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私の年下のヒーロー  作者: 櫻井 妃奈乃
8/12

片割れの行方

帰省してから、今が年末年始でよかったと私はつくづく思った。

夜の世界で働く母は多忙で家に帰って来ないからだ。


そして弟とはさすがに一緒に住んでいるので顔を合わせたが、ほとんど話すことはなかった。

罪を犯した彼を唯一救ったのは祖母の存在だろうが、彼女にさえ心を閉じてしまっている彼に私ができることはないと思ってしまう。


そして私は大好きだった弟の所在が分かったとき、どうして会いに行かなかったのかを思った。


ー花形で働く自分の身内が犯罪者だと知られたくなかった。事実を受け入れられなかったからだ。


自分の愚かさを自覚し、ますます彼にどう接すればいいのか分からなくなっていた。


母といい弟といい、問題を抱えた家の居心地はよくない。

所詮ニートになってしまった私が言えることではないが。



そして大晦日を前にして、私はついにscoopyに会う日になった。

結局お互い顔も知らずに今日を迎えた。

ここ数ヶ月だが、腐っていた自分を救ってくれたヒーローとの出会いは楽しみであり酷く緊張した。


「おばあちゃん、出かけてくるね。」

「それがね…咲良。昨日の晩から泰人が帰って来ないのよ。連絡もつかなくて。」


リビングにいた祖母に声をかけると、ダイニングテーブルに座り彼女はスマートフォンを片手に頭を抱えていた。


「どうしたんだろうね。その、友達の家にいるとかは?」

「友達のところにもいないようなのよね。」

「そうだったんだ。」


なぜ祖母が友達と連絡を取っているのか分からなかったが、出所後情緒不安定だという弟の不在と音信不通には不安が募った。


「私、ちょっと近くを見てくるよ。」


scoopyと会う前に買い物をしようと時間に十分余裕があった私は、そう言うと外に出た。

久しぶりに高校時代に乗っていた原付バイクに乗ろうとしたが、雪が降り始めていたから諦め近所の商店街や公園へ歩いて行った。


私は小一時間ほど捜索したが泰人の姿は見当たらなかった。

近所に住む顔見知りの人に会えば、彼の特徴を話してみたが何も情報を得られなかった。

祖母に連絡すると、警察に相談しようかと心配して悩んでいた。


そしていつの間にか天候が悪くなり吹雪いてきたとき、私はふと昔よく彼と遊んだ場所を思い出した。


それは自宅の裏山だった。

雪が積もると二人でよく自宅を抜け出し、そこで雪遊びをしていた。

寒くても夢中で遊んでしまい怪我や風邪を引くので祖母からは反対されたが、それでも二人で隠れて遊んでいた思い出の場所だった。


私は傘をさしながら酷くなる吹雪に堪えながら、必死で山を登った。

そして山頂につくと、探していた人物は木影に座っていた。


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