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蒼の勇者と代行戦争  作者: 夜光猫
第1章 新米冒険者 編
26/39

第22話「戦いの後①」

魔王候補、毒島愚との邂逅から数分後。

簡易的ではあるが、風属性の魔法を使って大地を削り、出来上がった穴に柏田の遺体を埋葬する。

こいつもある意味じゃ被害者だったのかもしれんが…同情はしない。

罪は罪だ。

…まぁ、こんなことを考えても意味はないな。

彼の上から土をかぶせ終えて、目を閉じ、両手を合わせた後、その場から立ち去ろうとすると不意にガクン!と膝から崩れ落ちた。

「うっ…?」

全身に力が入らず、歩くことすらままならない状態に陥る。

原因は…よくわからない。

出血多量か、足が折れているのか、魔力が切れたのか、思い当たる節が多すぎる。

だが、仲間の所へは戻らなくては…

匍匐前進の様な姿勢でズリズリと前進するも、ここからはかなり位置が離れている。

「これは…やばい、かも…」

俺の意識はそのまま闇に飲まれた。


「ん…?」

閉じていた瞼をゆっくりと開く。

「ここは…知らない天井だな」

身体を起こして辺りを見回してみると、メルが俺の寝ていたベッドに突っ伏して眠っている。

自分の身体に痛みがなく、傷が塞がっている事を確認する。

俺は彼女の治療を受けていたらしい。

「あら、ソウマ…起きたのね?」

「うおっ」

唐突に真上から声がした。

見上げてみると、そこには天井に張り付いたヤチヨがいた。

「いや確かに忍者っぽいけど!…いきなり現れるなよ、心臓に悪いだろ?」

「ごめんなさいね、気配を消すの、癖になってるのよ」

ヤチヨはそのまま音を出さずにスッと着地して、俺に手招きする。

「みんなを起こさない様に外へ出ましょう…あなたが意識を失った後の事を話すわ」

「了解」

俺は大人しく彼女についていく事にした。


ヤチヨから大体の話を聞いた。

メルが魔法でルーナとクレイドの精神支配を破ろうとした丁度その時、糸の切れた人形の様に支配の影響を受けていた人たちが倒れた事。

その少し前、巨大なゴーレムが現れたものの、謎の黒い竜巻がそれを呑み込んで破壊したのを見た事。

メルとレミの2人で倒れる俺を見つけて、そのすぐ傍に魔王候補・柏田の遺体が転がっていた事。

操られていた人達はその後すぐに意識を取り戻し、真っ直ぐユークリッドへ出発したものの、俺が意識不明・魔力切れ状態の重体だった為、近くの村に3日滞在して、今に至る事。

「うん、まぁ、状況は理解したよ…説明ありがとう」

「いいわ別に。元々アンタたちが来たのって私を助ける為だし…むしろ手間かけて悪かったわね」

「それこそお金貰ってここにいるわけだし、気にしないでもいいけどね」

でも、俺が目を覚ましたことだし、明日にはこの村を出てユークリッドの街を目指すわけだ。

これで任務完了、ヤチヨ達とは別れる事になる。

せっかく仲良くなれたんだけどな…。

「あ、そうそう」

「ん?」

「あのクレイドって男も、もういないわよ。ユークリッドの街にも立ち寄らず、次の目的地を目指すって言ってたわ」

そうなのか…次の目的地?

