表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
砂上の狩人  作者: eight
19/55

第19話 溶け得ぬ記憶の幻 凍幻鳥

「な、何だありゃあ?」

ライラが驚きながら言う。

「凍幻鳥だ。」

「あれがそうなのか?」


砂に落ちた巨大な氷塊はスッと消えていき、凍幻鳥は翼を広げ、宙に舞い上がった。

黒茶色の羽毛。翼の先と頭部は蒼白い色をしている。

黄色く鋭い爪を持つ足と鋭い嘴。眉間の辺りには蒼い宝玉が付いている。

ランクBの強さであるが、渡り鳥であり、一定の時期に北の大陸に向かう途中で現れるだけの為、王国の評価としては一応枠外の特殊となっている。


「さっきのデカい氷に呑まれたら終わりだ。気を付けろ!」

ディケンズがモウズに駆け寄り、ソールオングルを取り出す。

「要は攻撃を食らわなきゃいいんだろ?」

言ってライラが走り出した。


凍幻鳥の尾羽に向けて跳んで切りかかるが、ひらりと躱される。

そのまま羽根を広げると、周囲に無数の氷の(つぶて)が形成される。


「・・・やべ。」

ライラは横に走り、飛んでくる礫を避けるが、数が多すぎた。

ひとつがライラの顔目掛けて飛び、避けきれないと悟ったライラが衝撃に備える。

しかし、礫はライラの顔をすり抜けていった。

「幻?」

気づいたライラはすぐさまカットラスを構える。

「くそったれ。見かけ騙しかよ。」

再度、凍幻鳥に取り付こうとしたが、次に飛んできた礫が腹に当たる。

「うっ!」

続けて飛んできた礫を籠手で払いのけた。

「今度は本物かいっ!」

「奴は本物と幻の氷を織り交ぜてくる。気を付けろ!」

「先に言え、先に!」

ディケンズの忠告に悪態を着きながら、一斉に飛んできた礫を砂に潜り回避した。


ライラを狙っていた凍幻鳥に向け、ディケンズが光弾を撃ち込む。

音に反応して避けようとしたが、翼を掠めて爆発すると、凍幻鳥が地面に落下した。

砂から飛び出したライラが、地面で踠いているところへ切りつけた。

命中するも、分厚い羽毛が刃を拒み、何枚かの羽根が宙を舞う。

態勢を整え、ライラを振り払った凍幻鳥は、翼を伸ばしてジャンプするように宙に舞うと、そのまま宙返りして地面に思い切り着地する。

その瞬間、周囲の砂の中から氷塊が突き上がるように飛び出し、二人は衝撃で吹き飛ばされた。

「ぐはぁ!」


受け身を取ったディケンズは、すぐに光弾を撃つが、今度は飛んで躱された。

それを見たライラが走り出し、地面に残っていた氷塊を踏み台に高く跳躍し、凍幻鳥の尾羽に取り付く。


凍幻鳥は振り落とそうと、回転しながら高く上がった。

必死にしがみつくライラにディケンズが叫ぶ。

「ライラ!振り落とされるなよ!」

「言われるまでもねぇ!」

空中で暴れながら脚で蹴落とそうとするのを避けながら、ジリジリと登っていき、背中にカットラスを突き刺す。

血が吹き出し、呻き声を上げた凍幻鳥が一際暴れる。

耐えきれず、手を離したライラは落下の瞬間、魔力を込めると、水に落ちるように砂の中へダイブした。


暫くして飛び出してきたライラにディケンズに声を掛けた。

「大丈夫か?」

「ああ、そこそこ深くまで行ったな。奴は?」

「まだ飛んでやがる。」


ディケンズが見上げた先で凍幻鳥は一ヶ所に留まり、ライラたちの方を向きながら、翼を広げる。

そして威嚇するように甲高い鳴き声を上げると、額の宝玉が光りだした。

辺りに蒼白い光が広がり、微細な氷の粒が現れる。

それは霧のように辺りに充満し、気温を下げた。


「今度は何だ?」

「奴さん、本気を出したようだな。」


凍幻鳥が上空をくるりと一周すると、氷の粒が集まり、に人と同じくらいの大きさの氷塊がいくつも形成される。

二人は身構えた。

その大きさを見て、ディケンズが言う。

「おいおい。当たったら痛ぇじゃ済まねぇぞ。」

「あれも何個かは幻なのか?」

「さぁな。幻に賭けるにはリスクが高すぎる。」


二人は的を散らす為、同時に左右へ走り出す。

凍幻鳥が翼を振り下ろし、氷塊が二人に次々と飛んでいった。

ライラは蛇行しながら走って避け、そのまま飛び込むように砂に潜る。

