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私の年下のヒーロー  作者: 櫻井 妃奈乃
9/12

ヒーローの正体

隣に座る泰人には雪が少し積もり、震えているのが分かった。

私は付けていた白のストールを彼の肩にかけ、つい本音を溢した。


「何でこんなところにいるの?」


泰人は真っ直ぐ街並みを見ながら、返事をしなかった。

私はふとこの山の麓から二人でそり遊びをしたことを思い出し、彼に言った。


「おばあちゃんが心配してるから、帰ろう。またここにいたら、怒られるよ。私たちはもう大人になったんだから。」

「大人…か。姉ちゃんさ、仕事はどうしたの?アナウンサーだったんだろ?」

「やめたよ。局長と不倫したのバレたからさ。」


正気のないような声で初めて口を聞いた泰人に、私はつい自分の愚かな現状を暴露した。

すると彼は鼻で笑って言った。


「やっぱ双子だね。愚図。」

「本当そう。泰人はなんで暴行事件なんて起こしたの?」

「俺も先輩の女好きになっちゃって、取っちゃったわけ。お前みたいなもんだな。」

「血は争えないね。母さんと。」


私達は目を合わせて、苦笑した。

13年ぶりに話した兄弟の会話にしては、最悪すぎた。


「どうやってこれから生きていけばいいんだろうね。」

「俺もそれずっと考えてた。」


泰人の目は儚く、まるでこのまままっすぐ山から滑り落ちていきそうだった。

そしてもし彼がそうしたら、自分も後を続くような気がした。


犯してしまった罪は消えない。

私たちは償って生きることさえも許されないような気がした。


しかしその時後ろから、聞き慣れた声が聞こえた。


「泰人さん、咲良さん。」


それは懐かしい、実家の隣に住んでいた五つ下の幼なじみだった。

確か最後に会ったのは10年前だったが、私は彼の顔をよく覚えていた。


「お前、何でここ知ってんだよ。ばあちゃんから聞いたのか?」

「そう、連絡が来たから探してたんだ。」


彼は泰人がいなくなってから隣に引っ越してきたはずなのだが、彼が一緒にゲームをする唯一の友人だろうと二人の会話から私は察した。

そして私はその彼を不可解に見つめていた。


「ごめんね、咲良さん。会う約束があったのに。でもここで会えて良かった。二人とも、家に帰りませんか。」


そう、彼がscoopyだったのだ。


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