「あいつ、どこに行くか言ってた?」

「具体的に場所の名前とかは言ってないわ、次の目的地に行くとしか…」

「そっか」

うーん、パーティメンバーに勧誘したかったが、目的があって旅をしてそうだったからな、あいつは…そうなると止められないか。

しかし、今はとにかく信頼できる仲間が欲しい。

魔王候補の一人一人があんな連中なら、この先俺とメルだけじゃ絶対無理だ。

「…なぁ、ヤチヨはこれからどうするんだ?やっぱり、獣人の里に帰るのか?」

いきなり誘うのも申し訳ないし、まずは彼女の今後の動向を聞いてみることにした。

ヤチヨは少し考えたあと、首を横に振る。

「…いいえ、帰るつもりはないわ。私は元々目的があって、故郷を飛び出したの」

「目的?」

「えぇ、そうよ…気になる?」

「そりゃあな」

「じゃあ教えてあげる」

両手を後ろに組み、「私はね…」と続ける。

「くノ一として、私が仕えるに足る素敵な主を探してるの」

「…は?」

予想していなかった理由が出てきて、一瞬時が止まった。

が、それと同じような理由で俺を見定めている少女を思い出す。

「…レミみたいな理由だな」

まぁ、あの子はヤチヨとは違って、不特定多数から誰かを選ぶ、というわけではない。

今は俺が見定められている最中で、お眼鏡に叶えば仲間になってくれると、そう見込んでいるが…どうだろうな。

「…ちなみに、どんな条件なんだよ、お前の理想の主ってのは」

「まずイケメンで身体を鍛えてる事ね」

「ノータイムで分かり易い条件が来たな…」

なるほどな。

彼女からは、クラスのどこかには必ずいるギャルの様な気配を感じる。

それも、オタクには優しくないタイプの部類だ。

「次に金払いがいい事」

「顔、身体の次は金か…」

「何よ、お給金もまともに支払えない奴になんか、従えるわけないじゃない」

まぁ、それが仕事なら正論なんだが…多分、それはこいつの男の好みの話だ。

…あ、でも主の性別には言及していないか?

いや、イケメンって言ってるから、どのみち男の話か。

「あとはまぁ…セックスが上手な事?」

「お前な…」

「あんたは違う世界から来たから知らないかもしれないけど、この世界じゃ忍は主に全てを捧げるものなのよ」

「…そうなのか?」

「えぇ。例えば非処女のくノ一が雇ってくださいって来たら、まず間者であることが疑われるわね」

そんな世界なのか、忍者の世界ってのは。

世を忍んで影の世界で主の為に忠義を為すのが忍なら、裏切らない様にくノ一の初めてを奪うってのは、理に適っているのだろうか。

「男の忍は楽でいいわね、裏切りがあっても殺せば済む話なんだもの」

「怖すぎるだろ、忍の世界…」

しかも、男尊女卑みたいになってるし。

俺がドン引きしているのが伝わったらしい、弁明するようにヤチヨが補足する。

「まぁ、くノ一には男と違って色仕掛けとかもあるし、裏切りはあるものよ。亡くなった父と母も、そんな世界の人間だったから」

その世界の人間として生きるしかなかった、って事か。

こいつも色々あったらしいな…まぁ、こんな世界だし、別におかしくないか。

「じゃあ、俺達と一緒に来いよ」

「…はぁ!?この流れで勧誘!?」

あれ、そんなに変なタイミングかな。

「いや、ほら、仲間になって、一緒に世界を回って理想のご主人様を探せばいいんじゃないかなって思ってさ…もちろん理想の相手が見つかったら、そいつに付いていけばいいし、俺は別に止めないからさ、どうだ?」

うーん、我ながらよくこんな言葉がスラスラと出てきたもんだ。

変な所で口が回るって自覚はある、こんなんでも勇者候補なんだよなぁ。

「…なるほどね。任務の報酬は?」

「うちは山分けが基本かな…でも、パーティメンバーが増えれば難しい仕事にも挑めるようになるし、むしろ金は増えるんじゃないかと考えてる」

それに、複数の依頼をこなせばいいだけの話だしな。

「住むところはあるの?」

「…さすがに、今はまだないよ。俺はこの世界に来たばかりで、家なんてもってるわけない」

「まぁ、それは仕方ないわね、目を瞑ってあげる」

「でも、ちゃんとした拠点の必要性は分かってるつもりだし、そう遠くない内に貯金してアジトを用意したいと思う…まぁ、その為の資金が用意できればの話だけど」

「…私は沈む泥船に乗るつもりはないわ」

「…つまり?」

「セリアとレミの2人を、ちゃんと口説き落としなさい。私を勧誘したいなら、話はそこから」

俺の唇に人差し指の指先を触れさせ、「話は終わり」と言わんばかりにスタスタと歩いていくヤチヨ。

「最初からそのつもりだよ」

「そう?なら期待していてあげる」

女の一人も口説けないような男に従う私じゃないわ、と、そう言い残して。

彼女はまるで野良猫の様に静かに、その場から立ち去った。


ヤチヨとの別れからしばらく、俺は無言で空を見上げていた。

雲一つない、満点の星空だ…これは日本でも見られない景色だろう。

さて…どうやって、あの二人を口説き落とすかな。

遺跡の中で眠っていたホムンクルス、レミントン・アーマライト。

道中出会った、何らかの目的のために旅を続ける錬金術師、セリア・フォード・カルシュタイン。

仲間になる可能性が高いのはレミの方か…彼女は自身の主となる勇者候補を探している。

俺を見定めていた様だが、俺は彼女のお眼鏡に叶ったのだろうか?

