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砂上の狩人  作者: eight
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第26話 黄金鳥時代①

不浄王の移動に伴い、外出禁止が解除された翌朝。

エリーの店は多くの狩人に溢れていた。

皆一様に依頼書とにらめっこをしている。そうして「あぁー」だの「う~ん」だの唸っていた。

「皆さん、狩りに行かないんですか?」

客は多いが、注文は少なかった。


「マシなのがねぇんだよな。」

ライラが答える。

皆が見ているのは報償金だ。どんな簡単な依頼だろうと準備も含めれば一日は使ってしまう。

一様に金欠な狩人たちにとっては一回の依頼でどれだけ稼げるかが重要になってくる。勿論それはメイリスだけでなく、ニグの狩人も同じで、いい塩梅の依頼は早く起きた者に取られてしまっている。


何人かの狩人が諦めて、すぐに終わりそうな安値の依頼を受けて出ていった頃、店の入口でカランと鐘の音が鳴る。

全員が一斉にそちらを見た。来客を知らせる鐘ではない。

酒場の入口には煙突の様な長い筒がある。鳥に着けた依頼書が落とされると鐘がなる仕組みだ。

そこに落とされる依頼は大きく二つ。

一つはハーラル王国。つまり国直属の依頼。

もう一つはギルドが正式に認可する前に依頼だけ先に飛ばす緊急性の高い依頼。

二つに共通して言える事は報償金が高いと言う事。


皆が固唾を飲んで見守る中、エリーがカウンターを出て、依頼書を取り出す。

「えぇ~と、王立魔物研究所からの依頼です。」

皆がじっと耳を傾ける。

「黄金の羽根を持つ」

その言葉で察した何名かがさっと席を立つ。

「ネベルダットの目撃がぁ」

ほぼ全員が立ち上がり酒場から我先にと出ていく。

「捕獲、或いは羽根の納品を所望。」

依頼を読み終え、顔を上げたエリーの前にはカウンターからゆっくり立ち上がるディケンズとハモンドしかいなかった。

「って!皆さ~ん!」

エリーの突っ込みが寂しく響いた。

「どいつもこいつも()いて仕方ねぇな。」

「一分二分で変わるもんでもないのにな。」ハモンドの言葉にディケンズが同調する。

「違ぇねぇ。」

「恐らく、ニグの連中も出るだろうから、こいつは荒れそうだな・・・お前んとこの暴れん坊。ちゃんと制御しとけよ。」

「はは、無理だな。こういう時に散らかすのはライラの専売特許だ。」

「違ぇねぇ。」

二人は笑いながら出ていく。


金色のネベルダット。それは稀に産まれるとされるネベルダットの突然変異種で、その目立つ色から通常個体より臆病と謂われている。六十年近く前に一度、捕獲例があるが、それ以降の捕獲は無く、数年に一度、目撃情報が流れている。その都度狩人たちは一攫千金を狙い、色めき立つのだった。



