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蒼の勇者と代行戦争  作者: 夜光猫
第1章 新米冒険者 編
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第18話「北の遺跡の戦い②」

セリアと一緒に部屋を進んでいると、これまでに見た扉の中で一際大きな扉があった。

俺達は今、その前に立っている。

「…でかい」

説明不要。

いや、本当にデカい扉としか説明のしようがない。

何かあるぞ!と思ってセリアと一緒に調べてみたが、魔術的封印も何もなかった。

というか、普通に手で押したら開いた。

「これ…なんかボス部屋の前みたいで、セーブポイントが無いと安心して進めないんだけど」

「アンタ何言ってるの?」

まぁ、ゲームの話なんて通じないよなぁ…。

しかし、タネも仕掛けもない以上、このまま先に進むしかない。

ここまで一本道だったし、道中の部屋には様子のおかしい冒険者や盗賊達しかいなかった。

本来ならギルドの手が行き届いた遺跡だからこそ、この状況なのかもしれないな。

ここで操られている冒険者の何名かは、ギルドからの依頼でこの遺跡の警護についた者達なのだろう。

残りは操られたまま、ここに戦力として連れてこられた者達。

魔法や魔術の力で操られているのか、それとも…。

「ソウマ!」

「うわっ」

考え事をしていると、セリアに首根っこを掴まれ、そのまま背中から後ろに倒れる。

倒れゆく俺の目の前を黒い何かが通り過ぎていった。

「そこにいるのは誰!?」

「…」

出てきたのは、黒衣に身を包んだ人物だった。

右手に苦無を逆手で持ち、感情の無い瞳でこちらを見ている。

あの黒い服装には覚えがあった。

「…忍装束?」

そう。

日本で散々見た、忍者そのものの格好。

鼻や口元を覆い、顔を隠してるが…俺の目を引くのは頭に生えている猫耳だった。

そこで、俺は全てを察して、即座にエア・ライドを発動する。

「あいつは行動不能にしておく!」

「どういうこと!?」

セリアは何もわかっていない。当然だ、彼女はこの遺跡に来た目的の全ての話を聞いていない。

俺達がこの遺跡に来た目的は大きく二つある。

一つは、ギルドから依頼された、魔王軍の遺跡襲撃を迎え撃つこと。

もう一つは、魔王軍・襲撃チームの中にいるであろうルーナの友達を助けることだ。

ここに来る道中、俺はその人物の特徴を聞いていた。

俺とそんなに歳の変わらない女の子である事。

猫の獣人族であること。

彼女の一族は優れた忍を輩出する家であり、彼女自身も忍者である事。

黒い忍装束に身を包んでいる事、等。

これだけ条件が揃えば、ツモったといっていいだろう。

「彼女の名前はヤチヨ・アキツキ。ルーナの友達で、代々優れた忍を輩出している、忍者の家の出…らしい」

俺の魔剣とヤチヨの苦無がギリギリと鍔迫り合いに持ち込まれる。

剣に心気を込めて威力を増したが、全然押し込めない。

「とにかく、彼女を抑えればいいのね!?」

「俺に策がある!サポートよろしく!!」

「了解!」

鍔迫り合いの状態から身体を捻って、回し蹴りを仕掛けるも、ひらりと後ろに飛び退かれてしまった。

「…」

あの子も操られているらしいことは、多分間違いない。

俺は愛剣を鞘に納めて、懐に忍ばせておいた巾着袋に手を伸ばす。

そしてその中から、BB弾のような形状の小さくて丸いものを左手に握り、駆け出す。

援護の構えのままのセリアに指示を飛ばした。

「一瞬で良いから、あいつを動けなくしてくれ!!」

「了解!」

聞くや否や、セリアは杖を投げ捨てナイフで人差し指を切り、壁に魔法陣を描いていく。

出来上がるまでは、俺が注意を引かなくてはならない。

俺は心気を身体中に漲らせ、身体能力を強化した。

正確な狙いで飛んでくる苦無を回避し、蹴り飛ばしてヤチヨに近づく。

10個目の苦無を対処したタイミングで、忍者刀を逆手に構えた彼女が既に眼前にいた。

「危ねっ!!」

懐から出したそれを握りしめたまま身体を仰け反らせ、ハンドスプリングの要領で起き上がるも、すぐに右方向から忍者刀が迫っている。

この距離では避けられない事を確信した俺は、忍者刀を持っている彼女の右手を、俺の右手でガッチリと掴む。

受けられたとわかった瞬間、ヤチヨは左手の人差し指と中指を揃え、人差し指の左側面を口元に触れさせる…何だ?