レミにはそれを確かめた上で、俺から正式にオファーを掛けるとしよう。

セリアはどうかな…彼女をスカウトするには、色々な事を知る必要がある。

彼女は確か、錬金術師としての修行の為に旅をしているんだったか。

一度スカウトはしたが…今はどう思ってるのかな。

うーん、とりあえず話をしてみよう。

こういうのは、相互理解から始めるべきだ。

そうと決まれば、まずは…

「戻るか、あんまり遅いとみんな心配するかもしれん」

そう思って後ろを振り向いた時、俺は自分の犯したミスに気が付いた。

「…どうやって宿に帰るんだ?」


適当に歩き始めて10分程経過した頃。

俺は完全に迷子になっていた。

「ここ、どこぉ…?」

来た道を戻ってきたと思ったんだが、見覚えのない道に出てしまった。

「これは参ったなぁ…」

途方に暮れて、その場にしゃがみ込んで空を仰ぐ。

こんな時でも星は綺麗だなぁ。

「いなくなったと思ったら、こんなところにいたの?」

「ん?」

立ち上がって振り返ってみると、そこにはちょうど会いたかった相手がいた。

「セリア」

「探したわよ…まったく、怪我人なんだから大人しくしてなさいっての」

グーの形にした右手で軽く俺の頭を叩く。

「ごめん、ちょっとヤチヨと話をしてた」

「ヤチヨちゃんと?…一緒にいないみたいだけど」

「用事が済んだら先に戻っちゃったよ」

「あぁ、そう…まぁ、あの子なら大丈夫だと思うわ、迷子になってたアンタと違って」

ばれてるし。

「始めての場所なんだから、そこは許してよ」

「いや、こんな簡単な道で迷子になるアンタもアンタでしょ…数日意識不明の重体だったんだから、せめて戻ったら大人しくしてなさい、わかった?」

「はーい」

「メルちゃんがまだ寝ててよかったわ…あの子が気づいたら大騒ぎになってたと思う」

「だろうな、そんな気がする」

そもそも、起きて早々俺が動ける状態まで回復していたのはメルのお蔭だ。

あの子には感謝してもしきれないな。

セリアが歩き始めたので、俺もその後ろをついていく。

少し無言の時間が続いた後、前を歩く彼女に声を掛ける。

「なぁ、セリア」

「何?」

「改めて言うけど、お前、仲間にならない?」

立ち止まって、身体ごとこちらを振り返るセリアと目が合った。

「…アンタが冒険する理由って何?」

「ん?」

「アンタは何で戦ってるのかって事よ」

俺の戦う理由か。

少し考えて、俺は答える。

「色々と理由はあるよ。この世界で生きる為、仲間や友達と一緒にいる為、自分と一緒にこの世界にやってきてしまった魔王候補を倒す為…とかね」

「なるほどね」

「少なくとも、勇者になりたいとか、世界平和の為とか、そういう理由では戦ってないよ」

「それは見てればなんとなく分かるわ…アンタは綺麗事で戦うタイプじゃない」

「その通り…お前が旅する目的は、錬金術師としての見分を広める為、だったか?」

「それも理由の一つだけど、それだけじゃないわ」

「…そうなのか?」

セリアは無言で頷くと、こちらに背を向けて再び歩き始めた。

彼女は話を続ける。

「…錬金術師について、アンタはどのくらい知ってる?」

錬金術師について、か。

イメージはなんとなくあるが、それをうまく言語化するのは難しいな。

「うーん、集めた素材を使って便利なアイテムを作る人?」

「この世界での錬金術師のイメージは二つ…1つはアンタのイメージする様な、まぁ便利屋みたいな理解でいいわ」

「なるほど、もう一つは?」

「…魔女の系譜」

魔女の系譜?