先頭集団だったライラは、町の入口のモウズの小屋ではなく、民家に向かう。

軒先に幾つかの野菜が吊るされている。外出禁止の間に消費した保存食の補充の為に干されている物だ。

「ちょいと借りるぜ。」

ライラは数個の野菜を引ったくり、小屋へ向かう。

同時に酒場を出た者たちは、既に町を出始めていた。

自分のモウズに乗り込み、後を追う。


前方に先頭集団が見えたところで、思い切り野菜を投げる。

目の前に落ちた野菜にモウズたちが群がり、皆が慌てふためいた。

「おい!止めろ!」

「後でやるから、今は進め!」

混乱している者の横を通り抜けると同時に手を翳す。

するとまるで地面を蹴り上げたかの様に砂が巻き上がり、狩人たちの顔に当たる。

「うおぉ!」

「見えねぇ!」

「ライラ!てめぇだな!」


「戦いはもう始まってるんだよ!」

ライラは言いながら、集団を置き去りに北を目指した。



手始めにオアシスに来たライラは周囲を見渡す。

「いねぇな。」

数頭の魔物がいたが、今は無視でいい。

問題は西を目指すか、北を目指すか。何も情報のない砂漠で魔物を探すのは、かなり困難である。

ライラが迷っていると後から一人の狩人が息を切らしてやって来た。

「ライラ!聞いたか?ニグの奴らがネベルダットを見たらしいぞ!」

「マジか!」

「ああ、こっちに逃げてるらしいから、西に向かえば先手を打てるかもしれん。」

ライラは礼を言う間もなく、モウズを西に走らせた。



暫く西に進んでいると、後ろからライラの袋をモウズに嗅がせたディケンズが追い付いてきた。

「遅ぇな。」

「お前が急ぎすぎなんだよ。」

「時は金なりだぞ。」

「急がば回れだ。」

ディケンズの返しを鼻で笑う。

「それで。首尾はどうだ?」

「ニグの奴らが見たらしいから、そっちに向かってるんだ。」

「ん?」ライラの言葉にディケンズは疑問を呈した。

「こんな状況で、何でそんな情報が入ってくるんだ。」

「さっきオアシスで聞いたんだよ。」

「んで、その情報提供者はどこにいるんだ?」

「あ?」ライラは辺りを見渡す。ライラたち以外は誰もいなかった。

「普通、人に情報投げるより、我先に行くだろ。」

「あ・・・」

「担がされたな。」

「あの野郎!」

「まぁいいさ。どうせ狙いはライラを使って、ニグの連中を混乱させる事だろう。実際の情報がない以上、本当にこっちいるかもしれん。戻るよりはこのまま探す方が良い。」

「ちきしょう!アタシとしたことがよ。」



西に進んでいくと、ちらほらとニグの狩人たちが見えてきた。

「やっぱ、あいつらも動いてるか。」

「あの様子じゃあ、まだ見つかってねぇみたいだな。」

二人を見つけたブロウが寄ってくる。

「よぉ!もうこんなとこまで探しに来てるのか?」

「色々あってな。情報は無しか?」

「ああ、だがこっちには秘密兵器があるからな。」

「秘密兵器?」

ブロウが視線を向ける先でルルが一人立っている。

頭を下げ、目を閉じて意識を集中させている。両耳がピンっと立っていた。


頭を上げたルルが近づいてきた。

「あっちから、鳴き声が聞こえた。多分、いる。」

そう言って北東を指差す。

「そんじゃまぁ、行くとするか。」

ブロウとルルがそっちに向かって動くと、ニグの狩人たちはルルの力を分かっているのか、皆がそちらに向かう。

「どうする?」

ディケンズの問いにライラが答える

「当てはねぇんだから、追うしかねぇだろ。問題は見つけた時点でどう出し抜くかだな。」

「大丈夫だ。それに関しては手がある。」

ディケンズはニヤリと笑う。



ルルとブロウを先頭に一行が進んでいく。

「みんなついてくる。どうする?」

ルルがブロウに訊く。

「大丈夫だ。こういう場合は大抵ライラたちが動く。俺たちはあの二人だけ注意してればいいさ。」

「分かった。」




進んだ先に一頭のネベルダットが見えてくる。しかし、その体は黒い羽毛に包まれていた。

「ん?金色じゃねぇぞ。」

「なんだハズレか。」

口々に言っていると、一人の狩人が気付いた。

「おい。尻尾を見ろ!」

普通の体色のネベルダットだったが、尾羽だけがまるで塗ったかのように金色に輝いていた。

「全身じゃないのか?」

「分からん。ギルドの情報が正しいとも限らん。」

「兎に角、金にはなるだろ。」

困惑しながらも皆が近付こうとした瞬間。


「危ない!上だ!」

叫び声に反応して、皆が上を見て身構える。

しかし、そこには何もなかった。

「何なんだ一体。誰だよ。」

皆が視線を戻すと前にはディケンズが立っている。

「済まんな、危ないのは上じゃなかったよ。」

そう言うと出力を下げていたソールオングルを放つ。

辺りに目映い閃光が広がった。

「うおぉ!」

「目がぁ!」

目眩ましを喰らい、混乱する狩人の間をライラが抜けていく。

「後はアタシたちに任せな。」


先頭に立ったライラだったが、すぐ横をモウズが駆け抜けていく。乗っているのはルルだった。

「あ!オメェ追い風かけやがったな!」

ルルは自身の風魔法でモウズの速度を上げていた。

「あれは、私たちの獲物。」

振り向きながら言ったルルは更に距離を離していく。その後ろをブロウが続く。


「くそ!」ライラは追いかけながら、二人の頭に向け、砂の玉を放つも、当たった二人は平然と進む。

追い付いてきたディケンズが言う。

「無駄だ。バイザーとサングラスのせいで目潰しは効かねぇ。さっきの目眩ましもそれで躱された。」


逃げるネベルダットを追って、四人は攻めぎあいながら進んでいく。

ライラは先を行く二人の足元に手を翳して魔力を込める。

地面の砂が少し隆起した。ルルは軽々と乗り越えたが、ブロウは態勢を崩す。

すかさず二人は横を通りすぎる。

「先行くぜぇ。」


次の瞬間、背後から高圧の水流が飛び、ディケンズの肩に直撃した。

「くはぁ!」

衝撃でディケンズがモウズから転げ落ちた。

「おい!ブロウ!流石にそれはやり過ぎだろ!」

咄嗟にモウズを止めたライラが叫ぶ。

「違う!俺じゃねぇ。」

「じゃあ何だよ?」

ディケンズに肩を貸し、起こしながら言った。

「あれ。」

同じくモウズを止めていたルルが指を差す。


そこには三つ首の大きな牡牛がこちらを威嚇していた。

「デルタパドム!」

「・・・どうする?」身構えながらブロウが問う。


「どうするって、決まってんだろ?腕利きの狩人が四人もいるんだ。」言いながらライラは剣を引き抜く。

隣でルルも両手にガントレットを嵌めた。

ディケンズもまたソールオングルを構える。

水流(さっき)のツケは払わせてやる。」

皆の反応にブロウも大剣を握る。

「なるほど。そういうことならやってやろうじゃねぇか。」



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