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蒼の勇者と代行戦争  作者: 夜光猫
第1章 新米冒険者 編
28/39

第24話「対決、チーム獣人①」

ユークリッドに戻ってきてから6日目の朝。

その後、メルの回復魔法の効果や、セリアやレミの協力もあって、俺は5日程で今回の旅の傷が癒えた。

4人で獣人チームの対策について話し合い、それぞれ行動を開始した。

結論、俺達4人が数日修行したところで、本気のギンジロウには勝てないだろうという答えに至ったので、俺は1人図書館へ向かう。

目的は、獣人という種族について知る為だ。

彼らの持つ奥の手を知らずして、今回の勝利は無いだろう。

そうだ、図書館に寄る前にギルドに寄って、今回の自分の成長を確認してから調べものをしようか。

「あら…カスガイさん?」

「ん?」

後ろから声を掛けられたので、ゆっくり後ろを振り向くと、声の主はメリダさんだった。

彼女も丁度ギルドにやってきた所らしい。

「なんか久しぶりですね…おはようございます、メリダさん」

「おはようございます。まずは今回の遠征、お疲れさまでした…怪我の方はもう大丈夫なんですか?」

耳にかかった髪をそっとかき上げながら、そんな事を言ってくれるメリダさん。

怪我の事は、メル辺りからでも聞いたんだろう。

怪我は完治しているので、安心させる様に言った。

「メルのお蔭で、怪我の方は完治しました…まぁ、メルだけじゃないか。」

「と言いますと…?」

「メルが報告に行った時に効いたかもしれないですが、新しく仲間になった錬金術師の子が、自然治癒力を高める薬を作ってくれたのですが…それがかなりの効果があったみたいなんです」

そう、セリアは俺の想像を超えて博識だった。

彼女は持ち前の薬学の知識で、市場に出回っている物よりも高い効果を持つ飲み薬を作ってくれたのだ。

痛み止めの効果と自然治癒力を高める効能があり強力で、朝と夜の2回、食後に飲む。

…何か胃に入れてから飲む辺り、日本の飲み薬と変わらないのは驚きだった。

「なるほど、そうだったんですね…でも、これで当初の目的は達成されたようで、良かったです」

「そうですね、俺とメルを含めて4人になりました」

メルが1人目、セリアが2人目、レミが3人目だ。

もう少し、人材にバリエーションが欲しいところだが…まずは4人目の確保だろう。

「今、4人目に声を掛けているんですけど…どうやら実力を認めてもらわないといけないみたいで、ここから頑張りどころって感じですね」

「そうですか、仲間集めも順調みたいで何よりです。このまま人数が増えれば、ユニオンを組むことも出来るかもしれませんね」

おっと、知らない単語が出てきましたね。

「ユニオン?」

「はい、ユニオンとは様々な人材が集まって出来た団体で、冒険者ギルドとはまた違った組織の事です。」

そんなものがあるのか。

「まずユニオンを組むには、冒険者ギルドから認められ、優れた実績と実力を持つ冒険者が、ユニオンの代表者…ユニオンリーダーとなる許可を得る事が必要です。」

「なるほど…条件はそれだけですか?」

「いえ、ここまでですとユニオンを作る許可を得た状態でしかありません。その後ユニオンを組織する為には、同様に優れたメンバーを10人以上集め、活動拠点となる場所を確保した上で、冒険者ギルドに必要書類を申請する事でギルドの審査が入り、問題が無ければ正式にユニオンとして旗揚げする…という流れになりますね」