聞きなれない言葉が出てきたな。

「それ、魔女の系譜ってのは何の事?」

「…」

この場所は暗い夜道だ。

彼女の表情はハッキリと見えないが、あまりいい話ではないだろう。

たった1つの固有名詞によって、空気がより重くなったのを感じた。

「かつて勇者の仲間だった、魔女の事は知ってる?」

「いや、知らない」

「まぁ、アンタはこの世界に来たばっかりなんだもんね…知らなくて当然か」

「…」

「その魔女はね、裏切り者なの」

「裏切り者?」

「そう。魔女の目的は最後まで明かされなかったけど、彼女は勇者とその仲間を裏切って、魔王の側に立ったとされている」

「それは…おとぎ話とか、そんな感じで伝わってるのか?」

「そうよ、この世界の子供の多くは、その昔話を聞いて育つの…アタシのカルシュタイン家は、その魔女の用いた錬金術の技術を受け継いだ一族で、カルシュタイン家を含む裏切り者の魔女の血を引く一族の事を、魔女の系譜と呼んでいるわ」

なるほどな、意味は理解した。

街に戻ったら、その昔話にも目を通しておく必要があるか。

「…だが、その魔女がどうあれ、今を生きるお前らに罪はないだろ。なんだってそんな言葉があるんだ、まるで差別用語みたいに」

「その通り、これは差別用語よ」

「…なんだって?」

「流石に時代が流れて、道行く人達全員から後ろ指を指されるってわけではないけど…例えば央都オルダヤルク辺りは深刻な差別意識が根付いてるわ」

央都オルダヤルク。

この辺りの知識や理解もまだ浅いけど、確か…

「確か、央都オルダヤルクを中心に、東西南北に別れた正方形の国が、ここソルド王国…って話でいいんだよな?」

「合ってるわ…央都にはこの国の王族がいるんだけど、その王族が差別的な思想を央都の民達に植え付けたの」

「…何のために?」

「分からないわ…でも、少なくともアタシたち、悪いことは何もしてない。差別される謂れはないのよ」

そういう話なら、一族の人たちも理由は知らないんだろう。

思い当たる理由は、ご先祖様であろう魔女が裏切り、人間の敵に回ったから。

ただそれだけ。

「…酷い話だな」

「だから、アタシは知りたい。なぜアタシ達が差別されているのか」

それも、彼女が旅をする理由か。

「俺も手伝うよ」

「え?」

「これでも勇者候補って言われてるしな、無関係じゃないし…友達の問題は俺の問題だ」

言ってて恥ずかしくなってきたので、俺はセリアに顔を見られない様に、彼女の前を歩く。

無意識にポケットに両手を突っ込んで、少し早足になっていた。

「…そうね、アンタなら信頼できそう。いいわ、仲間になってあげる」

「いいのか?」

「えぇ、心を決めたわ」

セリアは小走りに俺の正面に立ち、右手を差し出してくる。

俺はそれに応じて左手を差し出し、グッと握手を交わした。

「よろしくな」

「えぇ。でも、アタシだけじゃないんでしょ?」

「…あぁ、次はレミにも声を掛ける」

「パーティリーダーは大変ね…そろそろ戻ろ。メルちゃんが起きてたら大事よ」

「確かに、急ごう」

俺達は走って拠点に戻った。


「ソウマ様…!」

「よう、世話かけたな」

拠点となっていた村の宿に戻ると、メルが駆け寄ってきた。

どうやら、目が覚めて俺がいなくなっていたから心配させてしまったらしい。

「勝手に抜け出してごめんな、ちょっとヤチヨと話がしたくて、外で話してた」

「ヤチヨちゃんと…ですか?」

「詳しくは後で話すよ。それより、レミはいるか?」

「私なら、こちらに」

「うおっ」

俺の死角になっている部屋の隅に、レミはずっと控えていたらしい。

…気配が無かったし、集中もしてなかったから気づけなかった。

「心臓に悪いから、気配殺すのはやめてくれよ」

「ふふ、失礼しました。それより、私に話があるというのは?」

「あぁ、それね…」

そうそう、それが本題だ。

「こいつ、アンタも仲間にしたいんだって」

セリアが俺よりも先に口にしてしまう。

「あら…そうなんですか?」

「セリフ取られたですけど…まぁ、その通りだよ。俺達の仲間になって欲しい」

「まぁ…」

レミは口元を両手で隠すような仕草を見せるが、その声色は特に驚いていない様に聞こえる。

「驚いていないんだな?」

「えぇ、現在のパーティーメンバーは合わせて2人しかいないというのは伺っていましたので」

「情報が古いわ、今は3人よ」

セリアが一歩前に歩み出る。

「えっ、そうなんですか!?」

それを見てメルが驚いた。そういえばまだ言えてなかったな。

「あぁ、うん…さっき誘ったらOKもらえた」

「そういう事。これからよろしくね、メルちゃん」

「はい!よろしくお願いしますね、セリアちゃん!」

メルも嬉しそうで何よりだ。

メルとセリアが仲良くし始めたのを横目に見ながら、正面からレミの様子を見る。

「…」

両手を後ろ手て組んで、両目を閉じ、何やら考えている。

「お前は同行するべき勇者候補を探しているんだよな?」

「はい」

「その候補に、俺は入れないか?」

「…」

レミは答えない。

その様子を見ていたセリアが、ボソッと一言呟いた。

「あいつ、度胸あるわね」

「えっと…?」

セリアは俺の分かり易い意図に気づいているらしい。

彼女を仲間に加える為には、彼女から自身が仕えるにふさわしい勇者候補であると認められなければならないのだが…頭が残念な俺には、こんな真っ向勝負しか思いつかなかった。

