2話:廃戦士
違いの分かる男、烏鷺です。
この国では、異界からの迷い人がよく出てくるらしい…
ので、帝都に迷い人を保護し教育する施設があるんだって。
外官と呼ばれる地方職から、内官と呼ばれる帝都の官僚に復帰するセバスチャンさんが帝都に連れて行ってくれることとなりました。
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セバスチャン・カールスバルグ伯爵と呼ばれている。
陛下の臣として常に忠誠を誓ってきた自負もある。
それなのになぜ神は、この私のもとにあの少年を送り込んだのであろうか?
なんと言うのであろうか?今までの迷い人とは違い…達観しているというか…無気力というべきか?
何もできないことを自慢げに宣言する辺り大物なのであろうか?
とりあえずよくわからない少年である…この世とは成人の観念が違うようで、とうに成人しているはずの年齢を口に出しているのに今年成人だと言い張る。
そしてこの少年を保護すると同時に、上司の不興を買い上司が上司でいる間は中央に戻ることが不可能と言われていた私が…中央に復帰せよとの辞令を得た。
ある意味、幸運の運び手と言えるのか?それとも更なる不幸を呼び寄せる疫病神なのか?
東部領を離れ、帝都へとこの少年を伴って旅立とう。迷い人の保護と帝都へ送り届けるのは臣下の義務だし異を唱える気はないが、あえて言おう「なぜ私にこの重荷を負わせたのでしょう?」と。
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東部領の外務輔を務めていたセバスチャンさん。新たに帝都で外務大丞に昇進するって言ってたけど次官から部課長級って降格のような?
大臣に相当する卿、次官に相当する輔、その次席である丞…だから聞いたんだけど
帝都の少丞<領の輔<帝都の大丞になるから出世だって言ってた。
まるで日露戦争の軍人のように胸元にモールが列になっている「肋骨服」って呼ばれている服を着たセバスチャンさん
詰襟の部分に複雑な文様が浮き出ている飾り布がつけられているから貴公子に見える。
クリーム色の服に赤いモールで飾られ、袖口が黒地に金の文様を刺しゅうされ…合わせ目や裾に飾り刺しゅうされウエスト丈?上着の裾からちらちらベルトがのぞく。
黒いズボンで側面に赤いラインが上下に流れ、半長靴は鏡のように磨き上げられ、金で装飾された白いさやに納まったサーベルが腰に下げられてる。
頭はナポレオン?とかがかぶっている扇子みたいな帽子、右肩にだけつけられている肩章?金モールのごてごてした奴が見える。
う~ん?まるでナポレオン戦争の時のコスプレっぽい…って感じるのは普通だと思うんだ。
立ち姿がピンとして、英国近衛兵みたい。…
貴族の義務で軍にいて少佐で退役し外務省にって…バンコランとかエーベルバッハとかが苗字なの?
アラスカ送りならぬ東部領送りなのか?
などと妹に押し付けられた知識が零れてきた…しょーさって、よくわからないけどそこそこえらい中間管理職?部下の質が悪いと胃が痛くなる人なのか?