「ふむ…ユニオンか」

確かに、いつか自分のユニオンを持つのも悪くなさそうだな。

目標の1つとして頭に入れておこう。

「色々教えてくれてありがとうございます。とりあえず、今日は今の自分の能力を把握したくて、ステータスの更新に来たので、そっち済ませちゃってもいいですか?」

「あっ、そうだったのですね、失礼しました…ご案内します」


自身の能力が数値化された冒険者カードを更新し、その情報を確認する。


NAME:鎹 蒼真

性別:M 年齢:15

レベル:1

筋力:324→368 体力:412→443 魔力:268→314 精神力:646→727 敏捷:487→546 運:219→240


なるほどな、これで、今の自分の数値的な実力は把握できた。

「…順調に強くなっている様で、安心しました」

俺の数値を見たメリダさんは、今回の更新結果を資料にまとめていく。

「思ったよりも魔力が上がっていますね」

「あ~、魔法たくさん使ったからですかね」

「カスガイさんはレベルが1のままなので、ステータスが上がりやすいんでしょうね…基本的には強くなればなる程、能力は上がりにくくなりますから」

「それを考えたら、俺の授かった天恵ってやっぱり大器晩成型なんだな…」

強くなる前に死んだら元も子もないだろうに、何を考えてこんな能力作ったんだ。

「カスガイさん」

「はい?」

「ご報告にありました、魔王候補の件です。」

「あぁ…毒島愚の件ですね」

「えぇ、カスガイさんの報告を元に、賞金首として指名手配される事となりそうです。今、ギルド内部で準備を進めています」

「!」

俺が療養中、メル達がギルドに報告に行った時に、彼の事も話したらしい。

魔王候補は例外なく討伐対象になるらしく、例に漏れず指名手配されることとなった様だ。

「あの、メリダさん。その魔法候補、毒島の件なんですけど」

「なんでしょう?」

「目撃情報が入ったら、俺に連絡くれませんか」

「…ふむ、なぜでしょうか?」

俺は、奴がこの世界にやってきたのは自分の所為であることを伝えた。

奴が通り魔として人を殺そうとしたところを、自分が相打ちになる形で殺したのだと。

「なるほど、そんな因縁があったわけですね…分かりました。情報は私の方でも集めてみますので、何かあればご連絡しますよ」

「すみません、ありがとうございます」

「いえ…ですが、今の話はあまり他言しない方が良いかもしれませんね」

「え…?」

メリダさんの言葉の意味が理解できず、頭に疑問符が浮かぶ。

「魔王候補はこの世界に悪意と被害をばら撒く存在…ですので、そんな魔王候補をこの世界に呼んでしまったあなたを嫌悪する方も現れるかもしれません」

まぁ可能性の話ですが、と、そう締めくくる。

確かに、そう取られても文句は言えないかもしれないが…仲間に危険が及ぶ可能性も出てくるだろうな。

「…分かりました。この事は、身内以外には話さない様にします」

「そうしてください…ところでカスガイさん、この後のご予定は?」

「えっと、実は図書館に用事があって…」

「ですが、図書館が開くまではあと30分程ありますね…」

メリダさんは部屋の時計を見て、少し考えてこう続けた。

「では、少し早いですが、ギルド職員の顕現で開けてしまいましょうか。見回りという名目があれば、誰も文句は言わないですよ」

なんて話の分かる人なのだろうか。

「助かります」

「構いませんよ、このくらい。では、鍵を取ってきますね」

鍵を取ってきたメリダさんについていく形で、俺は図書館に向かった。


図書館に到着。

「ところで、カスガイさんはどのような本をお探しで?」

「そうですね、獣人の事について載っている本であれば何でもいいですが…例えば、種族に関する情報がまとめられている物があれば」

「分かりました、見回りついでに探してきますね」

「お願いします。俺も自分で探して回ってみます」

そして数十分後。

「…っと、この辺かな」

俺は10冊の本を見繕って先程の席に戻る。

「カスガイさん」

「メリダさん、良さげな本ありました?」

「はい、他にもいくつか候補がありましたが、5冊ほど見繕ってきました」

と、机の上には5冊の分厚い本が積まれている。

俺も持っていた本を机の上に置く。

合計15冊の本を見て、俺は思わずため息を吐いた。

この量…今日中に読みきれるかなぁ。

「では、私は仕事がありますので…頑張ってくださいね、カスガイさん」

「ありがとうございます、頑張ります…」

メリダさんは苦笑する俺を見て微笑むと、自分の仕事に戻っていった。

さて、頑張りますか…!


