第34話「コウモリ」
「あぁ、もう!数が多すぎる!」
ヤチヨちゃんが単独で魔物の群れを食い止めているものの、状況は劣勢で、徐々に押し込まれている
それでもまだ持ちこたえられているのは、影分身の忍術のお蔭だろう。
同時に出せる限界ギリギリの人数まで分身を出して、多くの魔物を屠っていた。
「私も、早く加勢したいところですが…」
「術式の完成にはまだかかりそうね…せめて、魔術に慣れたメンバーが一人いればよかったのだけど」
額から流れる汗を左手で拭いながらぼやくセラさん。
魔術は私も基礎理論が頭に入っているだけで、どちらかと言えば魔法の方が得意な方だ。
その言葉に申し訳ない気持ちになる。
「返す言葉もないですね…」
私を落ち込ませるつもりはなかったのだと思う。彼女は慌てて言葉を続けた。
「でも、ようやく半分なの。ゴールは見えてるし、頑張りましょう」
「はい!」
私が術式の続きを書こうとすると、ヤチヨちゃんの小さな悲鳴が聞こえた。
振り向くと、ボン!という音と、黒い煙と共にヤチヨちゃんの影分身が消えるのが見えた。
「しまった…!」
印を結び、新たな影分身を呼び出そうとするも、すかさず魔物達がなだれ込んでくる。
私が咄嗟に腰のホルスターへ手を伸ばした、その時。
「冒険者のみなさん!お願いします!!」
「うぉぉぉぉぉ!!!」
「!?」
「ちょっ…何!?この人達は誰!?」
戦士や魔法使い、弓使い等、冒険者であろう人々が、そこに割って入った。
「みなさん、ご無事ですか!?」
ギルド職員の制服を着た女性だ。
尖った耳、ライトブラウンのショートの髪の女性。
「メリダさん?なぜここに…?」
「監視用ドローンや結界の破壊、魔物達の侵入など、予期せぬ事態が発生したので、助けに来たんです。」
メリダさんは、仰向けになって倒れたままのメルちゃんを見る。
「アルメリアさんは大丈夫なのですか?未完成の術式までありますし…何が何だか」
「ひとまず命に別状はありません、気を失っているだけです…ただ、今作っっている術式を邪魔されると、こちらとしても非常に困る状態になるのです」
「詳しい事情は後で説明するわ、ちょっと時間が無くて…そこにいる堕天使も敵じゃないから、くれぐれも攻撃しないで頂戴ね?」
その目に僅かに警戒の色を浮かべながらも、ため息を吐きながらメリダさんは頷いた。
「…まだ飲みこめていない部分もありますが、分かりました。こちらは冒険者の方々に任せて、ヤチヨさんも休んでください。魔力も生命力も、限界でしょう。」
「…そうね、悪いけどそうさせてもらうわ。まだ出番があるかもしれないしね」
ヤチヨちゃんはそう言って、私たちのいる後方にまで下がった。
私達を取り囲むように、円形になって冒険者たちが魔物の群れに対処している。
「急ぎましょう。早くしないと彼が危険だわ」
手を動かしながら、セラさんが言った。
私は頷いて、再び術式を組み始めた。
ブラックカイト・スマッシャ―で吹っ飛ばされている吸血鬼を追う事10分程。
「うーん、そろそろいいかな、っと」
地面を巻き上げて砂埃の壁を形成していた暴風が、その一言が聞こえるのと同時に打ち消された。
一瞬、なぜ打ち消されたのかが分からなかったが、吸血鬼の背中に生えた、蝙蝠の様な黒くて大きな翼を羽ばたかせ、あの風を打ち消したのだと察した。
「あの女を殺すって任務も大事だが、俺は強い奴を叩き潰すのも好きでなぁ…これだけ離れれば、お前も本気で戦えるだろ?」
「ご期待には沿えないと思うよ。俺、そんなに強くないし」
今の発言からなんとなく理解したけど、こいつは戦うのが好きなんじゃなくて、殺し合いの果てにある殺しを楽しむタイプなんだろう。
前に戦ったゴブリンたちのリーダー、フーザとは違う。
というか、心気で感じ取れている、奴から俺に向けられる感情が、殺意と興味しか感じられない。
「俺はヴィレ。さっきも言った通り、吸血鬼だ。魔王軍特務部隊のNo.68に位置している」
魔王軍にも特務部隊とかあるんだな。
ナンバーってのはよく分からんが…68番目に強いという事だろうか?
