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蒼の勇者と代行戦争  作者: 夜光猫
第1章 新米冒険者 編
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第32話「戦う鍛冶師」


「全員行ったな…」

ギンジロウやソウマが離れた事を確認して、俺は無造作に背中の大剣を抜いた。

眼前で優雅に眼鏡の位置を修正する堕天使に、そのまま剣先を向ける。

「お前の相手は俺がさせてもらうぜ」

奴は心底面倒臭そうな表情のまま、大きな溜め息を吐いた。

「ふむ…困りましたね。こちらも急いているというのに」

目の前の男は4本の光の槍を召喚する。

その槍は並んで男の周囲をぐるりと1周するとピタリと静止し、一斉に穂先をこちらに向けた。

4本全てが自在に操れるとかいう、面倒な仕様の術だろう。

パワーはあるが手数に劣る俺には、対処が厳しいものだ。

ましてや俺の得物は大剣。威力こそあれど、取り回しがいいとは言えない。

やれやれこいつはどうしたものかと考えていると、

「手早く殺して、先に進みましょうか」

なんて吐き捨てて、こちらに向かってきた。

あの野郎、さては俺を見下してるな?

ちょっとムカつくので、軽く挑発してみる。

「俺の炎で焼かれておいて、やせ我慢もいいところだぜ。本当は結構しんどいんだろ?」

「確かに火力は大したものです。流石は竜人族…自然治癒では跡が残るでしょう。」

奴はこちらに向かう速度を落とさず、左手に集められた光属性のマナを胸に押し当てると、無残な火傷が一瞬で元の皮膚に戻っていた。

「…べ、便利なもんだな」

ただ冷静に傷を治された。

このままじゃ、煽った意味がないじゃないか…まぁ、こんな低レベルな挑発、乗らないよな。

「堕天使の光の力を以てすれば、こんな傷、無に等しいのですよ」

「それなら、治す気も失せるほどに焼き尽くしてやるよ」

竜の翼を広げ、真っ直ぐ空中の堕天使に向かって、大剣を振るう。

真上から振り下ろされた俺の大剣を、直前までこっちを向いていた左右の槍が交差して、ガッチリと受け止めた。

残る2本の槍が俺の身体を貫かんと迫ってくるが、一本は後ろに飛び退いて躱し、もう一本は側面へ回し蹴りを入れて、遠くへ蹴り飛ばす。

しかし、地面へ落下していくその光の槍は消失した様にその姿を消し、奴の周囲に再び漂い始めた。

「私を焼き尽くすのではなかったのですか?」

「馬鹿言え、いきなり目の前で魔法なんか使えるか」

そんな事したら隙が出来るし、そもそもそんな状態で放った魔法なんか当たらない。

「それに、俺がちんたらやってたら、お前はその隙をついて仲間の所に向かうだろ?」

「ふむ…確かに」

こいつ、意外と会話には付き合ってくれるんだな。

…なんて、呑気な感想を抱いている場合ではなかった。

「それでは、これならどうでしょうか」

奴は緩やかに右手を持ち上げ、その掌をこちらに向ける。

カッ!!!という音を聞いた直後、俺の両目は光に焼かれた。

「うぐっ、眩しっ…!?」

思わず剣を落とし、左腕で両目を塞いでしまった。

シンプルな閃光による目眩ましか。

攻撃が来る事を警戒して、咄嗟の判断で竜鱗を出現させて備えるも、何も来なかった。

徐々に視界も元に戻り、散らしてしまった気も本来の集中力を取り戻していく。

俺の目の前から奴は姿を消していた。

「俺のバカ野郎!!」

気配が離れていくのを感じると、俺は即座に竜の翼を展開する。

あの天使は真っ直ぐにソウマと元天使の女を追っていた。

直線的な動きなので、俺の本気の直線飛行であれば、まだ追いつく距離だ。

「逃がすかよ、陰険天堕天使野郎!!」

「もう追いついたのですか、流石は竜人族、単純な速度は我々以上か。」

「堕天使族も大したことねぇなぁ、竜化を極めてねぇ俺に追いつかれるなんてよ!!」

右手の大剣に炎を纏わせ、力に任せて振り下ろす。

「これで…どうだ!」

「甘いですね」

光の槍が2本交差して、俺の大剣を受け止めた。

両腕で振り下ろした大剣を手放し、右拳に炎属性のマナを即座にチャージする。

「オラァ!!」

竜化した右腕に爆炎を纏わせ、渾身の力でぶん殴った。

バキィン!!と大きな破砕音と共に、2本の槍が砕け散る。

「!」

槍が砕けた時、消滅の余波で強い閃光を放った、その一瞬の隙をついて、奴は俺の後ろを取る事に成功する。

奴もそれには気づいている。

残る光の槍がこちらを迎撃しようとしているが、こちらの攻撃の方が速い!

