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この作品には 〔ガールズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

第3回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞

密室の故意

作者: 黒銘菓

 『未必の故意』という法律用語が元ネタです。特に関係はない筈…。

 思い付いたが吉日で書いたなろうラジオ大賞応募作です。本作&他作の応援宜しくお願いします。


 薄暗いコンクリートの部屋。

 扉には鍵。出口は他に無い。


 バッグは取られた。

 スマホもない。


 そして、目の前にはロープの端。

 それには滑車が付いて天井から吊るされ、もう一端は壁の上に空いた穴に吸い込まれていた。


 私はそれにすがり付く。

 気を抜かなくても上に引っ張られる力に抵抗する。必死で。

 「ほらー、頑張らないと彼が死んじゃうよー。」

 部屋にただ1つあるモニターから声が聞こえる。

 モニターには良く見知った人が撮されている。でも、声の主は違う。

 撮された彼の声じゃないし、彼は崖から伸びたロープに両手でしがみついて生死の境に居るのだから。

 「私が気に入らないなら私を狙いなさい!彼は関係ないでしょ!?何でこんな…」

 ロープが揺れ動き、手に食い込む。それでも離す訳にはいかない。

 何時まで続くか?終わりはあるのか?そんな事はどうでもいい。

 離せば彼が死ぬ。それだけ。

 「彼も当事者。人の恋心を踏みにじった許されない(ヒト)。さぁ、早く離しなさい。そうすれば全て終わる。うまくいく。」

 モニターから冷酷さと穏やかさを混ぜた声がした。

 体が強張り火照る中で寒気がする。

 「絶対嫌!離すものですか!」

 暴れるロープを腕と足に絡めてなんとか押さえ込む。

 絶対助けてやる!





 二分されたモニター越しに健気な女を見る。

 顔は真っ赤、怒りと愛に満ちた顔がとてもいい。

 スイッチを押して男の方に声を送る。

 「ほらー、健気な彼女が頑張ってるんだから、応えないと。」

 モニターに映る男の手にはロープ。真下は崖。ロープを引く女の見た通りの光景。

 ロープが男の首に括られて、今にも死にそうな顔をしている点を除けばの話だが。

 「さあ、良いでしょう?私の恋を踏みにじって良い夢を見れたのだから。頑張りに応えて死んじゃってよね。」


許されないかもしれない。

拒絶されるかもしれない。

迷惑になるかもしれない。


 だから遠くから見ていた。この男はそんな私から彼女を奪った。

 清廉な彼女を騙すなんて許されない。汚す(コイツ)を罰せよ。

 そうすれば、きっと彼女も目を覚ます。そうしたら、今度こそ、勇気を持って思いを伝えよう。


 その結果がどうなっても構わないと、私は覚悟を決めた。


 これは決別。私の恋の決別。





 ロープを強く引く。

 暴れる男の感触が手に伝わる。未だ死んでない。

 私は諦めずに健気にロープに縋る彼女を演じる。

 手足に痕跡を残し、知らなかったと泣き喚き、()()()()()()()()()()()()()()()()

 これは別離。悲劇のヒロインの別離。

 彼君は泣いていい…のかな?

 もしかしたら彼君がドクズ野郎という可能性も否定しきれない………。

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