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砂上の狩人  作者: eight
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第13話 砂塵に燃ゆる焔 アルドギドス

全高は4mはあり、頭から尻尾まで合わせれば10m近くある二足歩行の獣脚類。

土色のその体は鱗に覆われており、尻尾の先には箒のように線毛が生えている。

手は小さく、爪は脅威ではないが、その体躯を支える脚は太く強靭で、爪も凶悪な鋭さをしている。

頭部には、目の上の額の辺りから側頭部を守る為に一対の渦巻き状の角が生えている。



ライラは左手から回り込み、ディケンズは距離を取りソールオングルを構えた。

アルドギドスがライラに狙いをつけ走り出す。

ライラのアイコンタクトを受け取ったディケンズが光弾を放つ。

一直線に飛んだ光弾が当たり爆発し、怯んだアルドギドスがディケンズに標的を変えたタイミングで、ライラが後ろから尻尾を駆け上がろうとしたが、一歩乗った時点で気付いたアルドギドスが尻尾を振り上げ、ライラを宙に飛ばした。

ライラは空中で体勢を立て直し、落下の勢いのまま、首の後ろを切りつけた。

ガンッ!と鈍い音がして刃が止まる。

小さな傷すら入らなかった。

「くそっ!」と毒づいたライラは背中を蹴るように後方へ跳んで、その場を離れる。


アルドギドスがディケンズの方を向き、突進を仕掛ける。

ディケンズはソールオングルを逆方向に投げ捨てながら、横に大きく跳んだ。突っ込んできたアルドギドスの噛みつきがディケンズがいた場所で空を噛む。

受け身を取って立ち上がったディケンズは、即座に斧を抜き、頭が下がったところを横切りで切りつける。

顔は若干柔らかいのか、幾つかの鱗が飛び、傷が入ったが、そのまま頭突きを喰らって吹き飛ばされた。

「ぐはぁ!」


アルドギドスは地面を転がるディケンズの方に向け、二三地面を踏み鳴らすと大きな咆哮を上げた。


ライラは駆け出し、危険を承知の上で尻尾と脚の間を滑り込むように前に出て、腹部を切り上げた。

背面と違い、傷は出来たがダメージを負う程ではない。

大きく脚を上げたアルドギドスがライラを踏みつけるも、当たる前に砂の中へ消え、尻尾の後方から飛び出す。

「やっぱ、腹じゃねぇと駄目か。」


ライラが隙を作った内に、ソールオングルを手にしたディケンズが構えるが、気付いたアルドギドスが再び火球を放つ。

ディケンズは遅れて撃った為、2m程先で火球とぶつかり、大きな爆発が起き、爆風が砂煙巻き上げた。

ディケンズは爆風に飛ばされたが、爆発自体に巻き込まれることは避けられた。

一面を砂煙が覆い、目の前さえ見えない状態になっている。

「ディケンズ!無事かっ!」

「大丈夫だ!」

その声で安否と大体の位置を確認出来たが、それはアルドギドスも同じであった。



ライラの視界で砂塵が揺らぐ。

咄嗟に地面に伏せると、直後に頭の真上を薙ぎ払った尻尾が通過していく。


ディケンズもまた、砂塵の奥に赤く光るものが見えたと同時に横へ大きく跳ぶ。

火球が通過していき、後方で爆発が起きた。


アルドギドスは尻尾に付いている線毛を、まるで箒のように使って砂を巻き上げ、更に視界を隠していく。


「野郎。面倒くせぇ、戦いをしやがる。」ライラがぼやく。

「喋るな!位置を悟られる!」

「いや、声だけじゃねぇ。尻尾の先の毛で動きを感じとってるみてぇだ。」

「マジかよ。」

「アタシに任せろ!」


ライラは意識を集中する。火球を放つ音が聞こえると同時に腰からデザイルを抜いて横へ投げると逆方向へと跳ぶ。


火球の爆風が再び視界を隠した。

ライラは手だけを動かし、魔力を込める。

デザイルが地面を這うよう動きだし、アルドギドスの注意を引く。

アルドギドスが回転するように尻尾で薙ぎ払い、デザイルが宙に飛んだ。


再度、魔力を込め、デザイルを誘導するライラが叫ぶ。

「デザイルで誘導するからソールオングルを撃ち込め!」

「この視界じゃあ位置が分からん!」

「あぁ?えっ~と右だ、右!」

ライラは自分から見て、右手にデザイルを動かしていく。

「ったく。どこから見て、右なんだよ。」

ディケンズはぼやきながら、先程の尻尾攻撃の位置からアタリをつけて構える。

出力は最大に絞ってある。


アルドギドスがデザイルに向け、火球を放つ。

着弾の一瞬、風圧で姿が見えた瞬間に狙いを定めて、光弾を撃った。


空を切り、飛んだ光弾がアルドギドスの肩に着弾し、甲殻を砕いて爆発する。

流石のアルドギドスも大きく声を上げて怯んだ。

「よしっ!」

「でかしたっ!」

肩から血を流したアルドギドスは怒りに駈られ、大きく咆哮を上げる。

首を引き、大きく息を吸ったアルドギドスが火球を無造作に数発放ち、一帯は砂塵に包まれた。



ライラは冷静に、再びデザイルを動かし誘導する。

しかし、一向にアルドギドスが動く気配は無い。

「・・・殺ったのか?」

呟いた瞬間、低い音と共に空気が一気に揺らぐ。今までにない挙動だった。



「ライラ!上だ!」ディケンズが叫んだ。

「うえ?」

ライラが見上げると高く跳躍したアルドギドスがライラ目掛けて、尻尾を叩き付けようとしていた。

即座に反応し、横に大きく跳ぶ。

直後、ライラのすぐ横に尻尾が叩き付けられた。


直撃を免れたものの、その衝撃で宙に浮いたライラの身体を振り返ったアルドギドスの牙が襲う。


ライラは咄嗟に腕でガードしたが、その左腕に牙が食い込む。

ライラは悲痛な叫び声を上げた。

逃れようともがくも、アルドギドスは噛みついたままライラを振り回した。


「ライラ!」

ディケンズは笛でモウズを呼び、飛び乗るとソールオングルの出力を調整しながら、アルドギドスの前まで駆ける。

「目を瞑れ!」

ライラを咥えているアルドギドスの顔面に向け、ソールオングルを構えると、(まばゆ)い閃光が放たれた。


アルドギドスは大きく怯み、ライラを放す。

ディケンズはライラの服を掴み、もう一頭のモウズの背に放り投げると、そのままアルドギドスから逃げた。




ある程度距離を取るとモウズから降りて、ライラに駆け寄る。

「無事かっ!」

「何とかな・・・」ライラは痛みに顔をしかめながら答えた。

腕には歯跡が残っており、ドクドクと血が流れ出ている。

「喰い千切られなかっただけ、マシだな。」

ライラが自虐的に呟いた。

「動くか?」

「ああ、問題ない。だが狩りをしてられる状態じゃねぇな。」

ディケンズが袋からバルンバと言う薬用効果のある大きめの葉っぱを取り出し、エドゥリアの店で買った傷薬を塗りたくると傷口を覆った。

傷が滲みるのをライラは歯を食いしばりながら耐える。その上に包帯をきつく巻き付けた。

「応急措置はした。とりあえず、今は奴の縄張りから出るぞ。」

「ああ。これ以上はどうしようもねぇ。」


そうして二人は敗走を喫した。

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