、行っちまいやがった。何なんだありゃあ。」

ディケンズは黙って、男のローブに付いている紋章を見た。

「まぁしかし、砂漠の町で黒いローブなんて『怪しいです。』って宣言してるようなもんだぜ。」

「それはあれが奴らの正装だからだ。」

「正装?知ってるのか?」

「コズモンド・デル・エルサス。暗殺集団だ。」

「暗殺集団?殺し屋って事か・・・こいつはどうも、キナ臭ぇな。」

二人は男が去った道を見つめていた。





「コズモンド・デル・エルサスって言やぁ、アルグランド大陸を拠点にしてる連中だな。」

バーのテーブルでブロウが酒を片手に言った。

隣にはライラとディケンズが、正面にはルルが座っている。

「アルグランドって東の大陸だろ?そんな奴らがここまで来たのか?」

ライラが問い掛けた。

「いや、どの大陸で活動はしてるらしい。恐らくラステイルにも支部があるんだろ。」

「それで、ライラは何したの?」

両手で抱えるように持ったアイスミルクをストローで啜ったルルが尋ねる。

「おいおい。ルルまでそんな事言うのかよ。アタシだって流石に暗殺を企てられるような事はしねぇよ。ギルニアでそんな事する奴は、精々ミゼットくらいだろ?」

「そうか。ミゼットだ。」

ライラの言葉にディケンズが思い出す。


「ミゼットがどうかしたのか?」

「ロコメダの連中だよ。」

「ああ。あの魔物の命を守ろうって奴らか。」

「ミゼットが追い返したって話をしてただろ。」

「ああ、一人残して全員殺したって言ってたな。」

ライラの言葉にブロウが反応する。

「そんな事しやがったのか?あいつもイカれてやがるな。」

「だからロコメダの奴らがコズモンドに依頼したんだろ。」

「じゃあ何か?魔物の命を守ろうって言ってる連中が暗殺を頼んだってのか?」

「自分たちの思想の為には手段を選ばない連中だ。可能性はあるさ。」

「・・・解せねぇな。」


「標的がライラじゃなくて、狩人全体なら、話は変わる。」ルルが呟く

「確かに危ないな。ギルドに伝えて、狩人への注意喚起と、一応王宮に報告をいれてもらっておくか。」ブロウはそう言うと立ち上がり、カウンターにいるザインの方へ向かった。


「しかし、殺し屋か・・・アタシは人間相手に戦うの、あんま好きじゃねぇんだよな。」ライラが溢す。

「向こうが牙を剥くなら、容赦はしない。」ルルが呟いた。

「まぁ、用心するに越したことはねぇ。」





ギルニア砂漠の東に連なる山脈のその向こうに広がる平野。ラステイル大陸の東部を治めるダンドール共和国の一角にある小さな廃村。

その昔、山火事により住人の居なくなったその村の一軒の民家に黒いローブを着た女が入っていく。

家の中にある隠し階段を降りていくと、地下室の中には一人の男が座っていた。

男の前の机には幾つもの資料が置いてある。

「グライド様。」女が一礼しながら言った。

「何だ?」グライドと呼ばれた男は女を一瞥し、資料に目を落とした。

「ハーラル王国の偵察者から報告が届いております。」

「ロコメダの一件か。」そう言ってグライドが机の上の資料を取った。

中にはライラやディケンズを含む数名の名が見られた。


「標的はこれだけなのか?」

「狩人全体となると数は膨大ですので、実力者や名の知れた者だけで、ロコメダは納得させれるかと。」

「なるほどな。話せ。」

「国境の町ベールズのバアルは、一日偵察したそうですが隙も無く、事前に得ていた情報以上の物はなかったとの事です。恐らく気付かれた上で泳がされたかと。」

「ふむ。」

「王都でブロウを調べていた者は、メイリスのライラとディケンズを見つけて尾行しましたが、気付かれ撤収致しました。」

「流石は普段魔物を狩ってる連中だな。気配には鋭いか。発端になったミゼットとか言う女はどうだった?」

「ヨーズリーに潜入した者は・・・」

女は言い淀む。

「どうした?」

「今しがた、この村の入口に放置されておりました・・・首だけの状態で。」

「こちらの拠点まで掴まれているか。」

男はどこか愉しげに言った。

「ミゼットは元々山賊や同業をしていたとの事ですので。」

「蛇の道は蛇か。あの女が例のミゼットなら後回しだな。」

「どうされますか?」

「クラウンを送れ。小手調べだ。」

「御意に。」

女は一礼すると部屋を出ていく。

男は何事も無かったかのように、別の資料に目を通し始めた。




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