異邦人
警戒、戸惑い、疑念、畏怖。
ん〜……敵意ではないけど、正体不明の不審人物ってところよね。
とりあえずこちらには敵意や害意がない事を分かってもらいたいかなぁと思う。
シュバルツと視線を交わすと考えが同じな事が分かる。
さすが元親子、現 姉弟。
ドラゴン、(この世界流に言えば火龍)から降りてシュバルツの側に移動。
水魔法でお互いの汚れを落とし身なりを整える。
怪我がないとはいえ、火龍との戦闘で服は破れ放題。乙女としては少々あられもない格好となってしまった。ほとんど近接格闘だったし。
は?乙女ですよ誰が何と言っても異論は認めない。
シュバルツは私の補助と遠距離攻撃だったせいか、多少の乱れはあるものの服の破損はないようだ。
頭の良い子だよ。育て方間違ってなかったね。
マジックバッグから予備のマントをだし羽織るとマシな格好になった……はず。
遠巻きに見ていた人は、最初は10人程度だった。
戦闘中に徐々に人数が増え、最終的には…100人以上?
増えたねー。
取り囲む様にしていた人達が今はいくつかの隊列を組み、私たちと対峙している。
その距離約20m。
騎士団っぽいな、お揃いの鎧を付けてるし。
最初に到着した人達も仲間なんだろうけど、彼らだけ少し様子が違う。
まず体格。
明らかに身体能力の高さが伺える。身長、筋肉の付き方。気配の強さ。
私たち流に言えばオーラが強い。
格好いいなぁとぼんやり見ていると、その中の一人と視線が合った。
強い視線。
茶色っぽい金髪にルビーの様な紅い瞳。漢くさいイケメンだなぁと思っていると、すぅっと瞳が紅から暗めの水色に変わった。
おーぅ、異世界だなぁ。
他の騎士達も人としては強そうだね。メリハリのある顔立ちが多くてそこそこのイケメンだと思うけど……
さっきのルビーの人の集団は、他の集団より明らかに能力値が高そうだ。
………獣人⁈じゃない⁈ね!
シュバルツを無言で見やれば「かもねー」ってな感じで小さな溜息をつく。
なんでよ異世界といったら獣人さんや亜人さんじゃないですかーと心の中ではしゃぐ。
無言のやりとりをしていると、彼らのリーダーっぽい人が声を上げた。
「我々はサウザード王国王立騎士団だ。
私の名はオズワルド、王立騎士団の総団長を務めさせてもらっている。
北の森の主 火龍からハグレが出たとの知らせを受け、その排除、討伐のために来た。
その火龍は貴殿らが討伐した事に間違いは無いか。」
「間違いありません。私と彼で倒しました。」
「貴殿らは何者か、身の証しを立てていただきたい。ギルド証はお持ちだろうか。」
出たよギルド!異世界の定番だよね!もちろん無いよ!だって異世界から転移してまだ2週間ちょっとだからねっ‼︎
ぴょんぴょんしてる心を抑えて、なるべく落ち着いた声で答える。
「残念ながらギルド証は持っていません。我々は異邦人です。」