「そのナンバーってのは、強さの序列的な奴か?」
多くない?680て。
「いや、単純に所属した順番でナンバーが与えられるんだ。強さの序列で言えば、少なくとも部隊の中じゃあ、俺は真ん中くらいかな」
この数字でも真ん中くらいだよ、という言葉を付け加えてくるが、余計な情報である。
こいつより強い奴がそんなにいるのか…特務部隊に限らず言えばもっといるんだろな。
「勇者候補、ソウマ・カスガイだ。俺は特にナンバーとかは無いよ。」
一応、空気を読んでちゃんと名乗っておいた。
ヴィレは面白かったのか、ブハッと噴き出した後、黒い剣を構える。
「ご丁寧にどうも。そんじゃ、早速やるか?」
俺は奴が持っている黒い剣を見る。
刀身と同じ色のオーラを放っている、見るからに魔剣っぽい剣。
ハッキリ言って滅茶苦茶強そうだった。
俺も愛剣を握り、応戦の構えを見せて警戒を強める。
奴の禍々しい魔力に当てられたのか、さっきから冷や汗が止まらない。
が、恐れてばかりでは仲間が死ぬので、俺は虚勢を張った。
「できればそのまま何もせず帰って欲しいんだけどな」
「力の差が分かってて、それでも逃げないところがますます面白れぇ」
ビビってるのばれてる~!
こいつから感じる力、今までにあったどの敵よりもヤバい。
「どのみち任務だ。帰るって選択肢は無ぇが、見どころのある勇者候補は久しぶりでな…だから」
奴が背中の翼を大きく広げる。
殺意が膨れ上がり、爆発する。
「…俺を楽しませてくれよ!!」
どす黒い力を纏った凶刃が、一瞬で眼前まで迫っていた。
「ぐっ!?」
咄嗟に剣で受け、後ろに飛び退き初撃を回避する。
背後に殺意の塊が瞬間移動したのを察知して、振り返らず、俺は背中に風属性と闇属性のマナをチャージした。
「ナイト・ウィング…!!」
黒い夜空のような色の翼が俺の背中に生えると同時に、それを羽ばたかせ、勢いよく跳び上がった。
エアライド改Type-2、ナイト・ウィング
咄嗟に飛行のイメージを組み上げたけど、上手くいって良かった。
ストーム・ルーラーはブラックカイト・スマッシャ―を使うと解除されて跳べなくなる。
ナイト・ウィングはその弱点を埋めるために習得した飛翔の魔法だ。
「へぇ!魔法で出来た翼かよ、中々のイメージ力を持ってやがるな、お前」
「…」
奴が余裕綽々なのに反して、こちらはもう虚勢を張る余裕もなかった。
あと一瞬でも感知が遅れていたら、首と胴体がサヨナラしていたから。
「お前の魔力が尽きるまで、空中戦も出来るってわけだ!」
ヴィレの蝙蝠の様な翼が力強く空を叩くと、その力の強さに、奴の足元の地面が抉れた。
「翼の羽ばたきで地面抉るとか、マジで化け物だな…!!」
「そりゃそうだ!俺は吸血鬼だからな!化け物に決まってる!!」
「化け物が常識的な返しをするんじゃねぇよ…!!」
一度剣を交える度、腕が痺れていくのが分かる。
竜化の力を少し解放したヴァルガの腕力と同じくらいか。
何にせよ、単純な筋力においても圧倒的に負けているのは確かだ。
こちらは鍔迫り合いにすら持ち込めず、剣を振るわれるだけで弾き飛ばされる始末だ。
唯一の取り柄と言っても差し支えない、感知技術のお蔭でかろうじて戦えている。