黙々と本を読み進めて数時間。

3冊程読み終え、有用な情報をまとめたものの、大した情報は得られなかった。

とはいえ、獣人という種族について分かった事はいくつかある。

1つ、獣人は、獣の因子に適応した人間が進化し、遺伝子情報の一部に獣の遺伝子が書き込まれた存在であること。

この話は、俺の持つ勇者の因子と同じ様なものだろうか。

という事は獣人の祖先は、例えば神様みたいな、人より上位の存在から獣の因子を与えられて、獣の力を手に入れるに至った…その人の子々孫々が、先祖返りと称して後に獣人と呼ばれるようになった、って事かな。

遺伝子っていうのは確か、DNAに書き込まれている情報の事、だった筈だ。

じゃあ、因子というのは遺伝子情報にも影響するのか?

それなら、勇者って人間じゃない可能性もあるのだろうか。

…まぁ、この話はまた今度考えるとして、だ。

2つ、獣人の祖先となった人物に関する記載があった。

「その者、満月の光を浴び、内に秘めし野生の力を開放する。その姿、まさに獣の王と呼ぶに相応しい姿。黄金と化した髪色は神々しく、その咆哮を聞きし者共、たちまちひれ伏し、その一撃は大地を揺るがす。その者、獣の王と呼ばれし男。野生の力宿りし者共を統治せん…なるほど、満月の光か」

そう、気になるのはそこだ。

この文章は、獣人の間に伝わる昔話の一節だ。

つまり、ギンジロウの言っていた奥の手は、満月の光を浴びて真の力を開放するって事か?

でも、果たしてあの時は満月の夜だっただろうか。

そもそも、満月じゃないと使えない奥の手なんて宛てになるのか?

「…それか、もしかしたらだけど」

力を開放する為に必要となる、満月の光に該当する何かを、彼らは持っているのかもしれない。

しかし、これまでの資料の中には弱点や欠点らしき情報は見当たらなかった。

もう少し他の資料を読み進めてみるか…?

いやしかし、弱点が無いのであれば、自身の力を磨いた方が良いのではないか?

少し考えてから、俺は迷いを振り払う。

「いや…一通り資料に目を通してみよう」

俺は気合いを入れて、4冊目の資料に手を伸ばした。


11冊目まで目を通し終えた。

「ない…!!」

納得できる情報もあるにはあったが、奥の手に対する対抗手段ではなかった。

「あと4冊…!」

畜生、ここまできたら最後までやってやる!!

と、意気込んでからさらに数時間後。

15冊目、メリダさんに見繕ってもらった資料の中に、その記載はあった。

それは獣人という種族の研究データだ。

昔話の一説では、「満月の光を浴びて真の力を開放する」という内容のものだった。

獣人族は「月明かりの丸薬」と呼ばれる秘薬が存在し、その丸薬は特殊な製法で造るのだとされており、獣人以外の人間には広まっていないらしい。

その丸薬には月の光から発せられている独自なエネルギーが秘められていて、それを経口摂取してから数分後、身体に変化が生じ始める。

通常の獣人は、耳や尾のみが先祖返りによって人間と容姿が異なっているが、「月明かりの丸薬」を摂取して力を開放した獣人は、人型の獣と表現するに相応しい存在であることが判明。

身体中が体毛に覆われ、身体能力が飛躍的に上昇する。

凄まじい戦闘能力を発揮する一方、リスクも存在する。

この力は著しく体力を消耗し、どれほど優れた戦士であろうと10分程度しかその状態を維持できず、体力が限界を迎えると解除され、数日は動けなくなる。

獣人の掟として、「月明かりの丸薬」は訓練を得た一流の戦士でないと扱う事は出来ないのだという。

野生を開放するという性質上、この力は生物の本能に影響するものであると考えられ、だからこそ訓練が必要な力なのではないだろうか。

過去、この力の制御に失敗した獣人が被害を及ぼした事件もあり、獣人族が我々人間にとって味方なのか、それとも危険な存在なのか、考えさせられる研究結果となった。

「…なるほどな」

今でこそ獣人は人と寄り添って暮らしているが、かつてはそうではなかったのかもしれない。

「でも、あの3人は…」

少なくとも無暗に人を傷つけるような奴らではないだろう。

どんな力を持っていようが、彼らは俺にとって友人だ。

そして、一人は未来の仲間でもある。

俺の態度は変わらないし、仲間達も同様だろう。

「…情報をまとめて帰ろう」

俺は準備を整えて、仲間と合流すべく宿へと向かった。


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