コント【ラーメン屋】
「ゲラゲラコンテスト2」応募作品
コント【ラーメン屋】
・店主
・客
○ラーメン屋・店内
目を瞑って眉間にシワを寄せ、腕を組んでカウンター席に座っている客。
そこへ無表情でラーメンを配膳する店主
店主「豚骨チャーシューです」
ラーメンを置いてすぐに裏へ下がろうとする
客「おい、待て」
客の言葉に店主が足を止める
店主「はい?」
客「それだけか?」
店主「え?」
客「『え?』じゃねえだろ。こっちは注文してから結構待たされてんだぞ?」
店主「あ、はい」
客「散々、待たせておいてお待たせしましたの一言もないのか?」
店主「あ、すいません……」
客「たかがラーメン一杯で時間かかりすぎだろ。大体、どうなってんだ、この店は。いらっしゃいませの声もなけりゃあ、席の案内もない、水も出さねえし、どうなってんだよ」
店主「はい……すみません……」
手を前で組んで俯く店員。
それを睨みつけるようにして見ながら、お箸を取ってラーメンに手を伸ばす客。
客「お前な、そんな接客でうまいラーメンなんか作れると思うなよ。接客もろくに出来ない奴がうまいラーメンなんか作れるわけねえだろ」
麺をすする客。
目を見開いて机をバンと勢いよく叩き立ち上がる
客「美味いのかよ!」
驚いた顔をする店主に対してラーメンを指差して睨む客。
客「これ、めちゃくちゃ美味いじゃねえか! なんでこんな美味いだよ!」
店主「ありがとうございます」
客「いやいや……こんな接客じゃ美味いラーメンなんか作れねえっていう話してたとこじゃん。それで食って、不味いってなって、ほら見てみろって言う展開になるとこだろ。なんで美味いんだよ!」
店主「え? あ、はぁ。そういうものですか」
客「というかそうなると、こんなに美味いラーメンが作れるのになんで接客が出来ねえんだよ! それさえ出来れば文句ねえのに!」
店主「いや、あの僕、一度ラーメン作りに入ると周りのことが見えなくなる傾向があって……」
客「天才か! 作業に没頭しすぎるがあまり、他がおろそかになるって天才がよく言うやつじゃねえか!」
店主「それでまぁ、自分が追い求めるラーメンを作るために、無茶な要求ばかりしたせいで従業員がついてこなくなりまして」
客「スティーブ・ジョブズか!こだわりが強すぎて周囲から浮くってジョブズみたいな悩み抱えてんな!」
店主「こういう風にしてくれと言って、出来ないと言われたら、すぐクビにしてましたし……」
客「ジョブズじゃん! やってることがジョブズと一緒じゃん!」
店主「利益よりもラーメンの質を優先する僕に経営陣も呆れて、ラーメン作りから外されましたし」
客「そうなるよな! ジョブズもそうしたもんな!」
店主「それで今こうして新しい店を構えてるんですけど、元の店から戻ってきてくれないかっていう話が来てて、どうしようかなって迷ってるんですけど……」
客「そこは受けるとこ! ジョブズはそこで引き受けたって聞いたことある! ここまでジョブズなら、そこもジョブズでいこう!」
店主「あ、はい。なんかよくわかんないですけどそうしてみます。ありがとうございます」
客「いやまぁ、ジョブズの自伝本に書いてあったこと言ってるだけだから」
店主「あの……」
客「うん?」
店主「ちなみに、そのあとはどうすれば……?」
客「本買え」
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