「それなら!」
今度は俺から剣で斬りかかるも、あえなく弾かれ、がら空きになった胴体に蹴りを入れられる。
そのまま衝撃に任せて後方に大きく吹き飛ぶと、奴が追撃を仕掛けんとばかりに、俺の真上に現れた。
俺は右手の魔剣を放り投げ、懐からあるものを取り出し、それに火属性のマナで着火して放り投げる。
ジジジジ…という小さな音を立てるそれは、俺と奴の間に差し込まれる形となった。
「…あ?」
俺が腕輪から盾を呼び出して防御の姿勢を取った、その時。
火をつけた物体、ダイナマイトによる爆発が、俺とヴィレを襲った。
「ぶあぁぁ!!」
流石に爆発によるダメージは通るのか、大きな火傷を負ったヴィレが吹き飛ばされるのが分かった。
ちなみに、俺は防御の姿勢を取っていたので、多少の火傷で済んだ。
風属性のマナをチャージしながら盾をチャクラムに変形させ、それを投擲する。
「やるじゃねぇか!だが、この程度のダメージなら大したことねぇなぁ!!」
見れば、奴の身体に刻まれていた酷い火傷が、跡すら残らず治癒していた。
「吸血鬼の再生能力か!?」
「その通り!だが傷を与えたことは褒めてやるよ!」
迫るチャクラムを難なく躱して、再びこちらに急接近してくる。
両脚に風属性と闇属性のマナを即座にチャージして、ストーム・ルーラーを装着した。
吸血鬼の倒し方を頭の中で反芻する。
倒し方としては大きく2つ。
1つは、光属性の魔法等、聖なる力で浄化する事。
もう一つは、有り余る負の生命力が尽きるまで、ダメージを与え続けることだ。
俺では前者の方法は無理なので、後者のやり方で倒す必要がある。
「非力な俺でも、お前に大きなダメージを与える方法が、無いわけでもないんだぜ…!」
「ハッハ―!!面白れぇ、そこまで言うなら見せてみな!!」
「言ったな?喰らっても死ぬなよ!?」
「死なねぇよ!俺は吸血鬼だ!!」
「上等!!まずは一発!」
急接近して一気に懐に潜り込み、鳩尾に一発右足で蹴りを入れると、右足側のストーム・ルーラーが解除され、翼の推進力で距離を取る。
「入った、次!」
「蹴りの威力は大したことねぇな?」
何か勝手に勘違いしてくれているが、この技はそもそも蹴り技ではない。
俺は心気の感知能力を全開にして、奴の意識の薄いポイントを探ると素早く距離を詰めて、空いている左手側に魔力を集中させる。
零距離と呼べる程に近くまで接近し、俺は両目を閉じた。
左手に集中した魔力で、光属性のマナをチャージする。
「光よ!」
「ぐぁっ!?」
背中のナイト・ウィングの羽ばたきで発生する推進力を利用して背後を取り、今度は左足で蹴りをくれてやった。
右足同様、左足側のストーム・ルーラーも解除され、再び距離を取る。
目眩ましから回復したヴィレが、今度は魔剣に魔力を集中させてるのが分かった。
何か仕掛けてくる!
「もう遅いぜ!!」
奴が剣を振るうと、黒いマナの塊とも呼ぶべきか、黒い三日月の様な何かが放たれたのが分かった。
分かったが、それだけだった。
回避行動を取ったものの、俺の左肘から先が、先程の黒い三日月状の斬撃によって斬り飛ばされたのだ。
「ぐ…!?」
回避、しきれなかった…!!