嫌な予感がした俺はエア・ライドを発動し右手を離して、突風により無理やり後ろへ逃げた。

ヤチヨがフーッと何かを吹くような動作をした直後、俺に向かって大きな炎が飛んできた!

「密室で炎とかふざけんな!!」

吹き飛ばされてからの着地後、右手で魔剣を抜き放ち、剣の周囲に風属性のマナをチャージ・解放する。

イメージするのは、日本で見たアニメのワンシーン。

剣を回転させて盾の様に扱い、ドラゴンの息吹を防いだ場面。

右手を正面に、剣が高速回転するままエア・ライドを発動。

ボン!!という音と突風によって、俺は炎の中を真っ直ぐ進む。

そのタイミングでセリアの準備が出来たようで、俺を焼き殺さんと炎を吹き続けるヤチヨに向けて、錬金術が発動した。

ヤチヨを真ん中に、左右の壁に魔法陣が一つずつ輝いている。

「大地の巨人の隻腕よ!!」

ゴッ!!!という凄まじい音と共に、魔法陣から巨大な腕がヤチヨに向かって伸びていく。

その腕は身の丈よりも大きいが、ヤチヨはそのまま高く真上に飛び上がってそれを躱した。

炎の中を突っ切った俺は左手のそれに念じ、地面に叩き付ける。

「Ex/Seed…ヘデラ・ヒューネム!!」

パァン!!という音と共にそれが弾けて、こちらを捉えようとするそれは植物の蔦だった。

俺は発動したままのエア・ライドによって大きく跳び退き、セリアも俺の近くまで逃げてきていた。

逃げきれなかったヤチヨは、そのまま蔦に捕まって身動きが取れなくなる。

「あ、あぁぁぁぁ!?」

その蔦は、彼女を締め上げたまま、ドクンドクンと何かを吸い上げる。

1分と経たず、ヤチヨの首がだらりと垂れ下がるのを確認した俺は、その植物を斬り、彼女を解放した。

「あんた…随分と物騒な技持ってるのね?」

解放したヤチヨをそっと寝かす俺に、少しばかり引いているセリア。

「Ex/Seed。植物の種に俺の経験値を与えて、瞬間的に急速成長させる技だよ」

この世界の植生が結構物騒な事は、図書館で勉強して学んでいる。

世の中にはこうした物騒な植物の種子を売買している商人がいることが発覚し、何に使うのか聞いてみた所、料理の香り付けや香水の材料、漢方等に使われるらしい。

それに目を付けた俺は、ある実験をした。

俺の経験値を植物の種に与えたらどうなるのか。

俺の天恵「lonely/1」は、レベルアップする事の出来ない俺の持て余した経験値を貯蓄・譲渡する能力を持っている。

どうやらこの譲渡する経験値は、僅かながら俺の生命力が混ざっているらしい。

天城さんの説明によれば、経験値を付与する為にはそれを何らかのエネルギーとする必要があり、形上は俺の生命力を僅かに宿すことで、特殊なエネルギーと化しているらしい。

そのエネルギーは、経験値の数値分対象を「その場で」、「即時に」成長させる。

「俺のそんな能力によって、この種は急成長してあの子を捕まえたってわけだ」

黒い種を巾着袋にしまいながら、説明を終える。

「そして、物によっては急速成長の結果、ああなるわけね」

セリアが指さすその先には、茶色になって枯れきった植物があった。

先程急速成長させた、ヘデラ・ヒューネムだ。

「うん。自我や魂を持たないものに経験値を付与させると、そのまま急速成長する。文字通り、揺りかごから墓場までね…でも、例えば冒険者の人間に経験値を付与すれば、その分レベルアップに近づいたり、普通にレベルアップしたりするし、例えばこの能力でお前に経験値を与えたとしても、いきなりお婆ちゃんになったりはしないよ」

