表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
砂上の狩人  作者: eight
27/54

第27話 黄金鳥時代②

デルタパドム。

三つの首と尻尾。六本の脚をもつ巨牛。

その脚力から繰り出される蹴りは強力だが、パワータイプではない。

三つ首には耳の横から前へ突き出すような二対の角が生えており、そこからそれぞれ火、水、雷の魔法を放つ。

その角は先にいくにつれて真ん中へと傾いており、角先はくっつく程近づいている。

国で制定されている危険度はランクBである。



先手でディケンズが光弾を放つ。

左首が水流で相殺し、右首がカウンターで雷撃を放った。

ディケンズは飛んで回避する。その隙にライラとルルが左右から回り込む。

ルルが横っ腹に一打入れ、ライラは後脚に切りかかった。

傷は入ったが、すぐに蹴り飛ばされる。

「ぐはぁ!」


転がり倒れたライラに追撃を仕掛けようと振り向いた巨牛の攻撃を阻止するべく、ディケンズがもう一度光弾を放つ。しかし、一つの首が雷撃を放ち、相殺した。


中央の首の火炎放射がライラを襲う。

横から間に入ったブロウが水魔法を放ち、二つの魔法がぶつかり、押し合いが始まる。

「けっ!流石に強ぇな。」

ブロウが気合いを入れるも、徐々に水が押され始めた時、背後から跳んだルルがデルタパドムの頭を殴り付けた。

火炎放射は断たれたが、左首がルルに向け、角を振るう。

ルルは巧みに躱すも、中央の首の角の追撃を喰らい、弾き飛ばされる。左首が落下地点を狙い、水流を放った。


ブロウの後ろから砂に潜って進んでいたライラが飛び出し、落下する前にルルを抱き止めて、そのまま水流を回避する。

隙を見たディケンズが傷の入った脚目掛け、光弾を撃ち込み、大きな爆発とともに、巨牛は大きく怯み後退した。


「ルル?大丈夫か?」

「ありがとう。」


怒りを露にした巨牛は地面を思い切り踏み鳴らしながら、低い声で唸る。

三つ首は無作為に魔法を乱れ撃ちし始めた。

次から次へと辺りへ魔法が放たれる。

敢えて狙いをつけず、放つことで着弾位置の特定は難しくなっていたが、四人は何とか躱していた。


躱し損ねたブロウの足に雷撃が当たる。

「ぐっ!」

「大丈夫か?」

「ああ、掠っただけだ。」ディケンズの問い掛けに答えた。

「しかし野郎。仕組んでやがるな。」

三つ首は無作為に放っているように見えたが、一番速い雷撃の首だけは、的確に狙って撃っているようだ。


背後が得策と踏んだライラは素早く回り込み、臀部を切りつけようとしたが、三本の尾が炎を纏い、ムチのように襲い掛かる。

横振りの攻撃を身体を反って躱し、追撃の縦振りを転がるように避けるが、その炎で肌にジリジリと熱を感じた。

「熱っち!」

「ライラ!」

「大丈夫だ!つーか魔法は角からじゃねぇのかよ。」



攻防は続いている。

確実に攻撃は加えていたが、三つ首と尻尾から繰り出される攻撃に、四人の回避に費やす時間が増えていった。

「・・・まずい。」

何かに気付いたルルが呟く。

「どうした?」

問い掛けたディケンズの元に、攻撃を避けたライラが跳んで来てぶつかる。

「うぉ!」

「済まん!」

続いてルルもその後ろに降り立つ。

「位置をコントロールされてる。」

「あ?」


巨牛は無作為に攻撃を出すように見えて、次第に皆を一ヶ所に集めるよう、回避位置を誘導していた。


最後にブロウもその場に回避して跳んできた。

巨牛が角を振り上げると、逃げ場を無くす様に四人の周りに火柱が上がった。

「危ねぇ!」

「何するつもりだ?」


巨牛の三つ首が同時に魔力を溜め始めた。

「こりゃあ、まずいな。」

「防げるか?」

「無理だろうな。」

言いながらブロウが前面に水のシールドを張る。

「来る!」

角から放たれた三種の魔法が渦巻きながら飛び、シールドの当たる。

衝撃に耐えながら、ブロウは全身の力を込めて喰い止める。

「くっ!済まねぇが、こいつは時間の問題だ。お前らは逃げろ!」

「そう言うわけにもいかねぇだろ。」

ライラが地面に手を置き、魔力を込める。