しかし、苦しんでいる場合ではない。
更なる黒い斬撃が複数放つ為、奴の黒い剣に魔力が再度、充填された。
闇属性のマナを身体の内にチャージし、それを元にして体感時間を引き延ばす魔法を発動。
ナイト・ウィングを振るわせて、俺は飛び出した。
「今度こそ避けてみせろ、勇者候補!」
俺は愛剣をイメージし、それを心から欲した。
手元に来いと、そう強く念じると、暖かな青い閃光と共に俺の右手に収まる。
即座に自身の魔力を刀身に流し込み、今度はより薄く、鋭い刃を頭の中にイメージすると、眼前に迫る漆黒の三日月達を一刀両断した。
「何…!?」
奴との距離はあと2メートル程か。
背中の両翼による推進力を全開にしたまま、闇属性のマナを纏った俺の拳が、奴の腹に突き刺さった。
「ブラックカイト…インパクト!!」
俺の右拳から、風属性のマナが奴の身体に流れ込む。
右足、左足で放った蹴りによって奴の身体に入った2つのマナの塊を、流れ込んだ闇属性・重力魔法による引力で引き合わせて衝突させた。
衝突したそれは、重力魔法の圧縮により一塊の風のマナとなり、俺のイメージに伴って、無数の小さな風刃に形を変える。
俺は奴の腹部にめり込んだままの拳を抜くと、重力魔法が解除され、身体の内側から、無数の風の刃が奴の臓器と骨肉を切り刻む。
「ぶっ…」
奴の両腕、両足は疎か、胴体や頭部等、残らずみじん切りにされていた。
この技は、対ギンジロウさん用に用意していた技…だったんだけど、修行中、討伐依頼を受けた魔物相手に試したら、あまりにも必殺の威力だったので、封印していた技だ。
かなりの魔力を使う事、何よりその威力の高さが原因で、もう使う事はないかな…なんて思っていたのだけど、仲間を殺そうとする、それも吸血鬼の様な存在が相手であれば、使っても問題ないだろう。
5分程その場で警戒していると、黒い霧の様な者が、少しづつ人の形を成していく。
ヴィレの身体が再生し始めたのだ。
だが、先程と違い瞬時に回復は出来ていない所を見ると、確実に奴の負の生命力は削れた実感があった。
さすがの吸血鬼も、全身を粉微塵になるまで切り裂かれたら、再生に時間がかかるらしい。
再生の終わった頭部が地面に転がっている。
「ハッ…すげぇ威力だな、俺が不死じゃなかったら、これでお前の勝ちだったろうぜ」
「生首のまま喋るなよ、気持ち悪いな…」
俺はその喋る生首に魔剣を突き立て、もう一度殺す。
骨と肉の感触を味わいながら魔剣を引き抜くと、今度はすぐに再生した。
既に身体が再生し始めているので、即座に距離を取って警戒する。
「ふぅ、やっと再生が終わったか…さて、今度は俺の番だな」
ゆっくりと立ち上がる奴の身体が、黒い霧に変化していく。
「吸血鬼の力をもう一つ見せてやるよ」
「!!」
黒い霧が、奴の身体の4倍程大きな形に変化していく。
全身が漆黒の身体…鋭い鈎爪を生やした大きな翼と、同様に鋭い爪を持つ両足。
鮮血のような真っ赤な瞳に、大きな耳。キィキィという耳障りな鳴き声。
「デカい…コウモリ?」
数秒、警戒を怠らずにそのコウモリを観察すると、奴の口がガパッと大きく開いた。
嫌な予感を感じた時にはもう遅かった。
黒板を爪で引っ掻くと鳴る、あの嫌な音…それを数百倍にしたような破壊的な超音波が、周囲に木霊する。
「うあぁ!?」
ビリビリと空気が震えているのが分かった。
俺は魔剣を反射的に腕輪の異空間に収納し、両手で耳を塞いでしまった。
集中力が途切れ、自身にかけていた肉体強化等の魔法が解除されるが、それどころではない。
10秒ほどの時間のはずだが、どれだけ時間が過ぎたのかは分からないが、ぷつりとその音が聞こえなくなった。
両手を離すと、俺の左右両方の掌には、真っ赤な血が付着していた。
