休日
翌日、とも子と冨士夫、桂子と亮太はクルマで小旅行に出た。
近くの島だ。お店はお休み。
桂子「さあ、お弁当にしましょ」
亮太「お、タコ足ウインナーやんけ。俺これ好きやねん」
とも子「流石、手が込んでるわね」
桂「私もこれ好きなんよ」
冨士夫「ねえ、桂子ちゃんが洋裁店を開こうと思ったきっかけは何?とも子さんと知り合ったのは?」
桂子、すこしうつむいて
「高校時代の延長よ。私高校時代って大人しかったやん?」
「うん」
「だから、大人しいなりに、自分で努力してたのよ。
その科目が『技術家庭』だったの。すると、ミシンかけたりするのがめちゃ好きになって
それが進んで、大人になると、みんな案外ミシンをかけたりしなくなった。
自分で縫い合わせたらできるようなことでもお店に注文したりする。
だから、需要と供給で私が洋裁の店を開こうと考えたの。」
「へえ」
「とも子さんはミシンの展示場で知り合ったの、ミシンの展示場なんて珍しいからね。そこでいろいろ話を聞いてたら、すごいエキスパートだと思ったの。それで一緒に仕事しようかという事になったわ。」
とも子も頷きながら、
「私が子供の頃ってお母さんが私の服を縫ってくれたりしてたわ。
あの頃のミシンって電動じゃなく、足踏みで回転させるミシンだったの。」
富士「たまに博物館にあるな」
「そう、あれで、いろんなものを縫ってくれたから、助かったわ。私ってお転婆な方だったから、
よく、糸が切れたり破けたりしてたの。そういうのがとても面白くなって
洋裁専門学校に進学したの」
亮太「やっぱり大学より専門の方が進路に指針がつくよな。おいらなんか、
大学出ても精々セールスか何に進むよりしかない。つまんないよね」
冨士夫「僕だって、宅配はバイトの延長でやってるからな。」
桂子「勿体ない。グラフィックの才能があるのに」
とも子「冨士夫君は、本当に最初から独学でフォトショップを習ったの」
冨士夫、すこしためらって
「いやあ、実はイラストレーターの友達がいるんだ。それで、彼フォトショップの
使い方を見せてもらったんだ。それで自分もやってみようと思って、作ってみたら
彼が驚いて『君、才能あるなあ』って言うから、それからどんどんと独学でやりだしたんだ。
面白いよ、フォトショップ」
亮太「いいなあ、才能のある人は羨ましいよ。」
桂子「亮太だって、歌歌えるじゃん。曲も作ってるし」
とも子「あ、そうよね。ここで何かご披露願いたいわ(笑)」
亮太は早速クルマからギターを持ち出して弾き始めた。
「よっし、じゃあ『みんなの好きな洋裁店』を
うわぁー、パチパチパチ
亮太歌う、
「みんなが集まる洋裁店、配達もしてくれる
散歩の時間にできる、素敵な洋裁店
(サビ)君も―、縫い合わせて
新しい服を着ようよ~♪」
みんな拍手。
富士「亮太さんすごい。コンクールに応募したらどうですか?」
亮「いやあ、僕なんか、それほどでも」
とも子「ねえ、歌とコラボでなんかキャンペーンはったらどう?」
桂子「いいアイデアだけど、鳴り物は無理じゃないかな?ギターとか?ショバダイ取られるで。」
亮「CDとかかけるだけでも取られるしな。」