気合いと共に、水の前後に砂の壁が現れる。

強度があるわけではないが、水に強い雷を多少は緩和出来る。

二人同時に雄叫びを上げて、必死に耐えた。


「いけるか?」ディケンズが問い掛ける。

「いや。」ライラが答える。

「無理だな。魔力が違いすぎる。」ブロウも同調した。

再び押され始め、二人は渾身の力を込める。

その時、後ろからルルが言う。

「ディケンズ。ソールオングル(それ)を貸して。」

「ん?」

「今なら上がガラ空き・・・」

魔法を撃ち出している巨牛も動くことは出来なかった。

ルルの意図を理解したディケンズが言う。

「重いぞ?」

ルルは答える代わりに頷き、ソールオングルを受け取った。

ディケンズが尻尾をルルに向ける。

「乗れ。跳ね上げる。」

頷いたルルが尻尾の上に両足を乗せる。

「急げ!もう持たねぇぞ!」


ディケンズが全身を使い、尻尾を思い切り振り上げる。

高く跳んだルルは風魔法で起動を変えて直角に曲がり、巨牛の真上に跳んだ。

そのまま空中でソールオングルを構えると、中央の首に向けて、光弾を放つ。ルルの身体は反動で更に高く飛ばされた。


着弾し爆発が起きる。それと同時に一つの魔法が消え、威力が弱まった。

ライラは防御をブロウに任せ、砂に潜るとそのまま左の首まで進み、頭の真下から剣を突き刺す。

左の首が白目を剥き、動きを止める。二度と大きなダメージに残りの首も魔法を止めた。そこへ斧を抜いたディケンズが駆け、残りの首を切りつける。

血を吹き出した巨牛は横に倒れて、辺りに砂埃が舞った。

そこへルルが降り立つ。



ライラはふぅ~と息を吐き、ブロウは首を鳴らした。

勝利の喜びは見せず、四人は向き合う。

無言のまま、互いに探りを入れる。

素材を剥ぎ取るか。ネベルダットを追うか。


ディケンズが目配せした瞬間、ライラが走り出す。

それを追うように動いたルルの手をディケンズが掴もうとするも、その手をブロウが止める。

「くっ!」

「行け!ルル!スピードならお前が上だ!」

走り去る二人を横目に、ブロウとディケンズは両手を組み合う。

そのまま二人とも手に力を入れる。

「やるじゃねぇか。」ディケンズがニヤつきながら言う。

「久しぶりに本気の力比べでもするか?」

「リザードマンを舐めるなよ?」

「そいつは勝ってから言いな。」

二人は更に力を入れる。

「お前、楽しんでるだろ?」

「お互い様だろ。」

その時、上空にヴァルチャーと呼ばれる死肉喰いの鳥の鳴き声が聞こえた。それを聞いて、どちらともなく力を抜いた。


「まずは剥ぐか。」

「違ぇねぇ。今は金だな。」

そう言うとディケンズはヴァルチャーを追い払う為に光弾を撃ち、二人はデルタパドムの素材を剥ぎ取り始めた。



先行してモウズで駆けるライラだったが、すぐにルルが追い付いてくる。

「ちぃ!」

魔法で追い風を掛けたルルが追い抜いて前に立った。

ライラはルルの真後ろにつく。空気抵抗を無くすのと追い風の恩恵を受けるためだ。

真っ向勝負ではルルに分がある。ライラは背後につき、好機を窺う。


遠くにネベルダットが見えてきた。

ライラはモウズから飛び降り、そのまま砂の中に潜る。この距離ならモウズで走るより速い。

砂の中でルルのモウズの前へデザイルを飛ばす。

突然現れたデザイルに驚いて、モウズが前脚を高く上げたが、仕掛けてくる事を分かっていたルルは、ネベルダットに向けて大きく跳んだ。


ルルがネベルダットに到達するかという瞬間に、砂から飛び出したライラが、(おもむろ)に尾羽を掴んで、毟り取った。

驚いたネベルダットは、凄まじい勢いでその場から去っていく。


ライラは砂まみれになりながら、その黄金の尾羽をルルに向けて、笑いながら言う。

「へへっ!アタシの勝ちだぜ。」

「うん。私の負け。」

ルルもどこか楽しげ答えた。





こうして、狩人たちの黄金鳥争奪戦は幕を閉じた。

その尾羽がポッポリーのイタズラで塗られた物だと言うことを知ったのは二日後の事であった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