ディケンズは走っていたが、逃げ切れないと踏み、ソールオングルを構えて、氷塊に放った。

光弾が氷塊に当たって爆発し、氷塊は四散したが、すぐ後から飛んできた氷塊がディケンズを当たる。

「ぐおぉ!」

ディケンズは衝撃で吹っ飛び、ソールオングルが地面に転がる。

凍幻鳥が追撃を仕掛けようとした時、背中に砂の玉が当たった。

振り返るとそこにはライラが立っている。周りにいくつかの砂の玉が浮いていた。

「ちょっとタイムだぜ。」


ライラが魔力を込めると砂の玉が一斉に飛んでいき、凍幻鳥の顔に当たり弾ける。目潰しを喰らった凍幻鳥はその場で頭を揺らしてもがき出した。


その隙にライラはディケンズに駆け寄る。

「大丈夫か?」

「何とかな・・・」無事ではあったが、まだ立てずにいた。

ライラは近くに落ちていたソールオングルを拾って構えた。

「アタシが始末してやるよ。」

「おい!馬鹿、やめろ!今は最大出力だ!」

「高火力なら、好都合じゃねぇか!」

ディケンズの制止を無視して、凍幻鳥に狙いをつける。


「今夜は焼き鳥だぁ!」

言いながら放った瞬間。砲撃の反動でライラが後ろに転がり飛ぶ。

「のおぁ!」

その反動で照準がズレて、光弾は左へ逸れていき、気配で察した凍幻鳥は上空へ飛んで逃げた。


「おい!何だよ。これっ!」

ライラは憤慨していたが、元々ソールオングルはディケンズに合わせて作られており、普通の人間が扱うのは難しい。ましてや最大出力であれば、ディケンズでさえ尻尾を使い三点で支えなければ、反動を抑えきれない。

「お前にゃあ無理だって言っただろ。」

ライラからソールオングルを奪い取ったディケンズが構えるが、目潰しを解消した凍幻鳥は上空を悠々と飛んでいた。

「こいつは当てるのは厳しいな。」

「すぐ上空に逃げるなんて、卑怯な野郎だ。」

「すぐ砂に潜る奴が言うなよ。」

「アタシはいいんだよ!」

言いながら、八つ当たりで氷塊を殴ると、バキッと欠けた。

「ん?こいつ意外に脆いのか?」

ライラが氷塊を触る。

「そりゃあ、粒が集まってるからな。そこまで硬くないんじゃないのか?」

ライラが少し考えて、凍幻鳥を見上げた。

「どうした?」

「あの野郎、もうちょっと下ろせるか?」

何か手があると察したディケンズが返す。

「やれるだけはやってみる。」

「頼む。」

ライラは走り、別に氷塊の方へ向かって砂に潜る。



ライラを見失い、ディケンズに標的に絞った凍幻鳥がまた、周囲に氷塊を作り出した。

ディケンズは狙いを定めると、凍幻鳥の斜め上にある氷塊が光弾を放つ。

氷塊に当たった光弾が爆発し、それを躱すために凍幻鳥が高度を下げた。


ライラが砂の中で、砂に埋まっている氷塊の底にデザイルを突き刺し、地上に飛び出す。

凍幻鳥を見上げて言う。

「ディケンズ!もうちょい下げてくれ!」


「簡単に言うな!」

氷塊を遮蔽物にしていたディケンズがぼやきながら、今度は頭部を狙って撃つ。

横に躱されたところへ、背後からライラが砂の玉を頭部へ放った。

背後からの気配をだけを感じた凍幻鳥は、思わず下に躱した。

その瞬間にライラは右手をデザイルに向け、左手で手首を掴んで魔力を込める。

刺さった氷塊ごと、デザイルがカタカタと揺れ出す。

「行けっ!コラァー!!」

ライラが叫びながら手を振り上げると、氷塊が地面から浮き上がり飛んでいく。


氷塊は振り返った凍幻鳥の腹部に直撃し、凍幻鳥はバランスを崩してそのまま地面へと落下した。

ライラは駆けながらカットラスを引き抜くと、その首目掛けて渾身の力で切りかかる。

刃が凍幻鳥に触れた瞬間。キンっ!という有り得ない金属音が響く

「あ?」

その瞬間、視界が氷のようにバキッと割れた。

そこにはライラと同様に斧を振り下ろすディケンズの姿があり、金属音は二人の武器がぶつかる音だった。

「何だ?」

ライラのカットラスが耐えきれず、中程から折れる。

「一体なんな・・・」

言い掛けた時に二人のいる場所が暗くなる。何か大きな物が太陽を遮っている。

二人は目を見合せ、上を見た。

「しまった・・・」

ディケンズが言うと同時に巨大な氷塊が二人の元へ落ちた。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