「え…」
ハッとした。
周囲に流れる風の音はおろか、今しがた発した自分の声すら聞き取れないことに今更気づく。
鼓膜の破れた音すら感じられない程に強烈な超音波によって、俺の鼓膜が破れ、耳が完全に封じられたという事実に戦慄するも、次なる攻撃に備える。
「遅ぇな」
体感時間を引き延ばす魔法も解除されている為に当然反応出来ず、巨大なコウモリが俺の胴体を切り裂いた。
この出血量はヤバいなと思ったのも束の間、今度は俺の首の左側を左肩ごと、噛み千切って抉る。
右手に握った青い魔剣が地面にガランと音を立てて落下するのと同時に、俺の意識は途絶えた。
「なんだ、これで終わりか…って、もう聞こえちゃいねぇか?」
これでやっとあの女を殺しに行けるか、と耳元で呟く奴の声すら、もう俺の耳には届かなかった。
「…あれ?」
気が付けば、私は知らない街の中にいた。
さっきまで、私は戦っていたはずなのだけど…そうだ、吸血鬼が現れて、負の魔力に耐えきれなかったんだ。だから、意識を失った。
「そこまではいいとしても、ここはどこなの…?」
自分の記憶を辿りながら辺りを見回してみるが、そこは自身の記憶にない街の風景だった。
「やっと目が覚めた?」
「!」
背後から聞こえた声に、私は驚き、振り向いた。
杖を構えようとしたが、私の右手が空しく空を切った。
今は何の武器も持っていない事を悟り、冷や汗が流れる。
「敵じゃないから安心して、私よ」
「ファルズフ様!?」
魔法候補ファルズフ。
私を幼い頃から教会に閉じ込め、育ててきた人。
ソウマ様に誘われた時は外の世界への好奇心と、彼への興味によって彼女の元を離れてしまった。
私は彼女が魔王候補と聞いて、「自分は悪い人に捕まっていた」という認識だった事から、敵だと認識していたけれど…こうして改めて対面すると、魔王候補という感じは一切しなかった。
「ここはあなたの母親、が過ごした街…その記憶の中の世界」
「き、記憶の世界ですか?いきなりそんな事を言われても…」
「時間が無いから手短に状況を伝えるわ」
そう言った彼女から聞いた話は、まとめると4つ。
一つ目は、私が魔王軍の実験によって生まれた、人口女神の成功例である事。
二つ目は、私の中にある未完成の”女神の因子”を完成させる為に、ファルズフ様の中にある”天の遣いの因子”が必要な事。
三つ目は、その因子の私への譲渡と、譲渡した因子と未完成の”女神の因子”との合体を、まさに今進めている所という事。
四つ目は、この記憶の中の世界は、私が”天の遣いの因子”を譲渡される事を条件として呼び覚まされる、私のお母さんの記憶の世界、という事。
「そ、そうなのですか…!?というかあなたはなぜ、その記憶の世界の中に?」
「これはあなたのお母さんとの約束なのよ。」
彼女は頭を抱えながら、話を続ける。
「本当なら、あなたが成人した時に因子の譲渡は行う予定だったのだけど…ソウマがあなたを連れ出したせいで、状況が大きく変わってね。4年早くなってしまったけど、あなたに真実を伝える為に、あなたの精神に接続して。この記憶の世界について説明しに来たの。」
「な、なるほど…?」
正直、突然の展開過ぎてついていけない部分がほとんどだった。
けれど、14年も生きてきた割には、私の記憶には欠落が多すぎる。
それに、自分自身と光属性の相性の良さも、才能と呼ぶには過ぎた力だと感じる部分もあるのだ。
だからなのか、彼女の言葉には納得できる部分も、自分の中にあった。
ファルズフ様は私の右横をすり抜けて、奥にあった路地裏に向かって歩いていく。
「こっちよ、ついてきて。あなたのお母さんに会わせてあげる」
「…!」
私はそのまま、彼女の後を追った。