「遅ぇ!!」

俺は翼を羽ばたかせ、右腕を元に戻し、代わりに両足を竜化させる。

そして奴はこちらに背中を見せたままだ。

俺は空中で突進し、竜の筋力を限界まで引き出して蹴り飛ばした。

「くはぁっ…」

奴の背骨から、鳴ってはいけない音が鳴っていた。

そのまま、落下していく堕天使をただ見下ろす。

「竜人のフィジカルを侮ったな」

奴の首筋に大剣の刃を押し当てる。

「なるほど、強いですね…温存したのは悪手でしたか」

「何だと?」

「光よっ」

瞬時に光属性のマナを生成したところで、閃光に目を焼かれない様に目を閉じる。

心気の気配感知とと魔力感知を瞬時に展開すると、光属性のマナの気配が増えるのを感じた。

使われたのは目眩ましじゃないのか!?

困惑するのも一瞬の事で、ザシュッ、という音と背中の痛みに、俺は表情を歪ませた。

その傷は思いの外深く、痛みを感じても声が出なかった。

背中の傷を見ることは出来ないが、背後から空中に飛んでいく何かを目で追った。

それは装飾の一切ない、光の剣だった。

一切の表情を浮かべる事無く頭上に佇む堕天使が、ぼそりと呟いた。

「私も甘かった。あなたを倒さない事には、どうやら私の目的は達成できない様ですね」

奴の右隣で、俺を斬った光の剣がピタリと静止した。

そして無造作に左手が振るわれるのと同時に、新たに光の剣が9本生み出される。

「あなたを私にとっての脅威を認め、この場で殺します。」

恐らくあの剣の一本一本が、先程の槍よりも小回りが利き、速度も速いのだろう。

「こいつは…面白くなってきたじゃねぇか」

乾いた唇をペロッと一舐めすると、汗の味がした。

俺は眼前の堕天使に対抗するように、炎を纏わせた剣の切っ先を奴に向けて宣言する。

「ドラゴンなめんなよ、テメェは俺がぶっ倒す」

勝負は一瞬。

奴の剣をある程度は捌けるだろうが、俺はソウマと違い、決して技巧派ではない。

ダメージ上等で立ち向かうしかないだろう。

だが俺は竜人族だ、戦い方自体は脳筋でいいだろう。

圧倒的なパワーで圧倒するのが、ドラゴンの戦いだからだ。

しかし、俺は竜人族としては落ちこぼれの部類だ。

そんな俺に出来るだろうか?完全な竜化を扱えない、この俺に。

畜生、こんな時、ソウマならどうする?

この数日間の、仲間との訓練を思い出す。

大剣を構えたまま、僅かな時間目を閉じて腹を決める。

「…行くぜ」

両手で中段に構えていた剣を右手のみで握り、左手にマナをチャージする。

背中の翼で空を叩き、真っ直ぐに堕天使に向かっていく。

光の剣が一斉にこちらへ殺到するが、ギリギリまでそれを引き付け、剣を振るった。

「おぉぉぉぉあぁぁっ!!」

ただの回転切りだが、光の剣を8本弾いた。

僅かにタイミングをずらして迫ってきた光の剣は肩で受け、背中側まで貫かれた。

「ぐっ、おぉぉぉぉぉ!!!」

歯を食いしばって痛みに耐えながら、左手にチャージした風属性のマナを解放した。

後ろへ向けていた左手の掌から、爆発的な風が俺の背中を押し、前方へ吹き飛ばした。

その先には、いつの間にか光の大槍を構えていた堕天使が、今まさに新たな攻撃を仕掛けようとしていた。

これまで仏頂面だった奴の口角がほんの僅かに上がった

「私の勝ちです!」

「いいや!俺の勝ちだ!!」

一分の隙も無く放たれた大槍の一撃は、これまでの俺なら間違いなく喰らっていたはずだ。

直観が働いたのか、本来は食らうはずだったその一撃を、空いた左腕で捌くことができた。

その横になったままの姿勢で、大槍の上を転がるように懐に入る。

俺は両腕で大剣を握り、無我夢中でそれを振るった。

ぼうぼう、ぱちぱちという音が耳に届く中、奴の左腕が宙を舞う。

右腕だけでは支えきれなくなった大槍は地面に落下しながら消えていった。

肘の下の付け根から燃え盛る、斬り飛ばされた奴の腕が燃え尽きるのと同じタイミングで、堕天使は地に落ちる。

俺はそれを見下ろして、ただ肩で息をしていた。

「ほらな?…俺の勝ちって、言っただろ?」


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