「あなたは、勇者候補として、何を目的に戦うのですか?」

ここからの答えには、俺は迷ってはいけない。

心のままに、素直に答えるんだ。

「身の回りの大事な奴らを守るため、かな」

「では、身の回りではない人間は見捨てると?」

「出来ることがあれば、ベストを尽くすよ…俺は、やれることをやるだけだ」

「あなた一人では、到底勝ち目のない相手が現れたら、どうします?」

「そんな奴らに負けない為に、俺は仲間を探してるんだよ、レミ」

「それでも勝てない時、あなたはどうしますか?」

「俺は『勝つ』事を目的にして戦ってるわけじゃない」

「と、言いますと?」

「さっき俺は言ったな?負けない為に仲間を探していると。つまるところ俺の敵は、支配や理不尽、不条理といったものそのものだ」

「…はい」

「そういったものから、守りたいものを守るために戦うんだ。だから、最悪負けて守れる戦いなら負けていいんだよ」

「…なるほど」

「俺は次の戦いで死ぬかもしれない。誰かを守るための戦いで、結局は誰かを傷つけるかもしれない。だから、綺麗事を言うつもりはないよ…戦いって、そんな甘い世界じゃないだろ」

「…確かに、その通りですね」

まぁ、冒険者になりたてのお前が一体何を知っているんだという話だが。

レミは貞淑なお嬢様の様にメイド服のスカートの両端を摘まみ上げ、頭を下げる。

「このレミントン・アーマライト、これより生涯、あなたにお仕え致します」

「えっ」

予想していたよりもはるかにたやすく、彼女が仲間入りを決めた事に驚く俺。

「…自分で誘っといてなんだけど、いいの?」

「はい…理想論やリアリズムを語れば、即座に論破してこの場を去ろうと思っておりましたが、あなたはそうしなかったでしょう?」

「まぁ、そうだけど」

「そんなもの関係なく、今を見つめて出来ることをするという考え方。あなたなら、私が守るに足る御方だと判断しました」

「…俺だけじゃなくて、メルやセリアも守ってあげてね」

「よかったわね?」

黙って問答を見ていたセリアが、後ろから声を掛けてきた。

両手を腰に当てて、流し目でこちらを見るセリア。

「あー、そうだな…うん、よかったよ」

言えねぇなぁ、内心滅茶苦茶ビビってたなんて話は…。

でも、俺がこの世界で戦うスタンスは伝えられたと思う。

だが、今日はこの辺りでいいだろう。

俺も復活したばかりだし、少し休みたい。

「ふぁぁぁ…」

ほら、安心したら眠くなってきた。

「…忘れてましたけど、今って真夜中でしたね」

「確かにそうね、そう思ったらアタシも眠くなってきたわ」

「そうですよ!ソウマ様も、まだ体力が完全に戻っていないんですから、部屋に戻って休んでください!…もう抜け出したりしちゃダメですからね!?」

「ごめんって、悪かったよ本当に、俺も眠いしちゃんと休むから。えっと、俺の部屋は…」

ぷんすかと怒っているメルに謝りながら、自分の部屋を探す。

「マスターのすぐ後ろの個室が、マスターのお部屋ですね。お荷物や装備もそちらにありますよ」

レミが俺の部屋を教えてくれた。

「お、ありがとう。それじゃ、みんな、明日からまたよろしくな、おやすみなさい」

挨拶するや否や、ベッドの暖かさを求めて部屋へと飛び込む俺。

このまま眠れそうだな…とも思ったが、ここであることに気付いた。

「…臭うな」

数日寝たきりになっていたのだ、当然風呂なんて入っていないだろう。

案の定、身体が男臭さに包まれていた。

…そうして俺は寝る直前に、大急ぎでシャワーを浴び、歯を磨いてからようやくベッドに入った。

俺は死んだように眠った。

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