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花屋敷の怪

 花屋敷で夕食を食べたグラム、ウィット、ジウの三人は二階に上がって来ていた。

 女性は揃って地下の厨房で片づけをしている。

 一度は三人ともそれぞれの部屋へと別れていた。


 植物の絵の客間から、グラムが思いつめた顔をして出て来る。

 そして隣の山の絵が飾られた客間のドアをノックした。


「どうした? って、痛い痛い痛い!? 何何何!?」


 ウィットが出て来るとグラムは問答無用で部屋から引きずり出す。

 力いっぱい握られながら抗議しつつ問い質すウィットに、グラムは思いつめた顔のまま告げた。


「…………一緒に、寝よう」

「は…………?」

「日も沈んで何騒いでるんだ? 静かにしろ」


 うるささにウィットの隣のジウが廊下に出て来る。

 ウィットは咄嗟にグラムに訴えた。


「仲間はずれは可哀想じゃないか?」

「そうだね!」

「は!? お、おい!? なんで私を引き摺って、おい!?」


 ウィットは逃げられないことを悟ってジウを道連れに選んだのだった。

 そのまま三人は階段前の植物の絵のある部屋に入る。


「…………つまり何か? この刑事さまはお化けが怖くて私たちを部屋に引き摺りこんだと? 馬鹿だろ」

「何を聞いてたんだい!? 歳なのかい、ジウ!? 今日のことをおさらいして、明日の調査に活かすための集まりなんだぞ!」

「などと供述しており…………あ、ごめんごめん。嘘うそ。頼むからその拳仕舞ってくれ」


 ふざけるウィットにグラムが握り締めた拳を持ち上げていた。

 そんな茶番にジウは呆れ、グラムに指を差す。


「ずっと言ってるが、私は書斎の鍵を探すんだ。結局大して屋敷の中探せてないし、夕食の時あの未亡人に庭のことばっかり聞きやがって」

「大事だろ。あの不気味なトーテムポールとか」

「あれちょっと笑ったな。なんでイギリス旅行でトーテムポールなんて買って来たんだか」


 思い出し笑いをするウィット。


 トーテムポールがイギリス土産であるため、庭もイングリッシュガーデン風に変えたのだとプランツ夫人は楽しげに長々と語っていた。


「思ったより古くないのは気づいてたが、納屋と配管は死んだ夫が妻のために散水が楽になるように作ったそうだしな。案外夫婦仲悪くなかったんじゃないか?」

「けど作ってすぐ使えなくなって言ってただろ、ジウ? 結局プランツ氏の話になると怒ったし、プランツ夫人としてはあまりいい思い出じゃないんだ」


 グラムが一人頷くと、ウィットとジウは顔を見合わせて首を振る。


「ま、お化けの怖いお子様にはわからないな。男女の仲は深くて複雑なの」

「表面的なことしか考えられないなんてまだまだな。否定が即ち嫌悪じゃないんだ」

「なんだい? おっさんたちにしかわからない話ならもうどうでもいいよ。ウィット、あのプランツ夫人について知ってること全部話してくれ」


 グラムの投げやりな問いに、ウィットは大袈裟に肩を竦める。


「最初に言ったけど、俺だって夫人とは親しくないの。元からお見合い結婚で知り合ったのは結婚後だし、人見知りで客の対応もしなかったし」

「そう言えばここには以前も来たことあるんだったな。その時にいた使用人はどうしたんだ?」


 メイドのティゼとも初対面として対応したウィットに、ジウが掘り下げる。


「また聞きだけどイギリス旅行後と旦那が死んでから使用人全員解雇したらしい。人見知りの上に他人を拒絶するなんて、それだけショックだったんだろ」

「逆に犯罪に手を染めたから異変に気づいた人を遠ざけたんじゃないかい?」


 疑うグラムにジウが疑問を投げかける。


「逆に探られても痛くないから警察のお前を招き入れたんじゃないのか?」

「だったらコックの子の言い分はどうなるんだい?」

「近くで行方不明か。これ警察は?」


 コックの友人の失踪についてウィットが聞くと、グラムは腕を組んで記憶を引き出す。


「近くの林で獣にやられて死体が出ないって人間が二人か三人くらいいるらしいんだ。でも遺留品が極端に少ないし食い荒らされた死体もない。だからいっそ行方不明事件に関係があるんじゃないかって話が上がってた」

「死体が出てるのは夫だけ。いっそ夫の死体が出てる時点であの妻は容疑者から外していいんじゃないか?」

「なんでだよ? 俺は奥さんが犯人とは思わないけど、身近な相手だからこそ疑うもんじゃないのか?」


 異論を唱えるウィットに、ジウは頬杖をついて応じた。


「もし他の行方不明者も殺していたなら、あの妻は死体も隠し果せる手がある。だったら夫を行方不明のままにして被害者家族のふりしたほうが疑われないだろ。あと遺産関係の面倒な手続きもいらない」

