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蒼の勇者と代行戦争  作者: 夜光猫
第1章 新米冒険者 編
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第23話「戦いの後②」


私はソウマと別れた後、彼の動きを監視していた。

理由は単純で、あの話をした後にどう動くのかが見たかったからだ。

…でもまさか、すぐにあの二人を口説き落とすなんて思わなかった。

もう少し腰を据えて、ゆっくり動くものかと思っていたから、少し驚いた。

「…何やってんの、チヨちゃん」

「ルーナ…に、お爺ちゃんもいたんだ」

気が付けば後ろに立っていたルーナとギンジロウ。

いなくなった私を探していたのだろうか、ルーナはほんの少し呼吸が乱れていた。

「珍しいのう、お前さんが冒険者に興味を持つとは」

「…まぁ、言われれば確かにそうかも」

この世界には2種類の冒険者がいる。

1つは、この世界に元々いる人たち。

もう1つは、勇者候補として神々から特別な力を授かり、才能を見出してもらった、別の世界からこの世界にやってきた勇者候補と呼ばれる人達。

だが、そのどちらにもいい人、悪い人がいる。

そうなると、より大きな力を持っている分、勇者候補の働く悪行の方が人の目を引いてしまうのも仕方がない。

だから、かつては違ったのかもしれないが、今、勇者候補は必ずしも歓迎される存在ではないのだ。

幸いなことに、私を助けてくれた彼は、少なくとも無暗に誰かを傷つけようとするようなタイプではなかったらしいが。

最近の勇者候補は力を持ったことをきっかけにして、その力を悪用して人を利用したり傷つけたりする奴が増えてきている。

そしてそれは、私達獣人の里も例外ではなかった。

私は、その時の事を忘れられないでいる。

「…そう、いくらあいつが私を助けてくれた恩人でも、簡単に信じるわけにはいかない」

「ふむ…なるほどのう。それでソウマに変な課題を吹っ掛けたわけか」

「まぁ、簡単にクリアされちゃったみたいだけどね?」

「そうね、まさかあんなに口が上手いなんて思わなかった」

さてどうしたものか、と私は考える。

疑り深い私ですら、信じてもいいかもしれないと思わせてしまうあの少年が、今はとても恐ろしい。

この世界に来てから一か月で魔王候補を倒した強さもあり、なんだか人を引き付ける様な魅力も持ち合わせている。

もしいずれ敵になるなら、厄介な相手になるだろう。

だから、その前になんとか彼を見定めたい。

何より、簡単に口説かれたあの錬金術師とメイドの子みたいに、私は甘くないと言う事を彼に叩き込んでやらなくてはいけない。

何と呼べばいいか自分でもよく分からない、正体不明の意地とプライドに駆り立てられながら、私は一つの妙案を思いつく。

「ねぇ二人とも、ユークリッドに戻ったら、ちょっと協力してほしい事があるんだけど」


セリアとレミを仲間にすることに成功して休んだ後、俺達は村を出てユークリッドへの帰路についた。

その帰り道は、行きは良い良い帰りは怖い、というような事はなかったので安心している。

ユークリッドの街へ向かう馬車が村から出ていたので、それにご一緒させて頂くことになったのだ。

馬車に乗る前、ヤチヨに2人を仲間にした事を伝えたのだが、

「その話は、ユークリッドに着いてからにしない?」

と言われてしまったのだ。

確かに、と思った。

馬車は4台で街に向かっており、そのうち先頭から2台目の馬車に俺、メル、セリア、レミの4人が乗っていて、あとは御者のおじさんが手綱を握っている。

先頭の馬車と俺達の後ろの3台目の馬車に積み荷を載せていて、最後尾の4台目にギンジロウ、ルーナ、ヤチヨがいる。

「しかし、馬車なんて人生で初めて乗ったけど…思ったより悪くないもんだな」

整備された道を走っているから激しく揺れる事もないし、窓を開けていれば心地いい風が入ってくる。

俺は頬杖をつきながら、窓から入ってくる風を感じていた。

「そうですね、季節的にも暖かくなり始める時期ですし」

俺の対面に座るレミが心地よさそうに目を閉じて、風を感じている。

そんなレミの様子を眺めていると、俺の左肩に、コツンと何かが当たる様な感触があった。

見てみると、メルが俺の肩を枕にして眠っていた。

まだ旅の疲れが残っているのもあるだろうが、適度に揺られて風も気持ちいいこの空間では、確かに眠くなってしまうのも仕方がないだろう。

彼女を起こさない様にそのままでいる事にして、セリアに視線を向ける。

俺が見ている事に気づいたセリアは、窓の外から俺に視線を移した。

「アタシは小さいころ、馬車なんて散々乗ったからね…アンタみたいにはしゃぐ様なことはないわ」

「そりゃ残念、無邪気にはしゃぐお前を見てみたかったんだが」

「バカ言ってんじゃないわよ」

そこで会話が途切れる。

うーん、こんな時、もっと口が上手ければ、この場を和ませるジョークの一つや二つ言えたんだろうけど…俺には厳しいな。

だが、あまり距離を詰めすぎるのも不快に思われてしまうかもしれないしな。

彼女たちの事はこれから時間をかけて、少しずつ知っていけばいいさ。

そのまま馬車に揺られて数時間。

俺達はユークリッドの村に戻ってきた。

眠ったままのメルを起こすべく、優しく彼女をゆすり、声を掛ける。

「メル、起きて。着いたよ」

