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とも子の洋裁店  作者: お舐め
1/9

洋裁店で働く

挿絵(By みてみん)


道端にミシンの音がする。すると裁縫の店だ。

中に入ると、とも子が下向いてミシンをかけてる。彼女は集中している。

でもこの洋裁店は彼女が店主ではない。

2階から呼ぶ声がする「とも子さん、お腹空かない?」

呼ぶのはとも子の友達、桂子、店の店主でもある。

「うん、お腹空いたわ。」

桂子「肉すきでどう?」

と「でも、肉すきって季節外れじゃない?」

桂「なんで?」

と「普通は3月には季節替わりでメニューが変わるわよ」

桂子「じゃあ食べ納めってことで今年最後に食べようよ」

とも子「わかった。縫物休憩するわ」

彼女は取り敢えず、縫物を片付けて、二階にあがった。


二階には桂子の旦那、亮太がすでに座って、鍋をつついている。

「よう、お疲れさん」

と「ちょっと根つめすぎたわ。頂きます。」

桂「ねえ、今度、うちの店にもCADキャドを導入するのよ。」

亮太「ああ、いよいよ、うちの店もOA化するわけかい。おいらの出番も少なくなるなあ」

桂「何言ってるの。配達と注文はうちの業務の根幹よ。とも子さんもCAD習ってたんでしょ」

とも子は少しためらった。

「そら、、確かにならってたけど、プロでやるのは初めてよ。できるかしら?」

桂「できるでしょ。手書きでデザインするのをパソコンでやるだけだから。」

亮太「パソコン業務手当に三万支払いますよ。」

桂子は顔を歪めた。

「あんた、そんなん簡単にできる訳ないやろ」

「いやあ、でも、それぐらいの手当てを当てていなけりゃ。とも子さんに頑張ってもらわないと」

とも子「うーん、専門学校時代の友達にも相談してみる」

桂「それでいこう。」


彼女らは洋裁CADをネットで注文した。

しかし、使い始めは難しかった。

でもとも子は経験があるから、段々思い出してきた。

彼女は実務が主だったので接客の機会は少なかった。

でも桂子が不在の時は接客に回るんだ。

桂子の亭主、亮太はもっぱら配達に回ったり、

チラシ配ったりしている。あとは荷物整理だ。


洋裁店なんて、めったに男の人は来ない。

店の外から中を覗く男性も皆無だ。


ところがある日、とも子にラブレターが届いた。

でも待てよ、ラブレターなら名前が書いてあるはずだ。

桂子宛に来たものでもない。

じゃあなんて書いてあるか?

「いつもミシンの前で作業している長身の女性」

これだけで、わかる。

でもね、「愛してる」とかって書いてない。

差出人の名前も書いてない。

「いつもミシンを縫ってる、

 長身の人、好きです」

としか、書いてない。


桂子ととも子は二人してみてる。

桂「なんだろ?いたずらかな?」

一方とも子は真剣に見てる。しかし笑いながら、

「私、こんなんもらったン初めてやわ。」て見てる

「でも本当に男の人が書いたのかな?」

「なんで?」

桂「だって、男の人なんて、店に入ってこないし、女の人がラブレターを書いて来るのもおかしい。レズじゃないでしょう?」

と「いやだぁ~(笑)」


亮太「何だい?」

奥から亮太が興味津々で出てきた。

桂「とも子さんにラブレター来たのよ」

亮「何?差出人誰だよ?」

と「書いてないねん。」

亮太は手紙を見直した。

「うーん、字の感じでは少し荒っぽいから女の字ではないな。

でも、男がなんでとも子さんのこと知ってるんだろう?」

彼はとも子の方を見た。

と「ううん、私知らないわよ。お店に男の人来ないし」

桂子「ほっとくしかないな。差出人の名前がないし。」

亮「まあ気にせず放置しとこうよ」


でも、とも子は気になった。

かと言って、CADの操作方法をクリアしなきゃならないし、

それどころではなかった。


とも子は意に介せず、CADの勉強を進めた。

CADはいわば、立体的に製図をする方法の一つだ。

建築CADとかもあるが、

洋裁CADも最近ではメジャーなソフトといえる。

普通に線を引いたりして図面を書くんだが、

その場合、書き間違えたりして修正する事が出来ない。

だって鉛筆と消しゴムで図面を書くわけじゃないからね。

CADなら、パソコン上に製図を書いて、それをパソコン上で

修正するから、やり直しやすい。


ある時、割と年配の女性のお客さんが入って来た。

「いらっしゃい」

客「スミマセン、黄色のこのジャンパーの汚れ取りたいんですが、すぐに取れますか?」

とも子は素材を見た。

「クリーニングで直すことができますよ」

彼女はそう言ってふと相手の女性の顔を見た。

(もしかしてこの人が、ラブレターの差出人では?)

そういう邪念が、引っかかるようになった。

(でも差出人は男じゃないのさ?)

彼女はそう思いつつも邪念を振り払って接客に徹した。


お客さんが出て行くと、とも子はふと思いついて、

店から出て、さっきのお客さんを追いかけた。

「お客さん!お客さん!」

客「何ですの?」

「すみません。この程度の汚れなら、軽く湿らせたスポンジに中性洗剤を原液のままつけて、叩くように汚れを落とせば簡単に落ちますよ。どうですか?」

「いやあ、もう、自分でやるの面倒だから、お宅にお任せすわ。仕上がりも綺麗でしょうし」

「わかりました。有難うございます」

店に戻ると桂子が出てきた。

「どうしたの?」

と「なんか、ジャンパーの汚れを落としてほしいっていうのよ、お客さんが」

桂子「それなら、クリーニングで間に合うわね。でも縫い目とかが荒っぽくなってるし

それは修正すればいいわ。」


とも子「ねえ、わたしちょっとラブレターの事気になってるかなあ?」

桂子「え?なんで?」

「いやあ、なんかお客さんが男の人でもないのに何となくラブレターの差出人じゃないかと勘ぐったりすることがあるの」

桂子「大丈夫よ。多分そういうのって一回だしたらそれで終わり、みたいなのが多いから。亮太には内緒だけど、私も中学校の時ラブレターもらったわよ。でも差出人の名前がない、だれが出したかわからない。結局分からず仕舞いよ」

とも子はニヤリとして

「案外、亮太さんだったりしてね」

ハッハッハ(笑)


奥で製品を整理してた亮太がこの笑い声を聴きつけた。

「何を笑ってるねん?」

桂子「ん?いやあ、こないだとも子さんに来たラブレター、誰かなと思って・・・・」

「ああ、それよ。でも、もしかしたら、案外身近な人物かもよ」

と「そんな人おらへんわ」

桂「あんまり気にせんときよ。私の考えではそれ書いた人、そのまま諦めて消えるんじゃない?」

と「消える?」

亮「ほっといたら、関わってけえへんで」

とも子は「へぇー」って感じで余り気にしてないようにも思えた。

彼女は仕事に専念しているr。だから、1カ月もすればそのことを忘れた。

別に波風のない穏やかな日々を送っていた。


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