「うーん、遺産としてしか受け取れない財産もあるかもしれないけど。だったら君は誰が犯人だと思うんだい?」

「グラム、答えは知るか、だ。それは私の仕事じゃない。もしここで事件が起こっているならコックかメイドじゃないのか?」


 投げやりな解答にグラムとウィットが同時に口を開いたところで、ジウが素早く片手で止める。

 そのまま口に指を立てると、耳を部屋の外に向けた。


 グラムとウィットは顔を見合わせると、ジウを真似て耳を澄ませる。


「…………聞こえたか?」


 ウィットが聞くとグラムが頷く。


 二人には足音を殺す人の気配が確かに聞き取れた。


「二人いた」

「え?」


 けれどウィットの答えにグラムは想定外だと声を上げる。

 そこでジウは頷いてウィットに賛同した。


「どうも片方は明らかにこっちを探ってたな。敵意と言ってもいいくらい不穏な気配がした」

「え、え?」


 気づけなかったグラムが困惑してもウィットとジウは気にしない。


「俺たちがここにいること考えると、下にいた三人の誰かだろうけど」

「まぁ、足音の軽さからして女は確定だ。靴を見ておけば良かったな。どっちにしても片方は踵鳴らすくらいには素人だ」

「うーん、音に距離があった気がするんだよね。たぶん二人別々に動いてたんじゃないか?」


 置いてきぼりのグラムは疑いの目を向ける。


「君たち普段何してるんだよ。ちょっとその判断の速さは異常じゃないかい?」

「拗ねて妙なこと勘ぐるな。経験値が違うんだよ」


 ジウは拗ねるグラムを鼻で笑う。


「まだ外から侵入した可能性もあるんじゃないかい? だいたい何しに来たって言うんだい」

「艶っぽいお誘いってわけでもなさそうだったけどね。それに外の人間ならいきなり二階は狙わないだろ。逃げ場ないし」

「うーん、プランツ夫人だったら寝室行くだろうし、メイドとコックかな?」


 グラムが真面目に考え始めると、ジウが意地悪く笑う。


「あぁ、外から来て足音が軽い可能性一つあったな」

「なんだい?」

「お、ば、け」


 言った瞬間グラムは枕を投げつける。

 予期していたジウは余裕を持って避けた。


「おお、お、お化けがなんで二階に来るんだい!?」

「そりゃ、書斎に何か心残りのある旦那が…………ぶ!?」


 ウィットがジウの悪ふざけに乗ったところ、今度は当てられる。

 ジウは投げられた枕二つを拾って続けた。


「まぁ、なくはないか。ウィットの知り合いが早朝突然帰ると言い出したのも、もしかしたら知り合いの幽霊見て、なんてな」

「そう言えば幽霊や悪魔は臭いの強いものが嫌いらしいね。吸血鬼にニンニクとか。ここ花だらけなの、もしかしたら?」


 枕を当てられたウィットも意趣返しで適当なことを言う。

 悪意ある笑顔に本気でないとわかっていても、グラムは焦った。


「意地が悪すぎる! 公務執行妨害かい!?」

「はいはい。冗談の通じないガキはさっさと寝ろ。思ったより話し込んでたな。もうこんな時間だ」


 時刻は十二時に近く、ジウは枕を投げ返して部屋を出ようとした。


 するとグラムが飛びかかる。

 避けようとしたジウだが、枕を受けて足元にいたウィットにつまずいてしまった。

 そして体勢を崩してあえなくグラムに捕まる。


「ぐえぇ!?」

「おい!? ウィットが潰れたぞ!」

「部屋には帰さないんだからな!」

「万力かこいつは!?」


 締め上げるグラムにジウは悲鳴を上げる。

 体の上での攻防にウィットは虫の息だ。


 それでもなお縋る勢いで力を緩めないグラムは意地悪をされたこともあり手を離す気にはならなかった。


「一緒に寝てくれないと放さない! けど俺より先に寝るのは許さないー!」

「ガキか!? 俺はお守りに来たんじゃないんだぞ!?」

「も、ホント、頼むから、退いて…………」


 ウィットが這いずって逃げようとするのを、グラムは体全体を使って阻む。

 さらにい圧がかかることで抵抗をやめたウィットの上で、ジウはなおも抗議を続けた。


 そして騒ぐこと一時間。

 植物の絵が描かれた客室は静かになる。

 若者が体力に物を言わせて長期戦を戦い抜き、男三人は同じ部屋で寝ることになったのだった。


毎週土曜日更新




*ダイス目抜粋

1)グラムの襲撃

  ウィット:幸運に頼る45(40)→ジウが出て来る


2)迫る気配

  グラム:聞き耳を立てる70(20)成功

  ウィット:聞き耳を立てる70(02)大成功

  ジウ:聞き耳を立てる25(06)大成功


3)グラムが枕を投げる

  ウィット:素早く身をかわす60(82)失敗

  ジウ:素早く身をかわす75(57)成功

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