天城さんに説明してもらった後、一度メルで試して大丈夫だった。

「何故、自我や魂の有無でそれが変わるの?」

この辺りは少々哲学的な、難しい話になってくる。

「簡単に言うと俺達は、自分で自分が今どんな存在かをちゃんと捉えていたりするから、急速成長・老化しようとするのを止める…というより、止まるんだってさ」

つまり、この植物には基本的に、魂や心は宿っていない。

だから自分という存在を捉えず、ただ受けた生命力によって成長させられ、そのまま枯れてしまう。

「なんで自分を捉えるってのがそれに繋がるのかは、俺にもまだよくわかってないけどね」

「…天恵、ね。本当に不思議な力だわ」

それで、と話題を切り替えるセリア。

「彼女はどうするの?」

「一旦、ここに置いていくよ。魔王軍の連中…というより、この騒動を起こした操ってる奴を叩き出してから、また迎えに来ようと思う」

正直、連れていくことは出来ないからな。

人間一人背負ったまま戦うってわけにもいかない。

「それが賢明ね。でも、せめて部屋の中にしない?流石に入り口のど真ん中に寝かせるっていうのは、ちょっと可哀想よ」

「確かに、それもそうだな…じゃあ、この部屋か」

そこは、先程の大きな扉の部屋。

荷物を入れたリュックを胸の前に吊るして、背中にヤチヨを背負う形にした。

俺達はその扉を潜る。


「ハァ、ハァ…守りよ!!」

私は息を切らしながら、敵の攻撃を防ぎつつ、ソウマ様との合流を目指していた。

冒険者の雷を纏った踵落としによって、私の結界にヒビが入るも、構わず進む。

私一人では絶対に勝てない。

操られている彼らを元に戻す方法は、私の中に確かにあるが…それを実行するには、確かな実力を持ち、且つ敵の能力で操られない人物の協力が必要不可欠だ。

迫りくる剣撃やブーメランを躱しつつ、ただただ前へひた走る。

体力ももう限界になってきており、私は苦し紛れに、近くの部屋に入り込んだ。

彼らは気配で私を探すようなことは出来ないようで、姿を隠せばこうして休むことが可能らしい。

「ソウマ様…」

近くに味方のいない不安感に駆られて、彼の名を呟く。

無意識に右手で髪をクルクルと弄ってしまうのは、私の悪い癖。

私は考えなくてはならない、この窮地を脱する方法を。

「…よし」

私は立ち上がって、手早くこの部屋を調べていく。

何かの装置のようなものが置いてある。

操作盤に色々なボタンが配置してあるが、何がどのボタンなのかはよくわからない。

順番にボタンを押していくと、一つ押せないボタンに行き当たる。

「…?」

気になってさらに触っていると、どうやら回して使うらしい事が分かった。

指でそのボタンをつまんで捻ると、カチッという音が鳴った。

ブゥゥゥゥゥン…

「な、何!?」

何かが起動したことは分かる。

ただし、何が起動したのかは分からない。

私は慌ててガチャガチャとボタンを押しまくる。

ゴゴゴゴゴ…ゴン!!

「ひぃっ!?」

装置の右奥。

石の壁だと思っていた場所が開き、小さなスペースがそこにあることが分かった。

その場所のみ、床からマナが満ちているのが分かる。

ガチャ…

「!」

見知らぬ冒険者が入ってきて、こちらに気づいた!

「くっ…!」

剣を抜き放ち、こちらに飛びかかってくる男を躱して、部屋の奥のその場所に私は跳び込んだ。

私がその場所に入ったそのことを感じ取ったのか、床から湧き上がる魔力が満ち溢れ、私の身体を包み込んだ。

目の前が真っ白になって、急な浮遊感を感じた。

「キャーーーー!!!」

そのまま、私はどこかへ落ちていった。


…。

澄んだ魔力色を持つ冒険者の到達を確認。

魔力純度が基準を見たしている為、有資格者と見なし、入室を許可。

有資格者の魂を計測開始。

計測中…。

計測完了。

有資格者の魂に異常なし。

レミントン・アーマライト、有資格者の来訪に伴い、活動を開始します。


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