「…んぅ~」

すり、と控えめに自分に身を寄せる彼女に戸惑いつつ、トントンと彼女の肩を叩いた。

「ほら、起きて」

「…ソウマ様」

「おはよ」

自分が俺に寄りかかっていた事に気づいたのか、「ひゃあ!?」と彼女は慌てて飛び起きた。

「ご、ごめんなさい!私っ」

「いいよ、気にしないで」

日本にいた頃は電車でよくあった光景だ。

疲れ果てたおっさんならその場で肩を揺すって叩き起こしていたものだが、今回は相手がメルである。

なんならちょくちょくその寝顔を横目で見て楽しんでいたまであるので、むしろお礼を言いたい気分だが、そこはグッと堪える。

「セリアとレミはもう外に出てるし、俺達も荷物を回収しに行こうか」

「は、はい」

目が覚めたばかりで力が入りきらない彼女の手を取って、俺は馬車を降りた。

「…到着早々、イチャついてんじゃないわよ」

セリアがジト目で棘のある言葉をくれた。

メルが慌ててそれを否定する。

「い、イチャついてなんかいません!!」

「いや、俺も手を貸してただけだし…」

「まぁまぁ、良いではありませんか」

様子を見ていたレミがセリアをなだめる…いや、別に怒っているわけでもなさそうだが。

「ほら、荷物取りに行くわよ」

「はいよ」

俺達の一番前を歩くセリアの背中を追いかけた。


後ろの馬車からヤチヨ、ルーナ、ギンジロウの3人が降りてくる。

「3人とも、お疲れさま」

「いや~、疲れたのぅ…早く宿に戻って一休みしたいわい」

「分かるよ、俺ももう一眠りしたい…」

俺達は二人揃って大きく伸びをした。

「北の街、ユークリッド…初めて来たわね」

ヤチヨが街並みを見渡しながらそんなことを呟く。

彼女は思ったより獣人の里の外には出ていないのかもしれない。

「ねぇ、アンタたちはこれからどうするの?」

「そうだね、僕たちも流石に少し休んで傷や疲れを癒したいな」

心なしか、ルーナのウサ耳がいつもよりも垂れている。

なるほど、確かに彼女も疲れている様だ。

…というか、切り出すならそろそろかもな。

「まぁ、帰るのはルーナとギンジロウの2人だけで、ヤチヨは帰らせないけどね」

「お?」

「ふーん…今切り出すんだ、その話?」

ヤチヨのその表情は、「いい度胸してるじゃない」と俺に伝えてくる。

「ソ、ソウマ様、何も今じゃなくても…」

「いや、まどろっこしいのは御免でな。それに、切り出すだけなら無料だ」

「…その話、みんなの疲労が癒えてからにしたかったんだけどなぁ」

ワザとらしくそんなことを宣うヤチヨ。

「よく言うよ、疲労はともかく、3人とも大したダメージ負ってないだろ」

そんなもん、村で休んでいた時に回復しているはずだ。

「まぁいいわ。そのみち期間は設けるつもりだったから」

「期間?」

俺が疑問に思っていると、ヤチヨが俺の脇腹を無言でどつく。

「うぐっ」

激痛。

「一番の怪我人はあなたじゃない、なのに何をイキってるんだか…」

「う、うるさいやい…」

その場で地べたに這い蹲る俺。

「だ、大丈夫ですか!?」

メルが回復魔法で痛みを和らげてくれる、暖けぇ…。

「まずは傷を癒しなさい。そうしたら、あなた達の事を試してあげる」

「試す、ですか?」

「しかも、俺だけじゃなくて、あなた達ってのは…」

俺とレミがヤチヨの言い方に疑問を抱いた。

メルとセリアも同じようで、頭上に疑問符が浮かんでいるらしい。

一方、ルーナとギンジロウはその言葉の真意を知っている様だった。

「私達3人とあなた達4人でチーム戦をしましょう。もしあなた達が勝ったら、私も仲間になってあげる」


ヤチヨ、ルーナ、ギンジロウはトウキチさんのところに泊まる事になったらしい。

俺とメル、セリア、レミの4人はいつもの宿に戻り、4人でご飯を食べながら話し合っていた。

「…正直なところ、勝てると思う?」

俺は3人にそう問いかけた。

「まぁ、手強い相手であるのは間違いないわよね」

買ってきたおにぎりを呑み込んで、最初にそう答えたのはセリアだ。

「そりゃあそうだな」

「私は…自信が無いです。3人とも、お強いですから」

自信なさげに俯くメル。

「…マスターはどのようにお考えですか?」

レミは自分の考えよりも、俺の考えを知りたいらしい。

少し考えて、頭の中を整理した後、俺は口を開く。

「…そうだな、俺は勝てないとは思わないよ」

あの3人が奥の手をまだ残しているとしても、決して届かない相手じゃないと思う。

俺もメルも、今回の冒険を通して成長したと思う。セリアもレミも強い。

だが、俺達はまだまだ強くなれる。

それにヤチヨは、致命的なミスを犯した。

「温情か舐めプか知らないが、治療期間なんてもんをくれたしな。その間に、ギンジロウであっても倒せるように強くなるまでだ」

「いや、アンタはまず休みなさいよ…骨何本か折れてるのよ?」

「そうだった」

「そうですね、メルちゃんの回復魔法があったとしても、数日は大人しくしていてください」

「わかりました…」

自分よりも年下であろう女の子二人に怒られてシュンとする24歳。

「と、とにかく!俺の傷が治ったら行動開始だ!やるぞみんな!!」

「「「おー!」」」

とりあえず、やや強引に、無理矢理心を一つにしました。

お、俺も早く傷を治さなくては…!!


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